著者 : 中村光至
定年退職した元刑事の武井京人は、別にペンネームを持つほどその地方では知られたコラムニストであることから、刑務所内の文芸誌の選者をしている。彼が入選を決めた読書感想文の主の希望で会ってみると、数年前に他県から逃げこみ、逮捕し護送役も務めた殺人犯・安永哲夫であった。奇遇に驚く武井に、懲役15年の長期囚の安永は、妹朝子の消息を調べてほしいという。やっと探しあてた武井が朝子の住まいを訪ねると…。
17歳の女子高生が自宅で保健所の医師と名のる男にインフルエンザの予防注射を打たれたあと、その男の車で連れ去られた。客の急訴にハマの県警本部は色めきたつ。誘拐か。が、1日たち2日たっても犯人側からは何の要求もない。不気味だ。4日目、ついに公開捜査に。折も折、シティホテルの支配人から「強盗傷害で指名手配中の男が女連れで宿泊している」と。待機中の特捜星班が出動し包囲作戦をとったが、男はなんと…。-臨場感あふれる著者渾身の警察小説。
浦和市の証券会社に水中銃を持った男が乱入、5人の女子従業員を人質に更衣室に立て篭った。現場に急行した埼玉県警の刑事一係の香川らは、特別捜査本部を設置、人質の安全を第一に解決にあたった。だが、数時間がすぎても犯人の身元さえ判明しない。刑事たちの焦りがつのるなか、やがて男は奇妙な要求をつきつけてきたー。長篇警察小説。
「文夫君を預かっている。俺は元警官だから捕まらない。サツに知らせたら子どもの命はない」犯人側からの電話に茅ヶ崎市の建築会社社長・牛津宇三郎は警察に届けず、言われるまま取引に応じた。が、犯人側は身代金を奪って逃走、子どもは戻らない。そこで初めて警察へ-。70歳になる父の再婚式のため柳川市に帰省していた県警特捜班の星亭一は急きょ呼び戻され、6人の部下と捜査にのりだした。子どもの無事を祈りながら…。警察機構に精通している著者が放つ迫真の警官小説。
横浜駅西口のホテルで、宿泊客の女性が殺された。容疑者として同宿した男性が浮かび、一件落着かに思えた。だが、初動捜査後、横須賀に飛んだ捜査一課の宮川刑事の前に、被害者の意外な過去が…。事件は思わぬ方向に進展した。犯人の足どりはぷっつりと跡絶え、日米の捜査の厚い壁が…。警察機構を熟知する著者が、書下ろした異色の刑事小説。
横浜の幼稚園を狙い、誘拐を匂わせる恐喝事件が発生した。神奈川県警特捜班が犯人の指定した取引現場に散開するが、そこには身許不明の男の絞殺死体が遺棄されていた。殺されたのは恐喝犯なのか?-進展のないまま、事件は闇に包まれてしまう。そのころ九州・福岡で、私立学園を持つ教育界のドン・武本の愛孫が誘拐されていた。高速道路網を駆使して巧妙に身代金を得ようとする姿なき脅迫者と、一瞬の犯人との接触に全てを賭ける刑事たちの対決の果てに、横浜-博多を結んで錯綜する恐るべき犯罪の全貌が明らかになる。書下ろし長篇サスペンス。
九州・福岡市近郊の住宅外で、英語塾教師の刺殺体が、丁寧に夜具の中に横たえられた状態で発見された。事件は、犯人のものと思われる遺留品から、前科もちのある男が浮び上り、早期解決が予想された。だが、福岡県警の白井刑事たちは、その容疑者と目された男が、同じ手口によって兵庫ですでに殺されているのをやがて知る。しかも、それと相前後して、滋賀県警からは類似事件発生の報が…。書下ろし長篇警察小説。
神奈川県芽ヶ崎署管内の個人病院で、院長と出入りの貿易商が刺し殺され、院長の娘婿が傷を負った。目撃者はなく、警察が聴取できたのは、娘婿のー二人は口論のあげく、刺し違えたーという証言のみ。だが、警察は彼の傷の位置に疑念を持った。あきらかにためらい傷…!?証言の信憑性を疑った警察の、威信をかけた捜査が始まった。ドキュメントタッチで描く迫真の警察小説。
昭和45年、阿蘇五岳の南、静かな山間の町の雑貨商に2人組の強盗が侵入、男女5人を殺傷し、手提金庫を奪って逃走した事件は、結局、容疑者さえ挙げられないまま迷宮入りとなっていた。それから7年後のこと、熊本県警は思いがけない筋から事件の情報を入手、日を経ずして、捜査再開の特命が矢吹警部補ら7名の捜査員に下った。立ちはだかるアリバイの壁をぶち抜き、難事件の再捜査に取り組んだ刑事たちの苦闘を描く書下ろし警察小説。
久留米市内の高良大社参道奥の耳納スカイラインの入口で、女の惨殺死体が発見された。傍の木の枝に引っかかっていたハンドバッグの中身から、被害者は長野市に住む丸田トミと判明。致命傷は心臓部の刺傷で大量失血死。凶器はみつからない。長野県警に照会した結果、トミは市内の小料理店経営、丸田京介の養女で、4年前に離婚し湯田中温泉の仲居をしていたが、2年程前から行方不明になっていることが分かった。だが近親者から捜索願が出ていない。なぜ放置していたのか。事件は俄然複雑な様相を呈しはじめた。そして…。