著者 : ロバート・L.ダンカン
射殺した被害者の死体を、鋭利なナイフで十文字に切り裂く連続殺人犯。ラスヴェガスを恐怖に陥れた狡猾な殺人鬼は、元ニューヨーク市警の精神異常犯罪捜査官スタインに、不可解なメッセージを送りつけてきたー。「おまえが使命を果たすためにラスヴェガスへ来ないのなら、誘拐した少女の指を一本ずつ切断する」というのだ。さらなる凶行を阻止すべく、スタインは狂気に支配された多重人格の犯罪者との心理戦を開始した。
世界の目が集まる華麗なパリのファッション界。今そこに、二人の女性がデビューを飾ろうとしていた。たぐいまれな美貌と天性の経営手腕に恵まれた日本人、中村由紀と、その娘ドーン。二人の斬新なデザインは、すでにパリ中の話題になっていた。だがファッション・ショウを目前にして、何者かが卑劣な妨害の手を伸ばしてきた。窮地に陥った由紀の脳裏に、五十年前、十六歳で上海に渡つた自分の姿が甦る…。戦火の中国大陸から世界のファッション界へのしあがつてゆく一人の日本人女性と、彼女をめぐる男達の愛と戦いを描く感動の大河ロマン。
1931年の上海で、由紀はアメリカ副領事のサムと激しい恋に落ち、愛の結晶を身篭った。だが自分との関係がサムの経歴に傷をつけることを恐れ、由紀は彼の前から姿を消す。身重の体で路頭に迷った彼女に手を差しのべたのは、サムの友人でもある日本領事館の伊藤大佐だった。やがて中国大陸の戦火が上海を覆い、激しい戦闘の中で由紀はドーンを出産。サムと伊藤が和平工作に全力を傾ける一方で、彼女は念願のファッション・サロンを開き、自立への道を歩みはじめるー。戦争の荒波の中で逞しく成長してゆく由紀の姿を歴史的事件を織りまぜて描く。
中国への侵略を止めるよう首相に直言した伊藤は満州に左遷された。彼とともに満州へ赴いた由紀とドーンは、太平洋戦争、ソ連軍の侵攻そして東京裁判と、数数の試練を経て、日本のファッション界で地位を築いてゆく。苦難を乗り越え、今パリの桧舞台に踊り出た二人は、ファッション・ショウに全てを賭けていた。その成功を妨害しようとする者は一体誰なのか?由紀は自分の夢を実現するため、立ち塞がる敵に敢然と戦いを挑む。二人の男性への愛の狭間で揺れ動きながら、自分の生き方を発見してゆく日本人女性の波瀾の半生を描く壮大なドラマ。