著者 : 名谷一郎
1984年冬、ハンナ・スチュアートが「ベルン・クリニック」で不審な死をとげた。この事件が起こるや、アリゾナ州ツーソン、ニューヨークのケネディ空港、オーストリアのグミュント、そしてロンドンのパーク・クレセントで、ほとんど同時に、幾組かの男女が、それぞれのおもわくを秘めて動きはじめた。目的地はスイス、チューンにある「ベルン・クリニック」。そこでささやかれている「ターミナル計画」とは何か?アメリカ人ジャーナリスト、ニューマンは、ひょんなことから事件に巻き込まれていく。虚々実々の駆け引きの末「ターミナル計画」の謎にたどりついたニューマンに危機が迫る。
1944年、大勢の決した北アフリカ戦線で、アメリカ軍報道カメラマンのアラン・エッシャーは、一人のフランス人を救った。彼の名はエリオ・セザール、勇名をはせたカー・レーサーだった。戦後20年たったある日、アランのもとに、懐かしいエリオから1通の手紙が舞い込む。「ぜひ会いたい」ところが、久濶を叙そうと出かけたアランの目のまえで、セザールは何者かにひき殺され、アラン自身もあやうく命を落とすところだった。エリオはなぜ、誰に殺されたのか?アランは亡き友のために、また美しい彼の妻のために、謎を解こうと決心した…。
エリオ殺害の謎を解こうとするアランに、未亡人となったジルが一つのヒントをくれた。ブガッティ・ロワイヤルがどうとか言っていた、と。ブガッティ見学ツアーに同行したアランは、ホテルのロビーでカール・グレーヴンと名乗る老人にあった。彼はブガッティ・ロワイヤルと、それにまつわる経緯をことこまかに説明してくれた。7台目のブガッティ誕生のとき、謎の失踪をとげたとき、そしてなぜエリオが殺されねばならなかったか。すべてを語りおえたときグレーヴンの手には拳銃が握られていた…。幻の名車ブガッティ・ロワイヤルをめぐる欲望と愛憎。精緻な構成で描くミステリー・ロマンの傑作。