著者 : 中谷友紀子
ドラッグの依存症から抜け出したマロリー・クインは、新たな生活を始めるためにニュージャージー州郊外の町スプリング・ブルックのマクスウェル夫妻の元でベビーシッターとして5歳の男の子テディの面倒を見ることになった。離れを自分の部屋として与えられたマロリーは、テディの世話をしながら、おだやかな毎日を暮らすはずだった。だが、彼女はある日、テディが“奇妙な絵”をスケッチブックに描いていることに気がつく。森の中で、女の死体を引きずっている男の絵だ。それは、かつてこの地で起こった殺人事件の場面を描いたと思しきものだ。画家であった被害者の女性は、マロリーが住む部屋をアトリエとして使用していたというが…。そして、テディの絵はますます不気さを増して、5歳児の能力をはるかに超えた、リアルなスケッチとなっていく。一体テディの身に何が起こっているのか?スケッチが示す事件の真相とは?
寂れた住宅が並ぶニードレス通り。その奥の暗い森に面した家に、テッド・バナーマンという男が娘のローレンや猫のオリヴィアと暮らしていた。家の周囲で起きた不審な事態に落ち着かない彼は、テープに声を記録していく…十一年前、幼い妹が森の湖畔で行方不明になって以来、ディーの家庭は崩壊した。今なお事件に囚われているディーは、かつて容疑者であったテッドを犯人だと怪しむ。彼女はニードレス通りに引っ越して、テッドの家を窺うが…テッドの家に住む猫オリヴィアは、この通りでの暮らしとテッドを深く愛していた。聖書の言葉を胸に、(主)の思し召しに従って日々を送るオリヴィアだったが、頭に響き渡る「音」に、この家に潜む「何か」に、しだいに脅かされ…折り重なる異様な「語り」が紡ぎ出す、恐るべきホラー小説。
妹アニーに起きた忌わしい出来事が再び起こる。そう告げる不吉なメールでぼくは故郷に呼び戻された。ぼくの前任の教師は、「息子じゃない」という血文字を残して息子を惨殺したのち、自殺したという。その血文字にこめられた真意を、ぼくは知っている。8歳のアニーが姿を消したのは、25年前、ぼくが友人たちとともに探検に行った鉱山跡の洞窟でのことだった。あの夜、あそこで恐ろしいことが起きた。そしてそのあとアニーにもっと恐ろしいことが起きたのだ…。過去の忌まわしい記憶と、現在の忌まわしい事件。友人の不可解な自殺。惨劇の家で起こる怪異。封印した恐ろしい記憶。それらがすべて明らかとなり、ひとつになるとき、恐怖に満ちた真相が姿をあらわす!ホラーの恐怖とミステリの驚愕を見事に融合させた新鋭の傑作ホラー・ミステリ。
アナ・ケリガンは、幼いころから海に魅了されてきた。潜水士を志す彼女は、ある晩友人に連れられて行ったクラブで、オーナーのデクスター・スタイルズに会う。アナは彼を憶えていた。幼いころに行ったマンハッタン・ビーチの砂浜にある屋敷の主だったのだ。そして、そのとき彼とひそやかに言葉を交わしていたアナの父は、数年前に消えたー。彼は父の失踪の鍵を握っているのではないか?そう考えたアナは、彼に近づくが…第二次世界大戦下のニューヨークを舞台に、海に魅惑された女性の軌跡を描き出すピュリッツァー賞作家の傑作長篇。アンドリュー・カーネギー・メダル受賞作。
姉エルからの突然の電話は母親の訃報だった。三歳で叔母に預けられて以来、二十九年ぶりにスコットランドの生家にわたしは帰った。幼い頃、両親や叔母は姉妹の接触を禁じたが、エルはいつも唐突にわたしの前に現れた。そのたびにむらっ気で攻撃的な態度に傷つけられ、わたしはエルを避けるようになっていた。生家は思っていた以上に裕福だったが、父親が放ったのは「おまえは来るべきじゃなかった」という一言だった。なぜわたしは屋敷と両親から引き離されたのか。なぜわたしだったのかー。読む者を釘付けにする見事な語り口。必読サイコ・スリラー!
その夏、家族はロッキー山脈のリゾートタウンを訪れていた。十八歳の娘ケイトリンは、トラック競技の奨学金を得て大学進学を控えていた。両親にとっては、円満とはいえない夫婦関係を修復するための旅だった。旅行二日目、ケイトリンはマウンテンバイクに乗った十五歳の弟ショーンを伴って、早朝の人けのない山奥へランニングに出かけたのだが…。その後、ショーンは重傷を負った姿で発見され、ケイトリンは山から戻らず、失踪事件として山岳一帯での捜索が始まったー。全米で激賞されベストセラーとなった、リテラリー・スリラーの傑作、待望の邦訳。
芳しいスパイスの香りに包まれて育ったハッサン・ハジ。突然の悲劇でインドを逃れ、たどり着いたフランスのリュミエールで、豪傑な父のひと声のもと、インド料理店のコックとなる。しかし、通りの向こうにはマダム・マロリーがオーナーシェフを務めるフレンチの名店があった。両店のバトルがエスカレートするなか、マダム・マロリーに料理の才能を見出されたハッサンは、ある大きな決意を抱くのだった…。
ニックは三十四歳、ニューヨークで雑誌のライターをしていたが、電子書籍の隆盛で仕事を失い、二年前、妻エイミーとともに故郷ミズーリに帰ってきた。しかし都会育ちの妻にとってその田舎暮らしは退屈きわまるものだった。結婚五周年の記念日、エイミーが、突然、謎の失踪を遂げる。家には争った形跡があり、確かなアリバイのない夫ニックに嫌疑がかけられる。夫が語る結婚生活と交互に挿入される妻の日記。異なるふたつの物語が重なるとき衝撃の真実が浮かび上がる。大胆な仕掛けと予想外の展開、「NYタイムズ」で第一位に輝いた話題のミステリ登場。