著者 : 原民喜
名作「夏の花」(原題「原子爆弾」)を挟んで、戦争の日々と妻の死、8月6日の被爆、その後……時系列に佳作を編集。 核兵器禁止へ、あの時とあの思いを、戦後75年に今一度たどる。 原民喜はその小説の題を「原子爆弾」とした。 それ以外になかった。 しかし、そのままでは発表できなかった。 ─あれから75年。夏
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある、戦争をテーマにした短編小説集。教科書に準じた注と図版を付した。理解を深める名評論も収録。
「「少年だよ」雄二はそう返事すると、古川君の肩へ手をかけ、二人は肩に手を組みあわせて歩いた。雨で洗われた礫の路が白く光ってつづいている。遠い世界のはてまで潤歩して行くような気持がした。」(本書より)<br><br>遠藤周作が絶賛した小説「夏の花」の作家が、原爆投下以前の広島の幼年時代を追憶する美しく切ない短編小説集ー。広島・被爆70年という歴史の節目に、同地出身の詩人・小説家、原民喜(1905〜1951)の文学を紹介。「三田文学」等で活躍し、原爆投下直後の広島の惨状を描いた名作で知られる作家・原民喜。戦後、自ら命を絶つ前に作家自身によって編まれた短編小説の連作「幼年画」をはじめて単行本化。古書・蟲文庫の店主でエッセイストの田中美穂の解説を付し、原民喜の知られざる初期作品に新しい光をあてる。
広島への原爆投下の惨劇を克明に描いた傑作「夏の花」三部作、亡妻への痛切な思いが滲む「美しき死の岸に」、2020年センター試験の国語で出題された「翳」ほか、壮絶な体験と苦悩を刻んだ小説群。戦後70年を経て尚鮮烈な光を放つ戦争文学の金字塔を、文芸文庫スタンダードとして新装版刊行。 夏の花 美しき死の岸に 原爆以後 拾遺作品集 童話作品集
広島で被爆した原民喜(1905-51)は、見たものすべてを書き尽すことのみを心に決め、激することなく静かに物語った。だからこそ「夏の花」「廃墟から」「壊滅の序曲」等の作品が伝える原爆の凄惨さと作者の悲しみを、いっそう強く深いものにしている。生前の作者自身の編集による能楽書林版(1945)を底本とした。