著者 : 前川道介
アステカ征服綺譚ーー三発の魔弾の物語<br><br> 十六世紀、神聖ローマ帝国を追放された〓ラインの暴れ伯爵〓グルムバッハは新大陸に渡り、アステカ王国のインディオたちに味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて、コルテス軍の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われ絞首台に上ったノバロは、死に際に三発の銃弾に呪いをかける。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目はーー」コンキスタドール(征服者)時代のメキシコを舞台に、騙し絵のように変幻する絢爛たる物語を、巧みなストーリーテリングで描き切った幻想歴史小説。大戦間ドイツで絶大な人気を博し、ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンら、名だたる目利きたちが愛読、世界的な再評価が進んでいる稀代の物語作家ペルッツの長篇第一作。
老船長が空にしたアラク酒の壜の中にボトルシップを作るという話が突然、南の国の小さな湾に碇泊する三本マストのスクーナー船の話になってしまう…あざやかな手品のような逸品『壜(ラ・ボテリヤ)』、盗みに入られてもほうっておく邸の主人と、節度を守って盗む泥棒たちの奇妙な共棲とその破局…『優雅な泥棒たち』、夢の中の青年を探して、少女は時を超える旅に出かけた…美しいファンタジー『蒼い夢』、速度に取り憑かれた人間を笑い、秩序に取り憑かれた国家を諷刺する『生き急ぐ』『秩序の必要性』、死を待つばかりと思い定めた老人が、ひょんなことから生きる歓びを見出してしまう悲喜劇『汽車を乗り間違えて』、構想中の小説の登場人物が実際に現われてしまった…作家のイメージの発生現場を垣間見させる『トルコ人』等々、時間と空間を自由に往き来しながら、変幻自在なプリズムの光を結晶化したような現代ドイツ随一の短篇の名手、クルト・クーゼンベルクの世界。クールな透明感あふれる文体で描く、ふしぎで、おかしくて、皮肉な21篇。
強引にポーランドに侵攻したナチス・ドイツを、占星学でいう白羊宮(牡羊座)の守護星、軍神マルス(火星)になぞらえて象徴的に描いた、ホレーニアの代表作。当然のごとくナチスの逆鱗にふれ、発禁処分にもなった幻の小説。
夜空をサーチライトが切り裂き、花火が〈ヨシワラ〉の文字を刻みつける。林立する高層建築の屋上では飛行機が発着を繰り返し、地下都市から現われた労働者の群れが〈バベルの塔〉に吸い込まれてゆく。ここは巨大な機械都市メトロポリス。だが、一人の天才科学者が一体のロボットを完成させたとき、都市の崩壊は始まった…。不朽の名画の原作。