著者 : 冬川亘
ナノテクとセラピーが実現した人類の疑似ユートピアは早くも崩壊の兆しを見せていた。受療前の不安定状態に逆行する“退行患者”が続出、自殺者数も急増を始めたのだ。そのような状況下で、バーチャルな性的産業を牛耳る大資本家が不審な死をとげた。公安局の捜査線上にはやがて、死体と半死者を冷凍保存する巨大な霊廟オムパロスと、その運営にあたる謎の集団アリストス会の暗躍が判明するが、はたしてその真の目的は。
自意識をもつ唯一の量子論理思考体ジルに接触してきた、まったく異質の様式をもつ思考体、ロディとは何者か?バーチャル空間に潜行中のネット娼婦アリスを瀕死に追いこんだ投影体の正体は?退行患者を続出させた病原体蔓延の元凶は?錯綜するすべての謎はやがて霊廟オムパロスに収束する。霊廟内部に侵入した捜査官たちの前に現われた、想像を絶する存在とは…ハードSFの巨匠が新世紀へ向けて放つ、超弩級巨篇。
宇宙船Uケナイ号の船長エリク・ボーンは、優秀なハッカーとして合法、違法を問わず仕事をこなしてきた。だが、そんなエリクにルドラント・ヴィタイ属の大使バスクが頼んできた仕事は、いつもとはまったく異なるものだった。大使が監禁している女性の通訳をつとめろというのだ。しかも、その女性アーラは、エリクが捨てた故郷の星「施界」の出身だった…広大な銀河を舞台に、超能力者や奇妙な異星人の冒険を描く話題作。ローカス賞受賞作。
ルドラント・ヴィタイ属に捕まっていた女性アーラは、とつぜん暴れだし、逃亡をはかった。なりゆきから、アーラの逃亡を助けたエリクは、やがてヴィタイ属の陰謀にいやおうなく巻きこまれていくが…宇宙から忘れさられていた星「施界」の住人であるアーラやエリクに、ヴィタイ属はどうして関心をもつのか?そして、ヴィタイの究極の目的とは?豊富なアイデアとさまざまな謎をちりばめ、壮大に描きあげた冒険SF!ローカス賞受賞作。
「大戦」後、過去の歴史がほとんど失われてしまった遙かな未来、人々は「シリンダー」と呼ばれる巨大なビルディングの内側の水平な床や外側の壁で暮らしていた。上下にどこまでも続く外側の垂直世界では、いくつかの軍事部族が活動している。部族同士で略奪や戦争をして金儲けをするのだ。そうした軍事部族に戦士の飾りや軍用アイコンを提供する意匠師アクセクターの波瀾に満ちた冒険をいきいきと描きだす活題の長篇SF。
機械生命に追われ銀河中心のブラックホールを包む領域に進入した人類の末裔、ビショップ族。その一員トビーは仲間とはぐれ、時空を素材に造られたエスティ空間に迷いこんだ。さまよう彼の前に出現したのはナイジェルと名乗る謎の男。この男こそが人類として初めて機械生命と接触し、以来三万年余も人類を見守ってきたのだ。機械生命に打ち克つ鍵を求め、トビーはナイジェルと共に知識の源「銀河系図書館」に赴くが…。
一方、ビショップ族の長キリーンも、息子トビーの行方を探してエスティ空間を放浪していた。その途上、彼はマンティスと呼ばれる機械生命と遭遇した。マンティスによれば、どうやら機械生命は、キリーンの父を筆頭にした三世代のビショップ族の遺伝子に隠された情報を欲しているらしい。実はその情報こそ機械生命を破滅に導く切札だった…。
もういちど宇宙を地球人の手に!-地球からの移民の子孫であるオーロラほか50の宇宙国家により宇宙への移民の道を絶たれた地球では、60億の人々が行き場を失い絶望の縁に追いつめられていた。陽電子ロボットも軍事力も持たぬ地球が、その覇権を宇宙国家から奪取すべく企てた秘策ーパシフィック計画とは…『鋼鉄都市』の原型となった表題作「母なる地球」など、SF黄金時代を創りあげた名品7篇を収録。
英国の出版社から「まだ短篇集に収録されていない初期の短篇があればぜひ出版したいのだが」との問い合せがあった。いったんは断ったアシモフだったが、すぐに思い直した。それらの短篇はそれほどわるい出来ではないし、歴史的な価値もあり、さらに自伝的な説明をちりばめれば、よりいっそう興味深いものになるに違いない。本書はデビュー作「カリストの脅威」ほか“SF黄金時代”を髣髴とさせる名品8篇を収録。(全3巻)。
機械生命メカの執拗な攻撃を受け宇宙船アルゴに乗り組んだ人類は銀河系の真の中心ーイーターと呼ばれる巨大なブラックホールへと追いやられていた。だがまさにそのとき、星がひとつ、イーターにより引き裂かれた。その想像を絶するエネルギーは、開闢モメントを引き起こす。脱出への一縷の望みをたくし、宇宙船アルゴはブラックホールを包むエルゴ空間へ、荒れ狂う深淵へと突入していったが…待望のシリーズ最新作。
ルパートは、フォレスト王国の第二王子。父王にうとまれている彼は、ある日、ドラゴン退治に行くようにと命令を受けた。ドラゴンの住み処にたどりつくには、デモンどもが跳梁する危険なやみの木の森を通り抜けていかなければならない。邪魔な第二王子を厄介払いしようという父王の目論見は見えすいているが、命令とあってはしかたがない。ルパートは気のいいユニコーンを乗馬がわりに、ドラゴン退治の旅に出発したが…。
生きたドラゴンと生贄の王女を伴ってフォレスト王国にもどったルパートを待っていたのは、やみの木の森が突如拡大を始め、デモンどもが村や町を荒し回っているという知らせだった。デモンを統べる邪悪の領主が太古の闇からよみがえったのだ。邪悪の領主に対抗できるのは、森の奥に蟄居する大魔法使いただ一人。大魔法使いに協力を要請するためにふたたび旅立ったルパートの運命は。新鋭が贈る壮大な冒険ファンタジイ。
遥かな未来。惑星国家カムルーの王子ニキの運命は、ある日大きく一転した。わずか数時間のうちに愛する家族をことごとく惨殺され、みずからも命を狙われる身となったのだ。政権奪取を狙う銀河の一大勢力〈調和連盟〉の陰謀だった。単身カムルーを脱出したニキは特殊手術を受け、宇宙船の電子回路と神経を直結させたゲシュタルト・パイロットとして生まれかわるのだが…?新鋭がはなつニュー・スペースオペラの快作。