著者 : 前田雅子
手術を受けた母の面倒を見るため帰郷したクリスティは、主治医がドミニク・サビッジと知り、動揺した。8年前の夏、クリスティはませた友人に教えられるがまま、幼い頃から憧れていたドミニクに純潔を捧げようとした。だが残酷なまでに拒絶され、逃げるように故郷を去ったのだった。いったいどんな顔をして彼に会えばいいの…?往診の日、いたたまれずドミニクを避けようと外に出た彼女は、ちょうど降り出した雪に足をすべらせて転んでしまう。そのとき、すっと手を差しだしたのはほかならぬ、ドミニクだったーかつて胸を躍らせ心惹かれた、あの呪縛するような雰囲気そのままの。
新生児室の看護師ハナは、献身的にある赤ん坊を看病している。英国旅行中に事故に遭ったオランダ人女性が産んだ未熟児だ。順調に母子が回復し始めたころ、オランダから見舞い客が訪れた。赤ちゃんの母親が心酔する名医の“ファレンテインおじさま”だわ。おじさまという呼び名から想像していたよりずいぶん若々しく、人目を引く端整な顔立ちに、ハナは思わず心を奪われた。でも、彼の態度は冷淡で、私のことなんて目に入らないみたい…。もう会うことはないのだから、とハナは胸の痛みをやり過ごした。ところが後日、そのフィレンテインが、赤ん坊の看護のためにハナをオランダへ連れていく手はずを整えていることがわかりー
婚約者あり。私を嫌っている。 なのに、愛することをやめられない……。 イマジェンの片想いは、絶望的だった。 百貨店王と呼ばれる老富豪のもとで働いているが、 その息子で、会社の有能なブレーンでもあるアレックスは、 イマジェンのことを、父親の財産目当てと決めつけている。 彼にすでに婚約者がいるというだけでもつらいのに……。 何も知らない老富豪は、息子の婚約祝いに屋敷を購入し、 あろうことか、イマジェンに下見に行くよう命じた。 ここが彼の愛の巣になるのね……。ひとり涙に暮れていると、 ふいにアレックスが現れ、「婚約を破棄してきた」と告げる。 長年にわたり多くのファンや作家仲間から愛された、偉大な作家ダイアナ・ハミルトン。惜しまれつつ逝去して10年以上が経ちますが、作品は今も色あせることなく読み継がれています。次回の名作選は、濃密な愛の駆け引きを描く『半年だけ花嫁』です。
ひと月ぶりに愛する我が家へ戻ってきたジュリアは愕然とした。 留守中に父が破産し、屋敷を売り払うことになっていたのだ。 買い手は悪名高いギリシア人富豪、アレックス・コンスタンティス。 アレックスと顔を合わせた瞬間、ジュリアは驚きを隠せなかった。 さっき私が不法侵入者と間違えた礼儀知らずな人だわ! アレックスはあろうことかジュリアを気に入り、誘惑したばかりか、 ぼくのものになれば屋敷を手放さずにすむと言って求婚してきた。 尊大な物言いと冷たい微笑に、不本意にも感じたかすかな胸のときめき。 ジュリアはそれを無視して、彼の申し出を受けた。 これはすべて家のためーーそう自分に言い聞かせながら。 2017年に惜しまれつつ亡くなったサラ・クレイヴンが、ドラマチックかつ流麗な筆致で綴る、激愛ロマンス! 傲慢すぎるギリシア富豪に狙われた、困窮するうぶな乙女の強制結婚の結末は?
小学校教師のレベッカは夏の2カ月間だけという約束で、海外赴任中の従兄ロリーの双子を世話することになったー8年前まで毎年夏を過ごした、あの懐かしいエイスガース邸で。当時、レベッカはロリーの兄フレーザーにひそかに恋していた。だがあるとき、新婚だったロリーに愛人のふりをさせられ、その結果フレーザーから軽蔑されて邸に行けなくなったのだ!今、フレーザーはアメリカに長期出張中で留守だという。彼に会わずにすむなら、としぶしぶ邸へ向かった彼女だったが、突然帰国したフレーザーが再び蔑みの視線を投げてきて…。
ロザンナは病床の母を残し、ひとりシチリアの祖父を訪ねた。母の治療費を工面するための苦肉の策として、冷酷な祖父が持ちかけた取引を受け入れたのだ。お金と引き替えに、祖父が選んだ男性と結婚する、と。ところがシチリアに着いてまもなく、ロザンナは、町の大通りで車にはねられて気を失ってしまう。気がつくと、運転していた男性の部屋に寝かされていた。ロザンナは彼の野性的な顔を魅せられたように見つめた。翌日祖父から紹介される相手、ドン・カルロ・ビチェンツィが、目の前の男性だとはつゆも知らずに…。