小説むすび | 著者 : 古沢嘉通

著者 : 古沢嘉通

エアエア

2020年、中国、チベット、カザフスタンに国境を接する山岳国家カルジスタンのキズルダー村では、先祖伝来の棚田を耕し、昔から変わらぬ生活を続ける人々が暮らしていた。中国系女性チュン・メイは、そんな村の女性のために、町にでかけてドレスや化粧品を調達し収入を得る“ファッション・エキスパート”だった。ある日、キズルダー村で、新システム“エア”のテスト運用が行なわれることになった。“エア”は脳内にネット環境を構築し、個々人の脳から直接アクセスを可能にする新しいネットワーク・システムで、一年後の全世界一斉導入が予定されていた。だが、テストの最中に思わぬ悲劇が起きる。メイの隣人タンおばあさんが、システムの誤動作が原因で事故死してしまったのだ。テスト中、メイは“エア”内でタンおばあさんと交感、彼女の全人生を体験する。それ以降、おばあさんの意識はメイの脳内に住みついてしまうが、まるでその代償であるかのように、メイは偶然“エア”にアクセス可能なアドレスを取得する。それをきっかけにメイの人生は急転回を見せはじめる。“エア”がメイに、そして人類にもたらすものとは…。SF界を代表する物語作家が、異質なテクノロジーと出会い、アジアの小村から世界を変えることになるひとりの女性の人生を、ストレートに描いた巨篇。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞受賞。

双生児双生児

1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチルの回顧録のなかで記されている疑義-英空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)-に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。ソウヤーの回顧録を提供した女性アンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)は、自分の父親は第二次大戦中、爆撃機操縦士を務めていたと言う。果たして、彼女の父親はほんとうにグラットンの探しているソウヤーなのだろうか?作家の棲む現実から幕を開けた物語は、ジャックとジョーという同じイニシャル(J)をもった二人の男を語り手に、分岐したそれぞれの歴史の迷宮をひたすら彷徨していく…。稀代の物語の魔術師プリーストが、SF、ミステリにおける技巧を縦横無尽に駆使して書き上げた“もっとも完成された小説”。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞受賞作。

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP