著者 : 内藤織部
走れ!東京タワー走れ!東京タワー
就職して6年、広告代理店で残業とプレッシャーに疲れ切っていたさくらには、唯一自分を取り戻せる場所があった。芝公園にあるプリンセスホテルの2811号室。窓一面に広がる巨大な東京タワーを眺めながら、ここで七央さんのマッサージを受けるのだ。初めてこの部屋に足を踏み入れた日、さくらは東京タワーの堂々たる姿に自分が恥ずかしくなり、涙が止まらなかった。仕事を続けられたのは、何度もこの部屋の彼女(東京タワー)の前で悔し涙を流したからだ。7年目、ついに会社を辞めたさくらは、自分の未来に悩みつつもプリンセスホテルでの時間を守っていた。そんなとき、七央が飼っている18歳の老猫すずこが行方不明に!焦る七央と失業中のさくら、さらにさくらの同級生の千夏、舞。自分が一番大切にしているものはなんなんだろう?どうすれば自分らしく生きていけるのだろう?そんな悩みを抱えながら、彼らは全力で駆け回る。
マリアライカヴァージンマリアライカヴァージン
ある雪の降る日、みちるは、偶然マリアに出会った。切れ長の茶色の瞳、筋の通った鼻、口角の上がった唇、ストレートの黒髪。マリアに亡くなった母の面影を見たみちるの目から涙があふれると、マリアは不思議そうにしながら、ハンカチを渡してくれたー。孤高のギタリスト、両親を知らず施設で育ったマリア。知れば、知るほどに惹かれていくみちるだが、手を伸ばせばいつでも触れられるほど近づいても、決して愛は手に入らない。傷を抱え、それでも潔く生きる大人達に背中を押され、この愛を貫くために、みちるは人生をかけた大きな決断をする。ジェンダーと女性の生き方の多様性を問う問題作。新人作家衝撃のデビュー。
PREV1NEXT