著者 : 喜多延鷹
スペイン大衆小説の登場! 日常のなかの絆! この小説を読もうと思ったら他の計画を立ててはならない。読み始めると、笑いこけ、泣きじゃくり、時には笑いこけながら泣いてしまうから、という理由だが、時には喉も詰まらせられる、とスペインの書評氏 テレサ は言う! 主人公クララは35歳。離婚して、幼稚園児と小学生の二人の男の子を一人で育てている。仕事はテレビのプロダクション会社勤務。元の妻であるクララに内緒で家を抵当に入れて騒ぎをおこしたり、仕事でも失敗を繰り返している、元夫からの養育費の支払いは滞っており、日曜日には生活のためのアルバイトをし、息子たちにも気を配り、他の知り合いと時に享楽的な付き合いを続けて、問題含みでありながらもごくふつうの生活を送っている。表面上はクララに辛く当たってばかりの母親は、心の中ではクララを愛してもいて、父親の方はというと、離婚後、やはり昔からの愛人マイテと一緒であっても、娘とは連絡し合い、離婚された元の妻も愛しているのだった。そんなクララを支える精神科医ルルデス。仕事上の上司カルメン。仕事仲間のエステル。特に好きでもないが、いつでも寝ることのできるディレクターのミゲル。同僚の魅力的で心惹かれる友人、ロベルトとも、やがてその希いも達せられるのだった。小説中の登場人物は、体のスタイルや性格の長所、欠点などが活き活きと描かれ、いつどこででも市井で知り合えるような人々ばかり………やがてクララは誰の子か分からない子どもを生む。その誕生祝い、そこでは、多くの関係者が集まることとなり、あたかもカタツムリの殻のように、自分も家族や友人たちに支えられていることをクララは自覚するのだった。原書名 Los caracoles no saben que son caracoles.
農園主とその労働者たちの生きる姿を 圧倒的な筆致で描き出す名作! 舞台は1960年代スペイン。 荘園制の残り香かおるスペイン南西エストレマドゥーラの大農園で、還暦を過ぎ、 認知症を患ったアサリアスは暇を出され、義弟の家へやっかいになる。 義弟はすぐれた嗅覚をもち、主人の狩りのお供にと重宝されていたが、 ある日、事故で足を骨折してしまう。義弟のかわりにアサリアスがお供をするも、 いつもどおりとはいかない。 狩りの調子は振るわず、苛立った主人が怒りをぶつけた先は…… 第一巻 アサリアス 第二巻 ちび・パコ 第三巻 トンビちゃん 第四巻 狩猟助手 第五巻 事故 第六巻 犯罪 訳者あとがき
本邦初訳! 20世紀スペイン文学を代表する作家デリーベスの短・中篇集。 都会と田舎、異なる舞台に展開される四作品を収録。 「自然」、「身近な人々」、「死」、「子ども」 ──デリーベス作品を象徴するテーマが 過不足なく融合した傑作集。
ノーベル賞候補のスペイン文学を代表する国民作家の記念碑的な作品! フランコ独裁政権下、作家として抵抗する作者デリーベスが、カスティーリャ地方の貧しい農村の描写を通して、その怒りを文学に昇華させたロングセラー!
少年の息づかいが聞こえてくる、山村での甘酸っぱく、ほろ苦い青春、そして日々の生活。ベストセラー作家が描く文学史にのこる“スペイン版スタンド・バイ・ミー”。--「この小説はドン・キホーテ以来受け継いできたスペイン文学の伝統を引き継いだものである。主人公に立身出世を望む父。その主人公も金持ちの娘ミカに憧れ、年が十も違うのに結婚さえ望む。これらを理想主義の象徴とすれば、この村に止まり、ガキ大将ローケの下に庇護されて、楽しく子供として過ごし、やがてはソバカスだらけのウカ・ウカをお嫁さんにしようか、という現実主義、この二つが主人公の心の中で絶えず戦いながら、最後にウカ・ウカによって、現実主義と理想主義の統一を暗示する構成になっている。また、悪童三人組が繰り広げるいたずらの数々、ガキ大将ケーロの逞しさはピカレスク小説の祖『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を彷彿させるものがある。」(訳者あとがき)
スペイン語圏で多くの読者をもつデリーベスの最新作。独裁者フランコの死を前に騒然とした空気に包まれたカスティリャの小都市で、つつましい生活を送る画家が、亡き妻の思い出を娘に語りかける悲哀に満ちた物語。
ふとしたきっかけで56才の女性に、65才の男がせっせと恋文を送り始める。男側の恋文だけで成り立つこの小説は、デリベス得意のモノローグもので新小説の萌芽といわれる「マリオとの5時間」の延長線上にある。ユーモアとアイロニーに満ちたスペインの書簡小説。