著者 : 佐藤正午
アルファベットのYのように人生は右と左へ分かれていった-。貸金庫に預けられていた、一枚のフロッピー・ディスク。その奇妙な“物語”を読むうちに、私は彼の「人生」に引き込まれていった。これは本当の話なのだろうか?“時間(とき)”を超える究極のラヴ・ストーリー。
桜の花が咲くころ、新聞記者を休職中のぼくは一つ年上の女とある酒場で再会し、一夜をともにする。そして、数カ月後、酒場に再びぼくが訪れた時に聞いた噂は、28歳の彼女は妊娠しているというものだった。しかも、彼女は行方不明。父親はぼくじしんなのか?なら、なぜ彼女はぼくに妊娠していることを知らせないのか?教授、魅力的な夫人、17歳の少女、悲しみも夢も希望もある風に吹かれる人々とめぐり会いながら、彼は彼女を追う。まさに、ガール・チェイス・ストーリー!青春小説の旗手が描く傑作長編小説。
一時間五千円で、恋をお分けします。といううたい文句の喫茶店は、あやしげな風俗産業である。そこで出会う女性たちとの奇妙な交流、そして垣間みえる彼女らの素顔と仮面の距離。漂流する現代の若者とその危うげな人間関係を、繊細な感性でとらえて描き出す青春文学八編。
1973年度西海北高校3年6組。野呂光。あの夏、ぼくは江川卓との甲子園対決を真剣に夢みる、17歳の野球少年だった。だが、突然の父の死によって、他の仲間よりちょっと早い“人生の決断”を迫られたのだ。つまりぼくは大学進学を締め居酒屋の二代目を継ぐことになったのだ。グラウンドの汗と涙、クラスメイトとのあつき友情、脳ときめかせた淡い恋…。13年前の幸せな日々を描く青春長編小説。
賭け事をする男とだけは、一緒になるな、という亡母のことばを遺言と受けとめて、独りネオン街で生きる秋子。しかし遺言に逆らうように、秋子が恋をする相手は、あいまいな人生の追随者。時の流れるままにいくつかの恋をくりかえす、秋子のあやうげな青春…。絶妙の倦怠感を漂わせながら、若い女性の心情を描いた俊英の恋愛小説。
楼吹雪の舞う夜の公園で17歳の少年は、殴り倒され、初めての屈辱と殺意を知った。やがて彼はふとしたことから5発の実弾が装てんされたリボルバーを手に入れ、誇りを傷つけた男の行った札幌めざして復讐の旅に立った。九州から北海道へ、息づまる奇妙な旅をスリリングに描くサスペンス長編。