著者 : 上木さよ子
家業を大規模に営むマクレーン兄弟には、そろそろ跡継ぎが必要だった。とはいえ結婚願望などない彼らは、ほうきから抜いた藁のくじを引き、“はずれ”を引き当てた兄のルークが、しぶしぶ花嫁候補を探すことに。多忙なので妻のご機嫌をとるつもりはないし、外見重視の美人もお断りだ。それよりも従順で、夫が外で働くあいだ家を守ってくれる女性がいい。そんなルークが目をとめたのは、6年前に父を亡くして以来、叔父夫婦の家の厄介者として家政婦同然に扱われるエレナーだった。影が薄く、物静かな十人並みの娘に見える彼女は、花嫁にうってつけだ!一方、魅力的なルークに密かに想いを寄せていたエレナーは、彼からの思いがけない求婚の真意も知らぬまま、喜びに胸を高鳴らせ…。
“利口すすず、慎ましやかで、口答えしない、家柄のいい美人。そんな娘がもしもいるなら、結婚を考えてもいい”祖母に結婚をせっつかれている男爵チャールズは、まだ独身を謳歌したくて、無理難題と言える結婚の条件を出していた。ところが驚いたことに、そんな娘がいたのだ。祖母の知人の紹介で引き合わされた彼女の名は、セラフィーナ。面白みがなく従順そうで、天使のように愛らしいだけの彼女となら、結婚後も自由にやれそうだ。高慢にもそう考えた彼はまだ知らなかった。自分の目に映っているしおらしいセラフィーナが、愛する家族を苦境から救うための、一世一代の名演技をしているとは!
ブルーデンスがゴシック小説を書き始めたのは、家から見えるいわくありげな館の佇まいに想像力を刺激されたからだ。その断崖絶壁に立つかつての大修道院は、今は訪れる者もない。荒れ果てた館の中に入れたら、構想も浮かびそうなのだけれど…。そんなある日、待望の好機は突然やってきた。館の持ち主レイヴンスカー伯爵セバスチャンがこの地を訪れたのだ。稲光に照らされた黒い馬車、蹄を鳴らす黒馬、漆黒の髪の美しき男性。暗い空の下、ブルーデンスは彼を呆然と見つめたー“悪魔伯爵”だわ。この人こそ、物語の主人公にぴったり!
メアリーは牧師の娘、ニックはかのヴェイル公爵の子息。彼女は身の程知らずの恋とは知りながら、ほんの一瞬でも彼に愛され、たとえ正式でなくとも結婚の書類に署名してもらえただけで幸せだった。だが、戦地へと発った彼が残したのは、その思い出だけではなかったーただ1度の契りで子を授かったことがわかり、メアリーは愕然とした。やがて生まれた息子は、彼女も家庭教師として雇うことを条件に、子宝に恵まれない夫婦のもとへ養子に出され、7年が過ぎた。ある日、妻に先立たれた雇い主から強引に体を求められ、抗ったが運の尽き、彼女はいわれなき罪で裁きにかけられてしまう。絶望と共に法廷に立ったメアリーは、ニックの姿を目にして声を失った。今や公爵となった彼は古い書類を手に彼女をこう呼んだ。「公爵夫人」。
『アテネに恋して』-まじめで地味なレベッカは伯母の死をきっかけに仕事をやめ、家も家財道具もすべて売り払い、ギリシアの島へ自分探しの旅にやってきた。ホテルのレストランで魅惑的な男性ステファノスからシャンパンをおごられ、旅行を思いきり楽しむため、衝動的に洗練された女を演じる。ところが、ステファノスは実はギリシアの大富豪で…。『危険な薔薇』-故郷を離れシカゴで孤独に暮らすクリスティのもとにある日、差出人不明の薔薇の花束とメッセージが届いた。ストーカーの影におびえていたクリスティは警察に通報するが、駆けつけた刑事の姿を見て思わず目を疑った。かつて彼女が初めて恋し破れた相手スコットが、すっかり大人の男性となってそこに立っていたのだ。『熱い砂の上で』-実業家のアダムは、幼なじみのメルと7年ぶりに偶然再会した客船の船上で嵐に襲われ、二人きりで無人島に流れ着いた。貧しい少年だったころ、名家の令嬢メルへの恋心をもてあまし、彼女をいじめてばかりいた。今、メルは昔と変わらぬ嫌悪の表情を向けてくる。この機会に誤解を正し、彼女の身も心も手に入れたい。アダムはひそかに決意し…。
テキサス州ダラスのオフィスビル。半年前までつき合っていたクインランとエレベーターに乗り合わせたエリザベスは、気まずくて仕方がなかった。クインランはセキュリティ会社の経営者で、強引で魅力的すぎて一緒にいると怖くなる人。早く1階に着かないかしら。そのとき、がたんと音がしてエレベーターが止まった。199X年7月21日、午後5時23分、大停電発生。かくして二人は密室に閉じ込められたー。L・ハワード『大停電に祝福を』他、D・パーマー『恋と冒険とカウボーイ』、A・メイジャー『欲しいのはあなただけ』を豪華収録!