著者 : 吉川永青
元治元年(一八六四年)、土佐藩の獄卒・小田切聡介は尋問の場にあった。罪人の名は岡田以蔵。かつての幼なじみであるこの男は、数多の人々の命を奪った罪に問われ、さらには聡介の兄を殺害した下手人である可能性があった。張りつめた空気の中、以蔵は子どもの頃と変わらぬ笑顔で、自らが手を染めた殺人の記憶を語り始める。幕末期の記録に残る岡田以蔵の不可解な言動。そこには、常人には理解しがたい恐るべき「道理」があったー。忠臣か、異常者か。最恐の暗殺者の本性とは?幕末史の謎に迫る戦慄の歴史サスペンス。
幕末。会津白虎隊でただひとり生き残った少年・三村虎太郎は維新後、新政府のもとで生きることを拒み、新天地アメリカへの移民へ参加した。異国での過酷な暮らしが続く中、ある日、虎太郎は行き倒れているシャイアン族の少女を助ける。一族を虐殺されひとり生き残った少女はカスター将軍の“ある秘密”を握っているため追われているという。似た運命を背負ったふたりは、時に反発し、時に支えあいながら、暴虐非道の第7騎兵隊へと立ち向かうこととなるがー。歴史の敗者に光を当て続けてきた著者が、米史の闇・インディアン戦争に挑む!
時は元禄。紀州の農民の子・文吉は、巨大な廻船に憧れたことをきっかけに商人を志す。許嫁の死をきっかけに、彼は「ひとつの悔いも残さず生きる」ため、身を立てんと江戸で材木商を目指すー。蜜柑の商いで故郷を救い、莫大な富を得ながらも、一代で店を閉じた謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生き様に迫る痛快作!
かつて“六分の一殿”と呼ばれた山名家は、十二代目・山名宗全が応仁の乱を起こしたことで凋落を始める。この家に生まれた山名豊国は、苦境をはね退け名家を再興することを、幼き日からの悲願としていた。だが毛利と織田の二大勢力に挟まれて国は混乱し、家臣・国衆の反発がその道を阻む。心ならずも裏切りを繰り返し、その果てに家を潰した豊国が、泰平の訪れに見たものとは?
まだ日本が日本でなかった時代。日向の里の跡継ぎ・彦火火出見は、天災で農地が深刻な被害を受け、各々の里が争い合う現状に心を痛めていた。耐え忍び、助け合え、とただ語り掛けるだけで果たして皆を救えるのだろうか。自らが行動し、未来を示してこそ多くの民を救うことに結び付くのではないか。火火出見は、よき理解者である長兄・五瀬、武芸に長けた次兄・稲飯、稲作の名人である三兄・三毛入野らとともに理想郷として伝わっていた「豊葦原」への旅を決意する。豊葦原で、人々を束ねる国を作り、民を導くことこそ己の使命だと信じてー。気鋭の歴史作家が、大胆な着想とアプローチで迫った「神武東征録」!『古事記』『日本書紀』をベースに、立国の礎を描いた歴史スペクタクル巨編!
織田信長の越前攻略により無一文の孤児となった源八は敦賀の商人・高嶋屋久次の知己を得て、なんとか命を繋ぐ。成長した源八は、蒲生氏郷に仕官することに成功するのだが、金銭に執着する源八に同僚たちの風当たりは強くー。無一文の孤児から一万石の城代まで成り上がり、伊達政宗にも打ち勝った“ぜにざむらい”の痛快な半生!
時は享保。長引く飢饉に人々は喘ぎ、餓死者までもが出る始末。そんなどうしようもない世の中に、立ち向かった男がいた。花火師・六代目鍵屋弥兵衛。困った人を放っておけないこの男は、江戸中の人を放っておけなかったー。死者に弔いを、生者に勇気を、そして暗く沈む世に灯りを!江戸っ子たちの熱い思いが、あの花火大会を生んだ。
あの嫌われ者は、何のために闘い続けたのか。覇王信長の死後、天下人を目指す秀吉のもと、綺羅星のごとく登場し活躍する武将を差し置いて、最も栄達した男・石田三成。秀吉の備中高松城攻めに従軍した若き日から、関ヶ原の戦い後まで、己の信念を最期まで貫いて、大義に捧げた生涯を丹念、かつ大胆に描く。
武勇馳せし将軍が墜ち、異彩を放つ二人の男が出会う。その毒は、静かに、だが確実に、光秀の心を殺していく。将軍を運命づけられた義昭と、織田信長が欲した光秀、二人の出会いは果たして、必然だったのかー。気鋭の著者による、書き下ろし長編歴史小説。
慶長五年九月十五日。美濃国関ヶ原で起こった大会戦は、東軍・徳川家康と西軍・石田三成の戦いとして知られるが、勝敗の鍵を握る人物がもう一人いた。小早川秀秋。彼の裏切りは予想されていて、味方に引き入れようと両軍の将たちは蠢いていた…七人の作家が戦場を活写する、大好評「決戦!」シリーズ第六弾!
