著者 : 中野重治
村の家・おじさんの話・歌のわかれ村の家・おじさんの話・歌のわかれ
一九三四年五月、中野重治転向、即日出所。志を貫き筆を折れという純朴な昔気質の老いた父親と、書くことにより“転向”を引受け闘いぬくと自らに誓い課す息子。その対立をとおし、転向の内的過程を強く深く追究した「村の家」をはじめ、四高時代の鬱屈した青春を描き、抒情と訣別し変革への道を暗示した三部作「歌のわかれ」、ほかに「春さきの風」などを収録。
五勺の酒 萩のもんかきや五勺の酒 萩のもんかきや
たった五勺の酒に酔う老教師の口舌の裡に、天皇制を批判する勢力の既にして硬直し始めた在り方を、痛罵し、昭和20年代の良心としての存在を確立した名篇「五勺の酒」をはじめ、萩の街の中で、見出した戦争の傷跡を鮮烈に描き出した「萩のもんかきや」など12の名篇。中野重治の詩魂と精神の結晶とも呼ぶべき中短篇集。
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