著者 : ルイーズ・アレン
伯爵を愛したい。たとえ片想いでも。 涙の波瀾万丈リージェンシー! 颯爽とした軍服に身を包んだ美貌のアレックスをひと目見ただけで、 ヒービーはなぜかひどく落ち着かない気分にさせられた。 はじめこそアレックスは彼女に対して無口で冷淡だったが、 たがいを知るほどに親しくなっていき、舞踏会の夜に急接近。 器量が十人並みで恋愛に縁のなかったヒービーは幸せの絶頂を味わう。 だが翌日、アレックスがついに結婚の申し出をしようとしたそのとき、 一通の手紙がーー彼がかつて求婚した女性からの承諾の返事が届いた! そんな……アレックスに、故郷に愛する人がいたなんて……。 ヒービーの中で何かが壊れた。もう限界。「おめでとう。よかったわね」 今にも流れ落ちそうな涙をこらえ、彼女は祝福の言葉を贈ったーー。 今まで大勢の士官が来ては去っていくのを見てきたけれど、あなたは特別だったーーそう伝えるのが精一杯で、身を引いたヒービー。ところが、ほどなく思いもよらない事態に見舞われ、アレックスと二人きりで極限状態に置かれた彼女は、予期せぬ妊娠をして……。
中世さながらの古風な乙女は、 伯爵に導かれ、華麗なロンドン社交界へーー マデリンは筋金入りの中世研究者である父のもと、 すべてが中世のまま時が止まったような生活をしてきた。 だが父が亡くなり、要塞のような城に一人きりになった彼女には、 父が生前に計画していた政略結婚の道だけが残された。 相手は、ジャック・ランサム。第五代ダーシントン伯爵だ。 荒野を越えて花嫁を迎えに来た彼は、さながら黒馬の騎士ーー 年老いた偏屈な父親しか知らなかったマデリンにとって、 初めて出会う、若く、たくましく、ハンサムな生身の男性だった。 怖れとときめきに思わず目を伏せた彼女に、冷たい声が降ってきた。 「あいにく僕は、時代錯誤な変人の娘と結婚するつもりはない」 マデリンの父親が用意した周到かつ狡猾な計画により、結婚せざるを得なくなった二人ですが、一匹狼の伯爵ジャックと浮世離れした無垢な乙女マデリンは、ロンドン社交界でも噂の的に。最新流行のドレスに身を包み、華麗な変身を遂げた妻の姿に、ジャックはーー。
憐れみや施しはいらないと言ったのに、 それならば僕を受け取れ、ですって? エリーをただ働きの家政婦扱いしかしなかった冷淡な継兄が、 紳士クラブで起きた諍いの流れ弾を受けて死亡した。 その訃報を伝えに来たのは、ヘインフォード伯爵ブレイクーー 社交界随一の富と美しい容貌を持つ、エリーが密かに憧れる男性だ。 銃弾が、本来彼を狙ったものだったことに責任を感じ、 急いで駆けつけたのだろう。髪は乱れ、シャツも破れたままだった。 天涯孤独の身となったが、彼からの憐れみだけは受けたくない……。 私のことを“不美人で脚の悪い女”と呼んでいたから。 だが、継兄がエリーの財産を使い果たしていたことを知るや、 ブレイクは支援を拒む彼女を突っぱね、こう言った。「僕と結婚しろ」 人気実力派作家ルイーズ・アレン。伯爵との便宜結婚ものをお贈りします。エリーはなかば強制されるように伯爵の妻となりますが、彼に愛がないのは自明。でも、過去の事件による男性不信、不自由な脚ーーそれらをすべて受け入れてくれる夫への片想いは夜毎せつなく募り……。
