著者 : ワカヤマヒロ
母は眠る。見事に眠る母は眠る。見事に眠る
認知症の母に僕は救われていたのだと思う。幼なじみの真弓と街に出かけた“僕”。とある映画を見た僕の脳裏に忌まわしい記憶が鮮烈に蘇り、青年期に抱えた嫉妬、憎しみ、恐怖、偽善の念に再び苛まれる。真弓、高校時代の友人、そして妻。3人との関係に苦悩する僕は、重度の認知症を患う母の元へと逃避し、すがってしまう。
クサトリクサトリ
その快感はy=ax2(a>0∧x≧0)の曲線のように逓増する。県境山奥の巨大な盆地で営まれる奇妙な集団的行為クサトリ。人生の目的を見失った“私”は、その魅惑のるつぼにはまり、狂信的な信者のように抜けられなくなってしまう。とうとう禁断の真夜中のクサトリに手を出したその時、女が現われ、強烈なパンチを食らわせた。私は、真正面を向いて強く生きる自分を取り戻せるのか…
グルグル男グルグル男
あなたを守ってくれる誰かがそばにいる。その着信音が鳴ったのは二日前の夜のことだ。スマホの画面は、非通知設定、と表示していた。どうしようかとためらいながら恐る恐る出ると、行雄だったので驚いた……。クリスマスの夜、行雄と私は、渋谷から東京タワーへ。そこで待ち受けていた世界とは。私、というこの私とは。
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