著者 : 光原百合
偉い魔法使いも、何も出来ない魔法使いも、時の流れの前にちりとなって消えた。だが、ほかのすべてが失われた後で、何もできない魔法使いの名だけは、詩になり歌になり、語り継がれて 決して忘れられることはなかった。 優しさもせつなさも、生きるための大きな恵み。小さかったあのころのピュアな思いを呼び起こすファンタジー集。 春:朝露の石、塀、神様の言うとおり、何もできない魔法使い 夏:雪の花、海を見たカシの木、悲しみは海に、銀鈴砂の音 秋:白い翼、ベッドの裏側の国、散らない桜の木、僕のミッシェルおじさん 冬:まいごの犬、預かった袋、アラバスターのファンデーション、「俺のかあさん」、風の声
オリュンポスの神々の賭けにより、“魔物退治”に挑むことになった英雄の子テレマコスと美しき吟遊詩人ナウシカア。人類の命運を背負う二人が辿る波瀾の道行き、非力な人間の思いもかけない力、若き男女に芽生える恋の予感…構想二十年余、ギリシア神話をベースに織り上げた、絢爛たる愛と冒険のタペストリー。
人々と幻想がともに生きる不思議な町。第一回広島本大賞受賞作 帰ってくる死者、絵の中の少年、拗ねたピアノーー。瀬戸内の海と山に囲まれた懐かしい町・潮ノ道には小さな奇跡があふれている。
遠い昔の思い出や、幼い頃に聞いたお伽噺、切ない恋の記憶…。夢のかけらのような32篇の小さな物語を、ファンタジックなイラストで彩った、宝石箱のような絵本。ミステリーの書き手としても注目される著者の原点である、詩人、童話作家としての素顔の垣間見える作品集。
同級生の謎めいた言葉に翻弄され、担任教師の不可解な態度に胸を痛める翠は、憂いを抱えて清海の森を訪れる。さわやかな風が渡るここには、心の機微を自然のままに見て取る森の護り人が住んでいる。一連の話を材料にその人が丁寧に織りあげた物語を聞いていると、頭上の黒雲にくっきり切れ目が入ったように感じられた。その向こうには、哀しくなるほど美しい青空が覗いていた……。ミステリ作家・光原百合のデビューを飾った心やさしい物語。著者あとがき=光原百合/解説=石黒達昌
新しく劇団を作ろうとしている男がいた。度会恭平。劇団の名は、劇団φ。納得するメンバーを集めるため、日々人材を探し回る。その過程で出遭う謎ー。日常に潜む謎の奥にある人間ドラマを、優しい眼で描く青春ミステリー。
「恋しくて恋しくて、その分憎くて憎くて、誰かを殺さなければとてもこの気持ち、収まらないと思った」-切なすぎる結末が、最高の感動をよぶ物語。第55回日本推理作家協会賞を受賞し、「2003年版このミステリーがすごい!第6位」にもランクインをした珠玉の連作ミステリー、待望の文庫化。