著者 : 中嶋隆
補陀落ばしり物語補陀落ばしり物語
一揆の首謀者として、父親を磔台に送った又八とお雅兄妹、難波の大店を廃嫡された空翔、親殺しの汚名を負った嘉六、お家騒動から、無実の朋輩を切り捨てた定之介…。痛恨の過去とともに、災厄の巷をはいずる「ふつうの人々」。彼らに、浄土を目指す渡海がもたらしたもの、それは観音との出会いか、それとも無意味な死を死んだ者たちへの鎮魂か。時は、元禄・宝永年間、富士山噴火、度重なる大地震の巷から船出した、みたびの渡海顛末。
はぐれ雀はぐれ雀
ナマリ千代は、朝鮮でそして日本で、両親や兄弟、夫や子ども・孫を殺され、一人長崎にいた。島原の乱後、農民の子として育てられたジュリア須美は、困窮のため大坂の新町遊郭に売られ、太夫(小太夫)となる。人にはマリア様との果たすべき「御約束」があると信じていた二人。千代の「御約束」は須美に仕えることだった。そして、須美の「御約束」となった壮大な企てを実行に移そうとしていた…。
廓の与右衛門控え帳廓の与右衛門控え帳
江戸柳生道場の四天王の一人と言われていた大木歳三は、吉原で人を殺め京都・島原遊廓に流れてきた。歳三には大門脇の番屋に詰める男の名跡「与右衛門」の名前もあった。美しき女たちが集うきらびやかな遊廓に、色と欲とが絡み合う。仇討ちの意外な真相が明らかになる人情話、暗号解読の謎解き、政にまつわる陰謀劇、はては怪談まで。島原を仕切る「十字のお頭」、配下の幇間・願西とともに、廓で起こる厄介事を、刀を捨てた歳三が次々に解決していく。研究者の知性と抑制された文章が生み出す、上質なエロティシズムとサスペンス。江戸元祿を舞台にした艶物時代小説。
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