著者 : 井上荒野
だりや荘だりや荘
両親の死を機に、東京を引き払い、信州でひとり暮らす姉のそばへ越してきた妹夫婦。両親の気配の残る小さな宿を引きついで、おだやかな日常が始まったように見えたが、そこでは優しさに搦めとられた、残酷な裏切りが進行していたー精緻な描写と乾いた文章が綴るいびつな幸福。うつくしく痛ましい愛の物語。
森のなかのママ森のなかのママ
画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた…。なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とはー。
潤一潤一
伊月潤一、26歳。住所も定まらず定職もない、気まぐれで調子のいい男。女たちを魅了してやまない不良。寄る辺ない日常に埋れていた女たちの人生は、潤一に会って、束の間、輝きを取り戻す。だが、潤一は、一人の女のそばには決してとどまらず、ふらりと去っていく。小さな波紋だけを残して…。漂うように生きる潤一と14歳から62歳までの9人の女性。刹那の愛を繊細に描いた連作短篇集。