著者 : 佐野広実
妻は自分のモノ。子供たちも自分のモノ。金を稼いでくるのは俺なのだから、家族は俺の言いなりにならなくてはならない。 郊外の住宅地に住む五十代の専業主婦、新井妙子。 ある日、隣の家で殺人事件が起きる。被害者の隣人が著名な大学教授だったこと、一人息子がいたことを、妙子は事件を通じて初めて知る。 平穏そうに見えた隣家で何が起きていたのかーー事件はやがて、妙子自身の家庭の闇をあぶり出していく。 『誰かがこの町で』で「同調圧力」を、『シャドウワーク』で「DV」を描いた異能のミステリー作家、今度のテーマは、この国に根深く残る「家父長制」! 第一章 事件 第二章 波紋 第三章 拡散 第四章 事故 終章 そして氾濫が
試験導入された地下鉄の私服警備員として働く種村明美。彼女の恋人・要一は二年前に麻布十番駅構内で何者かに襲われ、命を失った。事件の手がかりを掴めればと、私服警備員となった明美は、様々な事情を抱えた乗客たちが起こすトラブルに遭遇していく。
DV-声を上げられない被害者たちが、今日もどこかで心と体に瀕死の重傷を負っている。暴力夫から命がけで逃れ、江ノ島を望む風変わりなシェルターにたどり着いた紀子。その家には、ある一つの「ルール」があった。絶望の果てを見た女たちが生きる世界。究極のシスターフッド・ノワール。
郊外の瀟洒な住宅街で、19年前に起きた一家失踪。謎の解明の前に立ちはだかったのは…忖度、同調圧力、自己保身、理由のわからない排除。そして時を隔てて、事件は連鎖していく。一人一人に問いを突きつけるサスペンス!江戸川乱歩賞受賞第一作。
元刑事の藤巻は、医師に軽度認知障碍を宣告され、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。ところが、当の娘が藤巻の元を訪れ、実習先の施設にいる老人の身元を突き止めて欲しい、という相談を持ちかけてくる。その老人もまた、認知症で意思の疎通ができなくなっていた。これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。娘の依頼を引き受けた藤巻は、老人の過去に隠された恐るべき真実に近づいていく…。「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!