著者 : 内野儀
志と情熱に燃える主人公、マーティン・アロースミスを取り巻いている環境はけっして恵まれたものではなかった。拝金主義と俗物根性にまみれた医療界。そして、マーティン自身も恋愛や結婚などで危ない綱渡りをくりかえしたり、融通のきかない性格のために周りからうとんじられたり、四苦八苦の生活がつづく。のちにペストの療法に情熱を燃やすが、それでも彼の胸は空しい。1930年にノーベル文学賞を受賞したルイスが医学界に足を踏み入れた青年の理想と現実のギャップに、伝染病の流行や恋愛を多彩にからませて描いた風刺小説。ピュリッツァー賞を辞退した幻の傑作。
ヴェトナム戦争に陸軍の看護婦としておもむき、第21後送病院で働くメアリー・ダミーコ中尉は、戦争の悲惨な実態に直面した。母親や恋人の名を呼ぶ、重傷の兵士たち。傷のため、手や足や顔をなくした兵士。顔はあっても胸から下がなくなっている兵士。そして数えきれない死体。やがてメアリーは奇妙な夢を見るようになった。次の日に見る兵士の傷を前もって夢に見るのだ。しかも、その兵士の死まで夢で予知するのだが…。
不思議な能力を使えるようになったのはダミーコ中尉だけではなかった。危地に陥ると、すべてが青く染まり時間がゆっくりと流れはじめ、敵の銃弾にあたらずにすんでしまうバルサム中尉。軍用犬とテレパシーで交信できるクーパー伍長。他人の心を読めるケリー大尉ーこうした「才能者」を集めて、ヴェトナム戦争のさなか秘密裡に行なわれた「オランウータン作戦」とは…極限状態におかれた兵士たちを描く話題の戦争小説。
ヴェトナム戦争が泥沼の様相を呈していた1969年。ハンバーガー・ヒルにほど近いエヴァンス基地に、一人の若者が着任した。彼の名はローク准尉。ヒュイ輸送ヘリコプターのパイロットだった。戦意に燃えてヴェトナムにやってきた彼は、その翌日から戦場の苛酷な現実を見る。小さな機関銃二梃しかもたないヘリで敵の砲火のただなかに降り立つ危険な輸送任務。朝まだきの発進の胸の高鳴り。そして戦友の無意味な死。やがてロークは、前線の実情を理解しない軍上層部と、その意を体した副中隊長のクレーブル大尉の卑劣さに怒りを募らせていく。その怒りは、クレーブルが臆病さから仲間を見殺しにしたとき、ついに頂点に達した。脆弱なヘリコプターを駆り、自らの腕だけを頼りに危険な任務を遂行する一匹狼パイロットの冒険と成長を圧倒的な迫力で描破、出版前から大きな話題を呼んだ航空戦争小説の白眉。
ロークはふたたびヴェトナムに帰ってきた。今度はカイオワ偵察へリのパイロットとして、ヴェトコンや北ヴェトナム正規軍を駆りだすのが任務だ。一方、クレーブルも自分の軍歴を守るため、ヴェトナムに戻ってきていた。アメリカ軍の撤退が始まり、厭戦ムードの広まるなかで、ロークは戦場で失なったものを取れ戻すためにヘリを飛ばす。やがて、そんな彼の前に、北ヴェトナム軍の大規模な前進基地が現われた。「ヘリコプターの戦争」と呼ばれたヴェトナム戦争の様相を、自らパイロットとして従軍した著者が、手に汗握る飛行シーンをまじえて描く戦争巨篇。
雪の朝、高価な服を着ているが裸足の奇妙な死体が発見される。一方、女性ジャーナリストのジュディスは、ハンガリー移民から身を興して今やカナダを代表する実業家のポール・ジマーマンのインタヴューに成功する。しかし彼は、豪壮な邸宅でのパーティの最中に不慮の死を遂げる。ジマーマンの死に不審を抱いたジュディスは恋人でトロント警察の警部デイヴィッドとともに事件の謎に迫るが…。
休日を利用して、オレは友人とハンティングに出かけた。猟のほうはさっぱりだったが、途中、とんでもないものを発見してしまった。その名車は、ふとのぞき込んだ納屋の中にあった。名車の持ち主は、ある富豪のものだった。だが、その富豪は謎の失そうをとげていた…。また、オレの探偵趣味が頭をもたげはじめ、事件にクビをつっこむことになってしまった。「最後に笑う者」につぐ、ガース・ライランド・シリーズ第2弾。