小説むすび | 著者 : 余華

著者 : 余華

兄弟兄弟

発売日

2021年6月25日 発売

ジャンル

●カフカなど海外文学の影響を受けて、夢と現実、常識と非常識、正気と狂気、さらには生と死の境界を超越して人の世の不確実性を描き、そのあたらしさと実験性をもって、中国文壇で「先鋒派」と呼ばれた余華。ノーベル文学賞の候補として常にその名が挙げられている余華の長篇代表作。『雨に呼ぶ声』『活きる』『血を売る男』に続く長篇作品として四作目。中国では2005年に上巻、2006年に下巻が刊行され、たちまちのうちに話題沸騰、世界的ベストセラーとなった。日本では2008年に単行本、2010年に文庫本が、それぞれ「文革篇」「開放経済篇」として文藝春秋より刊行され、その後長く入手困難となっていた。「現代中国を知るための必読書」としてファンのあいだで伝説になっていた本書が、このたび、上下巻を一冊にまとめて復刊! ●(帯:コピー)したたかでたくましく、一途で愛おしく、下品で猥雑な、極上の物語 ●(帯:推薦文より)余華は予定調和をひっくり返していく。読者が泣けると期待した場面で怒らせ、笑った次の瞬間に慄然とさせ、下劣さに眉をひそめるエピソードの結末で感動の涙を流させるーー。(by篠田節子) ●(日本語版あとがきより)長い間ずっと、こんな作品を書きたいと考えていました。極端な悲劇と極端な喜劇が一緒くたになった作品を。なぜかといえば、この四十年あまり、我々の生活はまさに極端から極端に向かうものだったからです。(余華) ●(あとがきより)これは二つの時代が出会って生まれた小説である。前者は文革中の物語で、狂気じみた、本能が抑圧された痛ましい運命の時代。ヨーロッパにおける中世にあたる話である。後者は現在の物語で、倫理が覆され、こんにちのヨーロッパよりもはるかに極端な欲望のままに浮ついた、生きとし生けるものたちの時代の話である。西洋人が四百年かけて経験してきた天と地ほどの差のある二つの時代を、中国人はたった四十年で経験してしまった。四百年間の動揺と変化が四十年の中に濃縮された、非常に貴重な経験である。この二つの時代を結ぶ紐帯(ちゅうたい)はふたりの兄弟である。(余華) ●(解説より)『兄弟』は、並の作家なら、「国家と社会に翻弄されつつ、なおかつ失わぬ家族愛と絆」という浪花節にまとめるところを、竜巻のように上昇し暴走するストーリーと過剰な文章表現と登場人物の性格設定によって、土俗神話的な壮大な世界を作り上げた。一見通俗的な物語の底から、時代や体制を超えた人間の不変的で普遍的な真実を浮かび上がらせた傑作と言える。(by 篠田節子) ●(物語の概要)父親を亡くした李光頭(リー・グアントウ)と母親を亡くした宋鋼(ソン・ガン)が、片親同士の再婚によって義理の兄弟となったあと、それぞれの人生をどう歩んだかを描く物語。文革篇は兄弟の少年時代。地主出身という理由で父親は身柄を拘束され、母親は病気で入院し、わずか8〜9歳だった兄弟は、飢えに苦しみながらも助… 文革篇(一章〜二十六章) 開放経済篇(一章〜五十章) エピローグ あとがき(余 華)/日本語版あとがき(余 華)/訳者あとがき(泉 京鹿)/解説(篠田 節子)

雨に呼ぶ声雨に呼ぶ声

著者

余華

発売日

2020年10月21日 発売

ジャンル

●カフカなど海外文学の影響を受けて、夢と現実、常識と非常識、正気と狂気、さらには生と死の境界を超越して人の世の不確実性を描き、そのあたらしさと実験性をもって、中国文壇で「先鋒派」と呼ばれた余華。ノーベル文学賞の候補として常にその名が挙げられる余華の、先鋒派時代の最後を締めくくる作品にして、はじめての長篇。ファンのあいだで長く邦訳が待たれていた幻の名作。 ●(帯:推薦文より)善人がひとりも出てこないのに、しみじみ泣けるのはなぜだろう。残酷なのにあたたかい。余華の語りは名人芸だ。(by中島京子) ●(翻訳者の解説より)キーワードは「回想」「虚構」「記憶」「過去」だろうか。虚構の人物に作者の魂が乗り移り、時間と空間を超越したところに不思議なリアリティーが生まれた。それが読者の心に響くから、この長篇第一作に支持が集まるのだろう。(by飯塚 容) ● (中国国内の論評より) すぐれた「心の自伝」である『雨に呼ぶ声』は、虚心坦懐に幼年時代の怪しい行動と心の秘密をすべて記述している。これは、とても正直な人生の告白である。初めての戦慄、拙劣な欲望、身の置きどころを失った少年、奇妙な幻想、拒絶できない恐怖、理由のない罪悪感……狂乱に満ちた少年の心理が余すところなく描かれている(by陳 暁明) ●(物語の概要)1960〜70年代の中国。主人公の幼児期から青年期までの記憶を辿る物語。   主人公 孫光林(スン・グアンリン) は南門(ナンメン)という貧しい村に三人兄弟の次男として生まれ、六歳で、町に住む子どものいない夫婦のもとへ養子に出される。幼少期を町で過ごし、十二歳のとき、養父の死によってふたたび村に戻ってくるが、この間の不在が、彼を実家の家族から孤立させてしまう。そのため、主人公は、思春期を孤独で内省的な少年として過ごし、成長していくことになる。  全編、主人公のモノローグ。綾なす糸のようにとりとめなく記憶の表出を交錯させつつ、物語は秩序なく紡がれていく。周囲の人々が繰り広げるなまなましい憎悪、暴力、嫉妬、性愛……。主人公自身の幼児期の記憶、性の目覚め、自分につながる家族の歴史……。  プリミティブで、情動のままに生きるエネルギッシュな周囲の人々。それらが巻き起こす、ろくでもなく、凄絶で、真摯で、ときにばかばかしく、哀れで、ユーモラスで、そして愛すべき事件の数々。ある人はあっけなく、ある人はしぶとく死んでいく。まさにそれが人生であるというかのように。 第一章  南門/婚礼/死/出生 第二章 友情/戦慄/蘇宇の死/年下の友人 第三章 はるか昔/残り少ない命/消失/父を打ち負かした祖父 第四章  威嚇/放棄/無実の罪/南門に帰る 『雨に呼ふ声』日本語版刊行によせて 余 華  解説                      飯塚 容

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