著者 : 井上圭子
ナタリーは、ハンサムで裕福な実業家ライアンと知り合う。激しく惹かれあった二人は、驚くほどの早さで結婚に至るが、慣れない上流社会や、夫の元恋人からの嫌がらせに耐えられず、離婚の意思を告げ、ナタリーは彼のもとを去ったのだ。だがそれから3年、父親が闘病生活を余儀なくされたナタリーは、打つ手もなく、援助を頼みにライアンのもとへ向かっていた。いまでも突然消えたナタリーを恨んでいるライアンは、底冷えする目つきでねめつけて、屈辱的な条件を突きつけた。隠している娘と、君の体が欲しいと。
19歳のデイヴィナは、プロポーズされて夢見心地だった。その男性が、彼女の姉と通じていると知るまでは。裏切りに打ちのめされたデイヴィナは故郷を捨て、ロンドンに出た。2年が経ち、いまは大企業の重役ジェイクの秘書を務めている。彼はハンサムな独身とあって、恋人はいつもとびきりの美人だ。ある日、デイヴィナのもとに姉から結婚式の招待状が届く。相手は元婚約者だった。傍目にも明らかなほどうろたえた彼女は、ジェイクから問いただされたとき、つい心の内を漏らしてしまう。彼はしばらく何か考えていたが、暗く光る目でデイヴィナを見ると、こう言ったのだ。「僕が結婚式に付き添うーきみの婚約者として」
婚約間近のステファニーは、海辺の町で静かに暮らしていた。しかし、その平穏な日常もジェラードが現れたことで一変する。18歳。大人になりかけていた清純なステファニーは、洗練された美貌のジェラードと恋に落ちた。だが悪夢のような出来事によって、地獄に突き落とされージェラードは彼女の愛と純潔を疑って、去ったのだ。永遠に。5年の月日が流れ、再会した彼の瞳には凶暴な光が眩いていた。「綺麗で汚れていないと思っていたのに。君はまた人を欺くのか」君の真実の姿を君の恋人に暴くとでも言いたげに。
父の死後、マリサの弟はひどく荒れだし、飲酒運転や暴力沙汰に明け暮れる毎日を送っていた。法外な額の罰金、家賃の滞納ーマリサは金銭問題に頭を抱え、銀行に相談に行こうと車を出すが、タイヤがパンクしてしまう。惨めな思いでたたずむ彼女を、身なりのいい男性が助けてくれた。チェーザレ・ジャネリー。どこかで聞いたことのあるような…後でわかったのだが、彼こそマリサが家賃を滞納している借家の家主であり、広大な農園を経営する大実業家だった。マリサの困窮を知った彼は、なんと突然彼女に求婚する。「家政婦代わりの妻が欲しい」と、恐ろしく失礼なことを言って。