聖職者の娘ながらおてんばなヴェリティは、色気漂う唇の美青年が現れた瞬間、それが誰なのかすぐにわかった。第4代アイルシャム公爵ウィルー人呼んで“品行方正卿”。最近爵位を継ぎ、彼女の家の隣に位置する領地へ越してきたのだ。先代である祖父から英才教育を受けた彼は、しきたりを重んじ、礼儀も非の打ち所がなく、つねに正しい行動をすると評判だった。快活なヴェリティの淑女らしからぬ言動に呆れ返る公爵と、公爵の完璧なふるまいをどうにか突き崩そうとするヴェリティ。彼の鉄壁は難攻不落に思えたが、ある日ヴェリティが池に落ちかけ、助けた公爵がどういうわけか、彼女の無垢な唇に口づけをして…。
ふとどきで美しい伯爵の、 温かな腕にさらわれて……。 「私の純潔と引きかえに、弟の土地を返していただけないかしら?」 遊び人と名高い伯爵ガブリエルに向かって言葉を絞り出した瞬間、 きまじめな令嬢キャロラインの頬は燃えるように熱くなった。 賭事に負けた父のせいで、愛する弟の未来が奪われるなんて耐えられない。 そして私も、悲惨な結婚をさせられる前に一夜だけでも夢を見たい……。 「話はわかった。だが僕も、処女を金で買うほど落ちぶれてはいない」 軽くあしらわれて追い返されたキャロラインだったが、 残忍で醜い中年男との結婚は刻一刻と迫ってくる。 すべてを諦めかけたある日、父が道楽で雇った僧衣の詩人が現れた。 キャロラインだけはすぐに気づいたーー彼がガブリエルであることに。 ガブリエルに導かれて父の手を逃れ、地味な家政婦に変装して田舎の屋敷に隠れたキャロライン。平穏な日々もつかの間、ふたりでいるところを父に見つかり、ガブリエルは大混乱のさなかに愛なき結婚を申し出て……。甘く儚い愛の夢、〈不肖の四貴族〉最終話です。
海辺にある親戚の領地を取り仕切るタムシンには、秘密の日課があった。それは、人目を盗んで裸で泳ぐこと。ある日タムシンが泳いでいると、突然海の中から男性が現れて彼女の両肩をつかんだ。そして生気を求めるようにキスをした。男性はタムシンを抱き上げて砂地を横切り、そのまま意識を失った。大天使を彷彿とさせる、たくましく美しい金髪の男性ーどこか冷徹な雰囲気のある彼は、とびきりのハンサムだ。冷えきった彼を屋敷に運ばせ、風呂に入れて介抱していると、悪態をつきながら青い目を見開いた彼がふとタムシンを見つめた。そのときタムシンは恋に落ちた。彼が侯爵だとは夢にも思わずに。
両親亡きあと悪辣な弟に騙され、無一文で家を出たケイトは真冬の荒れ果てた避難小屋で危うく命を落としかけ、偶然居合わせた謎めいた旅の紳士に助けられた。グラント・リバーズと名乗るその陰のある美しい男性は、ケイトが婉曲に事情を話すと問題解決としての便宜結婚を申し出た。出会ったばかりの薄汚れた娘に求婚するなんて、この人はいったい…。だが他に生きる術もなく、彼女は朦朧としながら申し出を受け入れた。通りすがりの農民を証人に結婚したあと、新居に案内されたケイトは豪壮な屋敷と使用人の数に驚き、慌てふためいた。「あなたは誰なの?」グラントは平然と答えた。「第4代アランデール伯爵だ」
13歳で両親と死別したテスは、ベルギーの修道院で育った。とうとう遺産が底を突いた今、故郷イギリスの修道院に身を寄せてなんとか働き口を探すしかなかったが、思わぬ事態に阻まれる。洗練された身なりの男性にぶつかられて足を怪我したうえに、子爵アレックスと名乗る彼に強引に引き留められ、船を逃したのだ。ああ、切符を買い直すお金もないというのに…。テスが窮状を訴えると、子爵が目的地まで送り届けると請け合い、彼女はほっと安堵するが、そのときまだ知る由もなかったー頼みの綱の修道院に受け入れてもらえず、高慢な子爵の屋敷で家政婦をすることになるとは!