著者 : 今福龍太
ボルヘス『伝奇集』ボルヘス『伝奇集』
20世紀文学の傑作(中の傑作)、ボルヘス『伝奇集』。この巧智あふれる書物に向き合い、その多彩な謎を鮮やかにとりだして再ー物語化しながら、虎、無限、円環、迷宮、永遠、夢といったテーマをめぐる探究を読者に誘いかける。ボルヘス流の仮構やたくらみを創造的に模倣しつつ語られた、まったく新しい画期的なボルヘス論。
ないものがある世界ないものがある世界
「喪失」の陰に覆われた近未来の都会で、「進歩」し続けることに疑いを抱かない世界を憂う“わたし”。人間の原初的なことばや身振りが生き生きと現前する精霊の島から、いのちの根源をたどり直すために旅立つ少年“ノア”。「ない」ことと「ある」ことのはざまで、二人の異なった時空間の物語がパラレルに展開しつつ、いつしか一つの大きな物語として重なり合い、昇華していくー。批評と創作の境界線上で生まれた、父と母と子供たちのための、少し哀しく、希望あふれる未来の寓話。
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