著者 : 中野恵
エレナが働くPR会社に、前例のない大きな仕事が舞いこんだ。依頼人はー大手航空会社のCEO、アレックス・ラッシュ!その名を聞いた瞬間、彼女の心は不安と高揚に襲われた。かつてエレナは、彼の魅惑的な青い瞳に惹かれる気持ちに蓋をしたのだ。アレックスには、亡き妹が想いを寄せていたから。たった一度情熱に身を任せてしまった、あの夜のことは忘れたいのに…。いっぽう、彼は不敵な微笑を浮かべ、自信たっぷりに言い放った。「きみが担当にならないなら、この取引はなしだ」エレナはやむなく、彼の待つリゾート行きの自家用ジェットに乗りこんだ。高鳴る胸を必死で抑え、最愛の赤ん坊を抱いて。
アイサは、ある日仕事場に現れた人物を見て凍りついた。マーク!いったいなぜここに?6年前、アイサは世界的なジュエリー企業でCEOを務める彼と恋に落ちた。しかし、父が彼の会社の宝石を盗み、幸せな時間は突然終わりを告げた。マークに無惨に捨てられ、アイサは街を去ることを余儀なくされたのだ。今になって再会するなんてー消せない想いに、彼女は必死で背を向ける。だが、マークは容赦しなかった。逃がさぬとばかりに家まで追ってくると、“ずっときみを捜していた”とささやき、熱く力強くアイサを奪う。どうして私を求めるの…軽蔑しているはずでしょう?しかし、直後に突きつけられた冷酷な要求に、彼女の心は打ち砕かれた。
“世界で最もセクシーな男性10人”の第3位として雑誌で紹介された大富豪デヴォンを、サラはうっとりと見つめた。このカフェで落ち合ったのは、彼から突然連絡を受けたからだった。でも、いったいどんな用件かしら。いぶかしがるサラに彼は座るなり切りだした。「君の妹に家宝を盗まれた。これが証拠だ」差し出されたスマートフォンの動画には、妹の姿が。ああ、まさか。彼は、妹を守りたければ自分の婚約者役を演じるようサラに迫った。低俗な記事のおかげで失った取引相手の信用を回復するには、王家の末裔ーカルレンブルク大公妃の孫娘サラが適任なのだと言って。あまりにも話が一方的だわ。そう反論しようとした彼女をデヴォンはいきなり抱き寄せ、唇を奪って…?!