著者 : 中村有希
鋭敏な推理力を持つ引退した俳優ドルリー・レーンは、ニューヨークの路面電車で起きた殺人事件への捜査協力を依頼される。ニコチン毒を塗ったコルク球という異様な凶器が使われた、あまりにも容疑者が多い難事件から、ただひとりの犯人Xを指し示すべく、名探偵は推理と俳優技術のかぎりを尽くす。巨匠クイーンがバーナビー・ロス名義で発表した、本格ミステリ史に燦然と輝く〈レーン四部作〉の開幕を華々しく飾る、傑作中の傑作。
犯罪学の講師になったエラリーが、学生たちと推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」、サーカスの美姫殺しを扱った「首吊りアクロバットの冒険」、切れ味鋭いダイイングメッセージもの「ガラスの丸天井付き時計の冒険」、『不思議の国のアリス』の登場人物に扮した人々が集う屋敷での異様な出来事「いかれたお茶会の冒険」など、名探偵の謎解きを満喫できる全11編の傑作が並ぶ巨匠クイーンの第一短編集。初刊時の序文を収録した完全版。
ニューヨークの競技場〈ザ・コロシアム〉に二万人の大観衆を集めておこなわれたロデオショウの公演。馬による大迫力の追跡劇の最中、銃声が轟き、硝煙がたなびく! 次の瞬間、先陣を切る西部劇の英雄バック・ホーンの命は絶たれた! だが不可解なことに、本人のものを含めた四十五挺の銃の中に、凶器となった銃はない。客席にいたクイーン警視とエラリーは、眼前で起きた大胆きわまる犯罪に立ち向かう! 〈国名シリーズ〉第六弾。
入居者向け娯楽活動の不毛さに音を上げた高級老人ホーム“海の上のカムデン”の面々は状況の改善に乗り出し、スペイン語講座、さらにはメキシコへのバス旅行が実現のはこびとなる。アンジェラとキャレドニア以下参加者一行11人は、添乗員つきツアーをおおむね楽しんでいた…新入りの老婦人が、突然の死に見舞われるまでは。老人探偵団が異国の地で大騒ぎする、シリーズ第八弾。
盲目のギリシャ人美術商ハルキスの葬儀が厳粛におこなわれた直後、遺言書をおさめた鋼の箱が屋敷の金庫から消えた。警察による捜索が難航する中、クイーン警視の息子エラリーが意外なありかを推理する。だが、捜査陣がそこで見つけたのは、身元不明の腐乱死体だったー“国名シリーズ”第四作は、若き名探偵が挑む“最初の難事件”にして、歴史に残る傑作である。
高級老人ホーム“海の上のカムデン”に変化が起きた。長年住んでいたトッツィが、近所にできた老人ホームに引っ越したのだ。三週間後、その彼女がアンジェラとキャレドニアに依頼をする。転居先に出る幽霊の正体を見極めてほしいというのだ。同じ屋根の下にいた縁で…というよりは退屈しのぎが目的で、名物コンビは“潜入捜査”を敢行するが…!?老人探偵団シリーズ第七弾。
“オランダ記念病院”の創設者である大富豪の老婦人が、緊急手術の直前に針金で絞殺された。たまたま病院に居合わせた作家エラリーの指図で事件現場はただちに保存されるが、検証を進め関係者の証言を総合しても、手術着姿の犯人の正体は皆目つかめない。やがて再び病院内で殺人が…!犯人当てミステリの最高峰として歴史に名を刻む“国名シリーズ”第三作。
五番街にある“フレンチズ・デパート”のウィンドウに展示された寝台から、女性の死体が転がり出た。被害者はデパートの取締役会長の後妻。遺体のくちびるには口紅が塗りかけで、所持していた別の口紅からは謎の白い粉が発見される…。この怪事件から唯一無二の犯人を導き出す、エラリーの名推理。巨匠クイーンの地位を不動のものとした“国名シリーズ”第二作。
独房からは信じがたい静寂が漂ってきた。獄内の静けさを残らず集めたより深い静謐が。それを破ったのは溜息。わたしは思わず、中を覗いた。娘は眼を閉じ…祈っている!指の間には、鮮やかな紫ーうなだれた菫の花。1874年秋、倫敦の監獄を慰問に訪れた上流婦人が、不思議な女囚と出逢う。娘は霊媒。幾多の謎をはらむ物語は魔術的な筆さばきで、読む者をいずこへ連れ去るのか?サマセット・モーム賞受賞。