著者 : 乃坂希
還暦間際に妻と一人息子を航空機事故で亡くして6年。ある晩、葉加瀬一郎は、ふらりと入った不思議なバーで悪魔メフィストから自身の寿命を告げられる。しかし、自慢じゃないが一郎は、これまで亡き妻ひと筋。このまま他の女を知らずに死んでも死にきれない。懇願する一郎に、メフィストはある提案をする。それは、この世に未練を残す彷徨える魂を身に宿し、彼らが思いを寄せる5人の女たちとセックスするということ。悪魔との契約書にサインした一郎は、かくして性の終活に向けて走り出す。エロスとタナトスが交錯する昇天必至の傑作官能。
妻とは発展的別居中でセックスレスの竹山光雄は、知人から譲り受けたチケットで好きなジャズピアニストのレストランコンサートを楽しんでいた。ところがコンサート終了後、隣の席に座っていた千里という女性が険しい表情で声をかけてきたことから、思いがけず初めての浮気を体験することになる。千里とめくるめく性の世界を堪能し、また彼女と会いたいと悶々とする竹山だったが。書き下ろし長編浮気願望エロス。
四十路を迎えるまでに結婚したいと考えている野原兎一郎。ある朝目覚めると、ダブルベッドの隣には全裸の美女が。どうやら相席居酒屋で意気投合した玲美を運命の相手と感じ、泥酔した末のできごとらしい。出会ってすぐにセックスするのは抵抗があるという玲美と一日を過ごす兎一郎だったが。性も含めた理想の結婚相手を求めて繰り広げられる、オトナの婚活の顛末は!?書き下ろし長編柔肌エロス。
離婚して2年、風俗通いにも飽きたが再婚する気のない恩田忠司は、純粋にセックスだけを楽しめる人妻との関係を求めていた。そんなとき、シティホテルのラウンジで争っている男女に出くわす。女は、2カ月前に歯の痛みに耐えかねて飛び込んだ歯科医院で治療してくれた人妻女医・吉永美智子だった。彼女に誘われるまま一夜かぎりの関係を過ごした後、恩田に人妻との逢瀬のチャンスが次々と巡ってくるのだが。書き下ろし長編人妻エロス。
ペットフードメーカーに勤める福田幸夫は浮気童貞。同じ会社にいるOL5人との妄想セックスが密かな楽しみだ。仕事を終えて帰宅しようとした金曜日の夜、同僚の松嶋花子から、結婚が破談になって居酒屋で荒れている浅岡美和子の世話を頼まれた福田だったが、その夜以来、福田とベッドをともにすると結婚できるという妙なジンクスがOLたちの間に密かに囁かれはじめる。書き下ろし長編オフィス・エロス。
経理課に入社した新入社員は、32歳の未亡人。街で偶然出会った下条正巳に「匂いって、なんだかエッチですよね」と微笑みかけてくる(「匂いの女」)。生活に疲れきっていた恩田忠司の前に、幼馴染みでかつてバージンを奪った北白川雛子が現れる(「初めての女」)。など、初恋の女、憧れていた年上の女、思いがけない出会いなど、過去と現在が交錯しつつ紡がれる、書き下ろし作品1点を加えた8つの逢瀬を描いた短編を収録。