伊達三傑の一人として数えられる猛将・伊達成実。知略で政宗を支えた片倉小十郎に対し、主君より一つ歳下として生を受けた成実は、武勇で天下への野心を支え続けた。伊達南領の要衝・大森城の城主、伊達家第一席の重臣として、何度も政宗の危機を救ってきた右腕である。その勇猛さは、会津攻めの中核として、数多くの軍功も上げる。だがその生涯の謎とされるのが、豊臣秀次が謀殺された後の、突然の伊達家からの出奔である。右手の大火傷という将としては致命的な傷を得ながら、龍の右目にならんと生涯を戦い続けてきた猛将は、なぜ伊達を去り、また戻ってきたのか。俊英が描く、鮮やかな男の生涯。
騙して、化かし、また騙す。策士・真田昌幸。武田家滅亡後、織田、北条、上杉という大大名に囲まれながら、策謀をめぐらし、裏切りを繰り返して天下をうかがう。昌幸の前に立ちはだかるのは名将徳川家康と大軍勢。あまりに巨大な敵に、どう挑むのか。戦乱を変幻自在に立ち回る小国の武将を描く傑作歴史小説。
天文九年の師走。毛利元就の居城、安芸国(現広島県)の郡山城に尼子軍が攻め寄せようとした時、一万の援軍が颯爽と現れた。まだ二十歳の美しき軍師の名は、陶隆房(晴賢)。毛利家を従える大内義隆の重臣にして、援軍の大将を務める男だった。見事な戦略により尼子軍を打ち破った隆房は、毛利元就の盟友として、親交を深めていく。だが、隆房の敵は、外部だけではなかった。下克上の悪名を背負った武将の儚き半生を描く、長篇歴史小説。
慶応四年(一八六八年)、六月二十八日。北辰一刀流の開祖・千葉周作のもとで四天王のひとりと謳われた大剣士・森要蔵は、道場のある江戸を出て、遠い会津の地にいた。門弟や息子とともに会津藩に与し、白河城を奪還する戦に参陣するためだ。ただひたすら、己の信じる「誠」に従って。時代の趨勢に抗い、新政府軍に立ち向かった男はいかにその生涯をまっとうしたのか。ひとたび戦えば、「雷雲を纏った龍のよう」と称された要蔵。平穏な日々を捨て、世のため人のために生きる信念を貫いた愚直な男を描く、傑作歴史長編!
東軍か西軍か、徳川か豊臣かなどは関係ない。ある者は己の野心のため、ある者は義理のため、またある者は身内を奪われた復讐のため。主戦場に行かずとも、全国の武将はそれぞれの関ヶ原を戦った。時代の変わり目で老いに苦しみ、謀略に悩んだ名将を待ち受ける運命とはー気鋭の時代小説家による連作短編集。
荒れ狂う時代を怒涛のごとく駆け抜け、夢半ばで業火の中にその役割を終えた稀代の武将・織田信長。果たして彼は、反抗するものを根絶やしに追い込んだ魔性の権化だったのか、それとも、民のため、理想の世を切り拓くために命を賭した名将だったのか。没後四百余年を経た今、日本史上最も謎多き男の内面的核心に、気鋭の歴史作家が横溢する気迫で挑んだ傑作長篇書き下ろし。
永禄四年九月十日、最強と言われた戦国大名同士が激突した。信玄率いる武田軍と謙信指揮する上杉軍の決戦だ。霧立ちこめる北信濃の要衝で、稀に見る高等な駆け引きが繰り広げられた。そのとき、付き従った武将たちの本心とは!戦国最強対決の「瞬間」に、七人の作家が参戦。大好評「決戦!」シリーズ第四弾!
朝倉義景ー時に愚将と誹られながらも、一際異彩を放ち、信長をも追い詰めた男。名門朝倉家に生まれ、若くして家督を継いだ男は、もはや形骸化した幕府と将軍の世に己の活路を見いだす。誰からも理解されぬ苦しみと孤独を背負った男は、戦国の世に、そして天下に、何を望んだのか…。『天下は朝倉殿持ち給え。我は二度と望みなし』信長の上洛要請を拒否し、戦国最強の男の敵に自らなった男。戦国史上、もっとも異彩を放つ武将の生涯を鮮烈に描いた、書き下ろし長篇歴史小説。