小説むすび | 著者 : 千種堅

著者 : 千種堅

ズボンがはきたかったのにズボンがはきたかったのに

シチリアの因習的な田舎町に住むアンネッタは十六歳の少女。いつも両親のきびしい監視があって自由に行動することもできない環境のなかで、神様にあこがれ修道尼になりたいぐらい。はては神父が僧衣の下にはいているズボンにまであこがれる。だが、ズボンは男か淫売がはくものと母親に教えられ、男にはなれないアンネッタは淫売になりたいと思う。淫売といっても、この地方の用語では「奔放な女」という程度の意味。そして、その典型みたいな同級生アンジェリーナと親しくなり、裕福な彼女の家に出入りするようなになって、ニコラというボーイフレンドができたものだから、家族は大騒ぎ。ついには無理矢理、叔父のところへ追放を決められる…。シチリア島南西部の港町リカータを舞台に、昔ながらの因習に翻弄されながらも自由にはばたこうとする思春期の女の子の普通の生活感覚をみずみずしくユーモラスに描く。ヨーロッパで記脇的ベストセラーをつづける、十九歳の著者のデビュー作。

その夜の嘘その夜の嘘

ブルボン王朝の支配する19世紀の南イタリア、シチリアとおぼしき王国にある孤島の牢獄。国王暗殺の陰謀に加担したため死刑を宣告された4人の男たちが、翌朝のギロチン刑を前に恐怖にふるえ、最後の夜をすごしている…。コッラード・インガフウ男爵-熟年。〈現人神〉をリーダーとする地下組織に入って以来、国に対する破壊活動の過激分子となる。サリンベーニ-40代、自称詩人。アジェラシオ-30歳、兵士。ナルチーゾ-年齢不詳、学生。当局は一味の影のリーダー〈現人神〉をつきとめようとするが、彼らはどんな拷問にも屈せず、嘘をつらぬき通している。そして処刑前夜、城塞刑務所の総督がやってきて、〈現人神〉の素姓を明かせば恩赦も認めようともちかけた。4人はこの取引を拒絶したものの、死を前にした動揺は激しく、残された5時間を有意義にすごすため、“デカメロン”のように各人が順を追ってそれぞれの人生を語りはじめた…。計算しつくされた物語はこび、みごとな文学空間…極限状況下の人間の真実と嘘を鋭く追求し、今世紀のイタリア文学を代表する作品とまで絶賛された傑作。ストレーガ賞受賞。

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