著者 : 吉原育子
彼氏に振られ、職場をクビになり、賃料の値上げによって、今住んでいる部屋からの退去を余儀なくされた、踏んだり蹴ったりのシヨン。部屋探しのアプリで、格安の超優良物件に出会った彼女は即、入居を決める。格安なのには、理由があったー本来二人で暮らすはずの部屋を、四人で違法にルームシェアしていたからだ。優雅な独り暮らしには程遠いものの、そこそこ不自由のない生活を送っていたシヨンだが、ある日、オーナーが急遽、部屋を訪れる。慌てた四人は共同生活の痕跡を消すべく、その場しのぎの模様替えをし、借主の親族のふりをするが…(「他人の家」)。表題作ほか、人間心理の深淵をまっすぐに見つめた、傑作揃いの短編集!
朝鮮全土を覆った三.一独立運動のうねりは、日本の官憲に鎮圧されて収束したが、西姫と縁のある任明彬や、平沙里出身の錫らがデモに関連して拘束された。晋州に居を構えた西姫は、平沙里の屋敷を取り戻すために趙俊九と対面し、目貞を果たす。病に倒れた龍は、その屋敷の管理人として帰郷したが、息子の弘は抱えきれない葛藤から他人を傷つけるなど、心がすさんでいた。平沙里で細々と暮らす金平山の次男・漢福は、寛洙の計らいで間島に向かった。そして、日本の密偵・金頭洙として暗躍する兄・巨福と再会する。頭洙はその直前、長きにわたって追い続けてきた琴女を、ついにハルビンで捕らえていた。
この世界にどことなく馴染めない彼と彼女、そしてヨハン。三人の過去、現在、そして生き続けることの軌跡を描いた、魂の喪失と再生の物語。愛の本質と人生を問う恋愛小説。
交通事故で九死に一生を得た僕は、“何者でもないまま死ぬなんて無念だ”という思いに衝き動かされ、アルバイト先の楽器店で、ひそかにあるプロジェクトをはじめるーNHKラジオ講座のテキストで話題の表題作「楽器たちの図書館」、第2回金裕貞文学賞受賞作「拍子っぱずれのD」など8つの短編を収録。