著者 : ロ-ズマリ-・ロジャ-ズ
修道院学校に通う16歳の娘トリスタは、ものごころついたときから、実は義兄のフェルナンドにひかれていた。しかし、そんなトリスタの気持ちを見透かすように、多感な友人、マリー=クレアはかれと婚約してしまう。ふたりの挙式も間近になったある日のこと、伯母の家で、トリスタは突然フェルナンドに襲われる。トリスタの母に恋していたかれは、その恨みを義妹のトリスタではらそうというのだ。ウォントン-多情な女。母はそうだった。しかし、わたしは-激しい拒絶に、かれは引き下がるが、その様子を見つめるひとりの男がいた。
フランスで外科医となったトリスタは、カリフォルニアに向けて船上の人となった。それも女性客を嫌う船長の目をくらますために男装をして-。ある夜、男装をといて甲板に出たトリスタは、忘れられない人、ブレイズと再会する。思いを振り切るかのようにしたたかに酔い、自ら女性であることを明らかにしてしまったトリスタ。ブレイズはそんな彼女を責めながらも、トリスタは自分の妻だと船長に偽り、男装は浮気のあてつけだったとかばうのだった。その証しのために、ついにふたりは結婚式をする。それが悪夢の始まりだとも知らずに-。
政治家への野望を抱く弁護士の夫、クレイグとの結婚生活は、危機にあった。アンは、自由な女になりたかったのだ。ブロードウェイの大スター、キャロルに頼まれたちょっとした芝居の代役がもとで、俳優のウエッブと出会ったアンは、この危険な、しかし魅力的な男に、はじめて大人の女の喜びを知らされた。やがてパリで、トップモデルになったアンに、映画出演の話がもちこまれる。相手役は、なんとあのゴシップと謎にみちみちたウエッブ、その人だった。
映画の撮影が、モンタレーでクランクインした。それも、母親が溺死した悲しい思い出のあるアンの別荘で-。ウエップに“大人の女になる”魔法をかけられたアンだったが、かれのスキャンダラスな過去への不信はつのっていくばかりだった。そんなある日、本番のカメラの前で、思わずナイフを握りかれを刺してしまう。政界、財界、映画界を舞台に、華麗なひとびとのしかける罠に、いつしかアンも巻きこまれていくのだった。
イギリス植民地時代のスリランカ。コーヒー園主の娘アレックサは、射撃と乗馬が得意なお転婆娘に育っていた。男性の目を常に意識するような、しとやかなレディになどなりたくもないアレックサだが、18歳の誕生日は明日にせまっていた。誕生日には、総督邸で開かれるパーティで、社交界にデビューすることになっている。しかし、夜になって美しい月が輝きはじめると、持ち前の冒険心が顔を出し、こっそり海へと抜け出した。ニンフのように波とたわむれるアレックサだったが、つかのまの夢をやぶるようにあらわれた見知らぬ男に、生まれて初めて唇を奪われてしまった。
夫、ジョン卿の死をきっかけに、ひとりロンドンへと旅立ったアレックサ。目的はただひとつ、母と自分を捨てさった実の父、ニューベリー侯爵とその母、アデリーナへの復讐だった。だが、実の娘とも知らず誘惑の手をのべてくるニューベリー、そして権力を握るためなら手段を選ばない母アデリーナの虚飾に満ちた姿に、アレックサは、憎しみと共に深い孤独をもおぼえるようになっていった。そんなある日、かつて激しい愛をかわしたあのニコラスが、突然アレックサの前にあらわれた。
きらびやかなグランドオペラ舞踏会は、ジニイとスティーヴの噂話でもちきりだった。アメリカ上院議院ブランドンの娘ジニイは、ロシアの貴族サルカノフの未亡人となっていた。ジニイを連れ戻したスティーヴは、ふたりの過去がスキャンダラスな話の種になることを辟易してくる。ついに彼は、一年の約束でジニイに結婚をせまる。華麗な結婚式-だが、それもジニイには空ろな出来事として映らなかった。二人の間からはわだかまりがぬけず、スティーヴの態度もどこかよそよそしい。そんなある日、スティーヴは彼女を娼館に連れこむのだった。
義理の母ソニヤはスティーヴの愛人だった!ジニイはスティーヴと別れる決心をすると、ひとりメキシコに旅立つ。その傍には、ジニイを自分のものにしようとするアンドレがいた。が、突然の大地震で失明してしまうジニイ。スティーヴは彼女が死んだと聞かされるや、アンドレを追い、決闘の末、彼を殺す。傷心のスティーヴは、ジニイへの思いを振り切るようにプレヤーズ・エンドに向かうのだった。南北戦争直後のアメリカ南部を舞台に、淑女と娼婦のふたつの顔をもつヒロイン、ジニイとスティーヴの愛と憎しみのドラマ「甘い野生の恋」の完結編。
