著者 : 千野隆司
旗本家の次男・角次郎は、縁あって舂米屋に入り婿した。不作の中で、何とか米の仕入れを行うべく、水運盛んな関宿城下へ向かった角次郎だが、関宿藩の藩米横流しの濡れ衣で投獄されてしまう。角次郎を救うため、新妻のお万季が取った行動は…!?妻と少しずつ心を重ね、家族一丸となって、米屋を再興していく物語。
旗本家の次男・角次郎は春米屋の主人・大黒屋善兵衛に見込まれて、婿入りした。米屋の若旦那として商売をはじめると、聞いていた話と大違い。店の経営は芳しくなく、妻は自分と口をきいてくれない。角次郎は店を立て直すべく奮闘するが…。妻と少しずつ心を通わせ、力を合わせて商家を再興していく物語。
岡っ引き繁蔵の昔なじみが闇討ちに遭った。幸い一命は取りとめたが、淳之助は賊の真の狙いが繁蔵にあり、さらには父左門を殺めた者に繁がると推し量る。探索の末に、繁蔵の壮絶な過去と、意外な下手人が浮かび上がる…。好評シリーズ第4弾!書き下ろし長編時代小説。
船宿「川澄」の船頭である霧太郎は、南町同心の浦部から手札を受けて、小網町界隈を縄張りとする岡っ引きでもあった。その浦部から今年の二月に米屋の主を殺害し、四百七十両を奪った盗賊の探索を命じられる。犯行後、その町内から姿を消した綱七の行方を捜し、男と繋がる棒手振をつきとめた霧太郎。その倉吉が住んでいた長屋のなかを調べてみると、柱に見覚えのある「御札」が貼ってあることに気づくが…。
寂れていた青柳山大恩寺を内証の豊かで名のある寺にした旗本の次男坊・棚橋市之丞。しかし、寺の運営を巡り檀家衆と意見が対立、結果、市之丞は御役御免に。大恩寺を出た市之丞が訪れたのは、麻布の鄙びた行慶寺。この寺の復興のために市之丞は「剣術試合」を画策する。はたしてその成否やいかに。江戸の経済もわかる異色の時代小説シリーズ、迫力剣戟満載の第五弾。
日本橋小網町河岸にある船宿「川澄」は、吉原に繰り出す客だけでなく、商談や休憩客で賑わい大繁盛。そこの腕利きの船頭・霧太郎は、亡き父の縄張りを継いだ岡っ引きでもあった。密通と思しき客の女が殺され、隣室にいた一人の侍が姿を消した。殺された老舗の女房と情を通じた大店の手代・卯之助を見つけた霧太郎は、南町同心の浦部と共に、卯之助と消えた侍を誘き寄せる策を仕掛ける…。新シリーズ、第一弾。
冷夏霖雨のため米価が暴騰する文化五年、江戸の米問屋が相次いで襲われた。寺侍の棚橋市之丞は不順な天候と貧しさに喘ぐ者たちに心を痛めていたが、飢える者のために炊き出しをしている寺があると聞き、訪ねることに。しかし、そこに違和感を覚えた市之丞は、その寺を調べ始める。寺を舞台に繰り広げられる大活劇。江戸情緒と爽快感満載。待望のシリーズ第四弾。文庫書下ろし長編時代小説。
同心豊岡文五郎と岡っ引き源兵衛は、四年前に兄弟押し込み強盗を捕らえた。兄の金兵衛は獄門、弟の弥蔵は島流しとなったのだが、弥蔵が腕の立つ浪人とともに島抜けをした。復讐の鬼と化した弥蔵たちの企てを、直心影流免許皆伝、大曽根三樹之助の剣が斬る。書き下ろし長編時代小説。
角次郎と乙蔵は、「菊田川」で、ともに将来を嘱望される板前だったが、ある日、角次郎は永代橋の欄干から落ちて、死んでしまった。乙蔵は、角次郎の妻子の面倒を見続け、また「菊田川」を継いで、深川でも指折りの料理屋にした。が一方で、あの事件は、乙蔵の陰謀だったという噂が、まことしやかに流れていた。事件から18年後、角次郎の遺児・磯市は取り立て屋になっていた。磯市は噂を信じていた。菊右衛門を破滅させることが、唯一の生きる目標であった。
植木職人の銑次郎は一匹狼の盗賊だったが、岡っ引きの伝造に追われ始める。確証は与えていなかったが、探索の輪は狭まっていく。だが、この二人には、愛しい女、そして、守ってやらなければならない女がいる-。
健気に生きながら逆い難い運命に翻弄される女たちの、宿命的なまでに哀して生き様を江戸の貧しい市井を背景に描く。無類の酒好きでお人よしの父親の飲み代のかたに高利貸の手に落ちたおげん(凍える炎)、報われぬ真実の恋を抱いたまま死んだお咲(秋時雨)、錺職の年季奉公から女と逃げた兄を恨みきれないなを(花の色)など、六篇を収録した好短篇集。