著者 : 三浦玲子
智将ジョニーと怪力男サム、二人の活躍も遂に見納め…。知力と腕力の凸凹コンビが挑む最後の難題は楽曲をめぐる“旋律”の事件!2018年刊行の『はらぺこ犬の秘密』を皮切りに始まった“ジョニー&サムシリーズ長編全作品邦訳プロジェクト”、足掛け七年を経て、ここに堂々の完結!
雹と雨と雷鳴の狂乱とも形容すべきすさまじい嵐の夜、没落した名家バナーワース家の館の一室で眠るフローラは、ふと得体の知れない何者かが窓を破って部屋に侵入しようとしていることに気づく。恐怖で凍り付き、四肢を硬直させ、「助けて」とつぶやくことしかできないフローラが目にしたのは、血の気のない蒼白な顔、磨かれたぶりきのような目、深く裂けた唇、そしてぞっとするような瞳にも増して、なにより目を引く、白くぎらぎらした鋭い牙のような、猛獣のそれを思わせる突き出た醜悪な歯を持つおぞましい生き物であった。部屋に侵入した怪物は、不気味な咆哮をあげながらフローラに近づき、その長い髪を手にからめとって体をベッドに押しつけると、鋭い金切り声を上げるフローラの喉笛に牙のような歯を突き立てた。ほとばしる血潮が滾々とあふれ、室内にはそれを吸う異様な音が響いた…ヴィクトリア朝時代のイギリスで、週刊の安価な媒体に連載された“ペニー・ドレッドフル”の代表的な作品であり、以後のあらゆる吸血鬼作品や吸血鬼造型の原点ともなったゴシック・ホラー小説の伝説的作品、世紀を超えて、ついに刊行開始!
「エラリー・クイーンのライヴァル」が贈る円熟の代表作!どこまでも首を突っ込む元教師の女素人探偵、彼女に振りまわされるニューヨーク市警警部。最後に放つ一手が、虚構を突き崩す。
心の中からイメージが呼びかける。何かが彼の脳を刺激する。衝き動かされるように、描き続ける。一枚の絵が仕上がった。もう一枚、そしてもう一枚…。二つの殺人事件は、一見何のつながりもなさそうだった。だが、そんなことはあり得ない。いずれの死体にも、ピンでスケッチ画がとめられていたのだ。被害者の死体を克明に描き写した不気味な絵が。事件を担当するニューヨーク市警のテリ・ルッソ刑事は困惑していた。絵は事件の前に描かれている。犯人はあらかじめ絵を描いて、その通りに殺人を犯すというのか?一計を案じた彼女は、以前に依頼したことのある似顔絵アーティストのネイト・ロドリゲスを呼び寄せる。画家の目で見れば、新たな発見があるかもしれない。依頼に応じたネイトはたちどころに犯人の特徴に気づき、その心理を看破する。だがそれは、恐るべき迷宮の入り口に過ぎなかった…。画家でもある著者が、多数の自作スケッチを駆使して展開する、ヴィジュアル・サスペンスの極致。