1867年、メキシコは動乱の時を迎えていた。21歳になるアメリカの上院議員の娘ジニイは、夫スティーヴに従いメキシコに攻めこむディアス将軍の軍勢に加わった。スティーヴが任務で出かけたあと、ひとり残されたジニイは、かつての父の秘書カールと再会する。彼女に思いを寄せていたカールは、ジニイにロシアの公爵サルカノフの通訳になるよう命令が下されていると伝える。スティーヴに事情も告げられないまま公爵のもとへ赴いたジニイは、そこで思いがけぬ話を聞いた。彼女は実はロシア皇帝の娘で、しかもスティーヴとの結婚は無効だと。
中傷に惑わされ行方もわからなかった夫、スティーヴとの突然の再会。しかし、ジニイの心にあるのは喜びにまさる後悔と怯えだった。カールからうけた辱めと暴力、そこから救ったとみせかけて、ジニイとの結婚をせまったサルカノフ公爵。今は、公爵夫人となったジニイは、責めようともしないスティーヴに、かえって深く傷つくのだった。そのあくる日、二人きりで森へ出かける。もう、愛されていないと思っていたジニイを激しく求めるスティーヴ。しかし、かれに、ふっとよぎる冷たさにジニイは愛を確信することができなかった。
はじめに、ほんの少し彼にやきもちを焼かせたかっただけなのに-。カリフォルニアの実業家スティーヴと電撃的な結婚をしたジニイは、夫との些細ないさかいから、思いもかけない方向に波紋が広がっていくことに激しく動揺していた。スティーヴを残し、独りパリに来てしまったのも、本当は、彼に迎えに来て欲しかったからだ。そんな女心を踏みにじるかのように、スティーヴが、イタリアの妖艶なオペラ歌手、フランチェスカと恋仲になっているなんて。お腹には彼の子がすでに宿っている。激しい気性の男、スティーヴに翻弄されるジニイだった。
熱病から記憶喪失になったスティーヴは、その看護をしてくれた女、テレシータと結ばれる。遠いテキサスまで、はるばる探しにやって来たジニイとの再会にも、まるで見知らぬ他人に会っているかのようなスティーヴ。愛と情熱に彩られた二人の思い出が、すべて無になってしまうのだろうか…。ジニイは苦しみを振り払うかのようにパーティーの踊りの輪に加わる。すると、いつの間にかスティーヴが近づき、強引にジニイの唇を奮う。「はじめて会った女なのに、昔から知っているような気がする」-彼はジニイのことが忘れられなくなるのだった。
時はフランス革命のさなか、スペイン人の父とフランス人の母をもつ貴族の娘、マリサは身を守るために、スペインの修道院に身を寄せる。断頭台に消えた母を思い静かな祈りの日を送る彼女のもとに、突如、一通の手紙が舞い込む。マドリッドの父からだ。マリサには思いもよらなかった結婚の勧めだった。自分の選ぶべき道は…。惑うマリサの耳に、あろうことか、その婚約者ペドロの下品な声が聞こえてくる。マリサにとって、運命にただ身を委ねる生き方は耐え難かった。「フランスに帰ろう」マリサはジプシーに姿を変え、修道院を逃げ出すのだった。
フランスに帰り、叔母エドマに保護され何不自由ない生活に明け暮れるマリサは、フランスの社交界でもその美しさで注目の的となった。命を助けてくれた貴公子フイリップに恋心をつのらせるマリサだったが、スペインから逃げる旅の途中で強引に体を奪った男ドミニックと再開し、無理やり結婚させられてしまう。そのドミニックも今は、マリサを独り残し航海に出かけている。孤独に追い打ちをかけるように辛い流産をしてしまうマリサは、警察長官フーシェの懇願に負け、ロンドンへと旅立つ。反ナポレオン派の情報をつかむために…。
亡き父の農園を訪ねて、ニューオリンズまできたマリサは、ドミニックと再会する。しかも、その傍には、美しい恋人までいる。仲睦まじいふたりの姿に、マリサは、しつこく言い寄るペドロの求婚を、つい受け入れてしまう。さらにマリサの心を傷つけたのは、かつて死んだと告げられていたドミニックとの子が生きているという事実だった。ドミニックは、子供に会いたいというマリサの願いを聞き入れ彼女をつれ出すと、責めたてるようにマリサを激しく抱き寄せる。フランス、イギリス、アメリカを舞台に革命の嵐に翻弄されるマリサの愛は-。