著者 : 半村良
下町高校は、伝統ある進学校だ。大学進学に向け、クラブ活動も自粛して勉強一辺倒。そんな高校生活に疑問を抱いた二年生三人が、野球の巧い生徒を集めて対外試合をしようと画策。三年生のエースを口説き落とし、チームを結成した彼らは、社会人野球チームとの練習で、その実力ぶりを発揮する。受験のため、青春を犠牲にしてしまうことに反旗を翻した奮戦記。
「赤い酒場を訪れたまえ」「わがふるさとは黄泉の国」などの伝奇SFから、映画化もされた「戦国自衛隊」まで全12篇収録の傑作選
粋なやつ、不器用なやつ、土地っ子、よそ者…、色とりどりの人間模様が見られる東京浅草。その奥深さに、作家自らも吸い寄せられてゆくかのように書かれた連作小説全12話。SFから時代小説まで幅広い作品を残した半村良。彼が愛した昭和末年の浅草を舞台に、なさけ、酒、色恋を実際の風物を織り交ぜながら描いた人情小説の最高傑作。
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。 第15回配本となる第4巻「超常能力者」は、SFの一大テーマともいえる「エスパー」の活躍と葛藤、栄光と挫折を描いた、時代を超えて輝ける名作の数々全10編を収録。 ●編集委員/逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏 [編集室から] 「SFの時代」は遠くなった。しかし、当時の興奮は忘れられるべきではない。とはいえ網羅するのは無理である。 ここに収録した作品群は、SFのテーマのひとつ「エスパー」とその変遷である。 異形であるから、逃げる。隠れる。闘う。 彼らそれぞれの人間たちとの対応を味わっていただきたい。 連作の一編を無理に収録した短編もあるが、それもこの際、いいことにさせていただきたい。傑作は、永遠なのだから。 [収録作] 【長編】 小松左京「エスパイ」 半村良「黄金伝説」 【短編】 平井和正「エスパーお蘭」 筒井康隆「水蜜桃」 宮部みゆき「燔祭」 恩田陸「大きな引き出し」 【掌編】 星新一「超能力」 北杜夫「月世界征服」 阿刀田高「触媒人間」 眉村卓「ピーや」 ◇解説/大森望 解題/夢枕獏
円盤の事故で不時着した宇宙人とアパートの住人との交流を描く表題作、ある日突然宇宙からやってきて世界中の道路を走りはじめた無数のボールの騒動、落語の語り口によるブリキ屋源さんのライターをめぐる数奇な物語、交通事故を境に理由もなく人に嫌われるようになった男の悲劇等、語りの名手による奇妙な10のSF短篇。
偶然大手製薬会社の会長と知り合った広告マンの佐伯はその場で殺人事件と出くわすが、奇妙にも会長は何事もなかったかのようにふるまった。新薬開発の鍵となるムラサキイトユリの謎を探るうち、これが連続殺人であることに気が付いた佐伯は、百合に導かれ古代の神々の世界へと引き込まれていく。巨匠の傑作伝奇ミステリー。
アトランティス、暗殺集団、赤い酒場、巨石信仰、狼男、吸血鬼、不死の生命…。この本を手に取ったあなたは、これらの言葉からどんな物語を想像するだろうか。失踪した妻を捜し夜の街を歩く建築家・隅田、展示場から消えたアトランティスの壷を追うカメラマン・伊丹。彼らの周囲には、次第に不可解な出来事が起こり始める。一見脈絡のない事象を縦糸に、男女の愛を横糸に紡ぐ、半村良の伝奇ロマン。
はるか古代から続く「ヒ」一族は、国が動乱期にさしかかると、特殊な能力を使って危機を救ってきたといわれる。その能力とは、御鏡、依玉、伊吹と呼ばれる三種の神器を使ったテレパシー、テレポーテーションであった。物語は戦国の世、織田信長の比叡山焼き討ちから始まり、関ヶ原、幕末、太平洋戦争、そして戦後の混乱期へと四百年の時を越える。歴史の襞の中で動く「ヒ」一族を圧倒的スケールで描くSF伝奇ロマンの傑作。
アクエリアス計画ー太陽の強力電磁波から、情報・通信回路をシールドする前代未聞の実験。その実験中に、的場丈史一佐が司令を務める、陸上自衛隊・第三特別混成団が忽然と消えたー。入れ替わりに過去の空間が、戦国時代の騎馬武者と共に現代に出現した。第三混成団は過去の世界に飛ばされてしまったのだった。アクエリアス計画の開発に携わっていた神崎怜は、的場が作製した勝利不可能な図上演習において、唯一勝利を収めた鹿島勇祐を加え、第三混成団を現代に連れ戻す計画を立てる。行く先は1549年。天下を目指す群雄が割拠する戦国時代ー。
一時は盗賊に落ちた千造だったが、亥吉と再会するや、共に組んで商人道を歩むようになる。江戸庶民感覚の小料理屋と、食器専門店を繁盛させた二人は、さらに利幅の大きな新商売を画策。時代を一歩先取りした商いを自ら考えだし、次々とこれに挑戦していく。二人には十年先が見えるのだ。とうとう亥吉は町を束ねる要職にまで担ぎ出された。意地の商人道を描く痛快巨編。
棟梁に褒められ有頂天になる大工、盗賊としての過去を隠した扇職人、対人恐怖症で五千石を棒に振った旗本の次男坊、玉の輿に乗る娘など、この江戸下町の長屋にはさまざまな人たちが暮らす。そして彼らを助ける証源寺の住職忍専。ふりかかる事件にも自分たちの知恵で切り抜けていく。そんな長屋住人たちを闊達な筆で描きだす人情時代小説。第六回柴田錬三郎賞受賞作。
妻が失踪した!新鋭建築家・隅田にとってそれはあまりに突然の出来事だった。まして知る由もなかった。彼の周囲で、不死を求める者たちが暗躍していることを。シュリーマンが発掘したクロノスの壺、古代の巨石信仰、犬神信仰、狼男伝説、吸血鬼伝説ー世界各地に残るこれらの伝承には、ある恐るべき事実を解く鍵が潜んでいるというのだが…。歴史の闇を縦横無尽に駆けるSF伝奇ロマンの傑作。
SF伝奇超大作ついに完結。田沼意次の時代、鬼道衆の分裂と争いから現われ出た闇の歴史は、いま、無窮無限の世界を駆ける霊船黄金丸によって宇宙の進化へと語り継がれる。互いの生命を啖い合う妖星=地球から虚空の巡礼に旅立った霊船を待ち受けるものは何か。終章で明かされる進化の涯に至る形態とは。
平凡な経理マンとして働いている加藤一郎の夢の中に、いつごろからか、血まみれの手をした男が現われ、彼の名を呼ぶようになった。そしてある朝、通勤の地下鉄の中で加藤は、血まみれの手の男を見つけ、夢の中の男が現実へ侵入してきたことを知る…。平和な生活が破壊されてゆく男の戦慄を描いた表題作ほか、日常に潜む恐怖を扱った四篇を収録。