著者 : 三浦綾子
高校教師の南慎一郎は、妻子がありながら同僚である藤島の妻美枝子に心惹かれている。美術教師の藤島から手ほどきを受け、美枝子をモデルに描いた絵が日展初出品で入選。同時に美枝子を描いて出品した藤島は落選していた。一年後、共に訪れた峡谷で藤島が謎の死を遂げる。不慮の事故か、他殺か、自殺か。嫌疑をかけられる慎一郎。やがて、美枝子や慎一郎の妻由紀らの人生が絡み合い、思わぬ方向へと動き出していく。果して人は人を真に愛することができるのか。嫉妬、疑念、欲、エゴイズム。人間の本質を鋭く浮かび上がらせた問題作。
神の愛に支えられ、人をひたすら愛した西村久蔵。人のため、伝道のために身を尽くしたその生涯を、自らも久蔵の大きな愛に導かれた三浦綾子が辿った感動の伝記小説。札幌商業学校の教師となった久蔵は、熱心な教育者として生徒たちと真剣に向き合う。創業した洋菓子店ニシムラでは、経営者としてキリスト者として、どんな人をも拒むことなく懐に招き入れた。戦後は、戦争参加の罪を贖うかのように、引揚者のための農村建設にも奔走するのだがー。
ゼネラル・パーマー号でマカオに送り届けられた岩松改め岩吉、久吉、音吉は、祖国の地を踏む日を待ち続けていた。彼らは日本で固く禁じられているキリスト教に出会い理解する中で、過去現在と自分たちを支えてくれた異国の人々の無償の愛に、心から感謝するのだった。そしてようやく日本を目前にする日がくるが、祖国は彼らに冷たすぎる仕打ちをした…。運命に翻弄される人間の真の強さを問う壮大な物語、涙の完結巻。
天保3(1832)年、熱田から、千石船宝順丸が14人の乗組員を乗せ江戸に向かって出航した。しかし遠州灘で激しい嵐に遭い、船は遭難してしまう。1年2か月後、乗組員の中で生き残った、豪胆な岩松、明朗快活な久吉、心優しい音吉の3人は、奇跡的に北アメリカに漂着した。彼らを待ち受けていたのは、想像を超える数奇な運命だった…。逆境の中、諦めることなく、希望を持って生き抜く男たちを描いた感動の時代巨編、第1巻。
遠州灘で遭難し北アメリカに漂着した岩松、久吉、音吉の3人は、現地の先住民に捕らえられてしまった。しかし偶然にも岩松たちの窮状を知ったイギリスの商社・ハドソン湾会社の厚意で、帰国の途が開かれる。大きな期待を胸にイギリス軍艦イーグル号に乗り込んだ3人は、幾多の困難を乗り越えロンドンの地に降り立った。そこで見たものは、鎖国政策を行う祖国とはあまりに違う進んだ光景だった。魂をゆさぶる人間ドラマの中巻。
大学生になった陽子は偶然実の弟・達哉に出会い、実母・恵子のことを知る。また兄・徹と、徹の親友・北原に求愛され悩む陽子。複雑な人間関係の中で、いつしか陽子は成長し実母への憎しみが薄れていく……。