著者 : 土屋政雄
人工知能を搭載したロボットのクララは、病弱の少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。生きることの意味を問う感動作。愛とは、知性とは、家族とは?ノーベル文学賞受賞第一作、カズオ・イシグロ最新長篇。
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。英国最高峰の文学賞、ブッカー賞受賞作。
寛政11(1799)年5月9日、若き産婆・藍場川織斗は長崎奉行の愛妾・川蝉の息子を難産の末、無事取りあげる。一方、オランダ商館に赴任した事務員ヤコブ・デズートは、商館長の懐刀として活躍しながら、淡い恋心を織斗に抱く。ペリー来航に先立つ1800年代前後の長崎出島を舞台に、オランダ商館長フォルステンボース、博識かつ公正なる医師マリヌス、新時代を夢見る通詞・緒川宇佐衛門、不知火山の比丘尼坊を支配する峡河藩主・榎本僧正のほか、杉田玄白、前野良沢など、虚実ないまぜののありうべき物語が華麗かつ自在に繰り広げられる。日本にも馴染みの深い著者による、ブッカー賞最終候補の最高傑作、ついに刊行!
邪教の寺に囚われた織斗は、猫の道から脱走を企て、ヤコブと緒川宇左衛門は、織斗の救出を計画し、イギリスの軍艦は、オランダ利権と銅の略奪を狙う。江戸時代の長崎・出島を舞台にしたベストセラー。
アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士…さまざまな人々に出会いながら雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとはー。失われた記憶や愛、戦いと復讐のこだまを静謐に描くブッカー賞作家の傑作。
ウェスティッシュ大学野球部の捕手マイク・シュウォーツは、痩せっぽちの高校生ヘンリーの守備練習に見とれていた。ますます強くなるコーチのノックを、この小柄な遊撃手は優美なグラブさばきで楽々と捕え、矢のような球を次々と一塁に送る。その一連の動きはまさに芸術品だった。「来年はどこの大学でプレーするんだ」と聞いた。「大学へは行かない」シュウォーツはにやりとした。「さて、そうかな」シュウォーツはようやく見つけたのだ。みずからの弱小チーム立て直しの切り札をーアメリカ文学界の新星が贈る、野球への愛にあふれる傑作小説。
シュウォーツとの猛特訓の結果、第三学年のシーズンが始まるころには、ヘンリーはウェスティッシュ大学はじめてのメジャーリーグのドラフト候補になっていた。打撃の腕をメキメキと上げ、守備でも、憧れのアパリシオ・ロドリゲスのもつ連続無失策の全米大学記録にあと一試合まで迫っていた。しかし肝心の試合で、なんでもないショートゴロを捕まえたその後の送球が、彼の周囲の人々-シュウォーツ、オーエン、アフェンライト学長、ペラーの人生を一変させる。もちろん、ヘンリー自身の未来をさえ…。『ニューヨーク・タイムズ』ベストセラー!今世紀最高のデビュー作。
穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?-ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。
第一次世界大戦後のパリ。芸術家が享楽的な日々を送るこの街で、アメリカ人ジェイク・バーンズは特派員として働いていた。彼は魅惑的な女性ブレットと親しくしていたが、彼女は離婚手続き中で別の男との再婚を控えている。そして夏、ブレットや友人らと赴いたスペイン、パンプローナの牛追い祭り。七日間つづく祭りの狂乱のなかで様々な思いが交錯するーヘミングウェイの第一長篇にして初期の代表作。
ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とはーほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの特別階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、音楽をテーマにした五篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描きだしたブッカー賞作家初の短篇集。
20世紀アメリカの最も偉大な語り部が、冷徹な筆致と壮大なスケールで描く父と子、家族、そして人間の自由の物語。時は19世紀末。厳しくも雄大な自然に囲まれた開拓地カリフォルニア州サリーナスは、限りない希望を胸に抱く人々で溢れていた。その一人、厳格な父の命で心ならずも参加した戦争に疲弊した男アダム・トラスク。美女キャシーとの結婚にみずからの幸せを見出したアダムは、妻と生まれてくる子供のために永遠の楽園を建設しようと決意し、農夫にして鍛冶屋、天才発明家でもあるサミュエル・ハミルトンに手助けを求めた。だが、キャシーを一目見たサミュエルは、彼女の冷たい眼差しと奇怪な振る舞いに気づき、その得体のしれない邪悪の影に身震いするのだった-アメリカ文学史上に燦然と輝くノーベル賞作家畢生の大作が新訳で登場。
父と子の葛藤はなぜ繰り返されるのか?人間の自由な心とは何か?瑞々しい新訳で甦るスタインベック文学の集大成。妻キャシーが家を去り、失意の深い底に沈んだアダム。賢明な中国人の召使リーによってトラスク家の生活は守られていたが、アダムの心は楽園への夢から遠く離れ、生まれてきた双子さえ目に入らないまま長い年月が過ぎた。だがやがて、自らの死期を悟ったサミュエルは、凍てついた友人の心を絶望から救うためキャシーの邪悪な真実を明かしてしまう…。一方、双子は父親の愛なく思春期を迎えた。愛らしく純真なアロンとひねくれ者のキャル。町育ちの美しい少女アブラと仲睦まじくなっていくアロンを横目に、孤独なキャルは自分でも分からない何かを探し求め、深夜の街を徘徊しはじめる-ジェームズ・ディーンを一躍スターダムに押し上げた名作青春映画の原作。
南北戦争の末期、負傷した南軍兵士インマンは、収容された病院から脱走ー恋人エイダが待つ故郷へ向けて、500キロの徒歩の旅が始まった。多くの危険と困難に遭遇し、誘惑や裏切りの試練にさらされながら、彼が遭遇する様々な出来事、そして人人。時には翻弄され、またある時は救われるインマンの過酷な運命…。壮大なアメリカの原風景を丹念に描いた叙事詩、至高のラブストーリー。
深窓の令嬢であるエイダは、コールドマウンテンでの生活にようやく慣れてきた。そんな折、牧師である父が急死。彼女は生活手段を失い、明日の食物にも事欠く事態に。しかしインマンの帰りを信じ、この地にとどまることを決意。そんな彼女のもとに謎の少女ルビーが現れる。ルビーの援助で次第に大自然で生きる術を身に付けるエイダ。そしてついに、インマンが帰る日がやってきた…。
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
南北戦争末期、負傷した南軍の兵士インマンは、故郷ノースカロライナに残してきた恋人エイダの許へ戻ろうと脱走した。危機と困難に満ちた旅の末、エイダとの再会を果たした主人公だったが…。アメリカの大自然を背景に、美しく詩的な言葉で描かれた、悲恋の物語。
舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。
英国ブッカー賞受賞。瀕死のイギリス人患者と若く美しい看護婦ハナ-砂漠の情景から不倫の愛の行方まで、詩的言語に包まれた物語が静かに溢れ出す…カナダ人作家の最高傑作。時は第二次世界大戦の末期である。場所はフィレンツェの北、トスカーナの山腹に立つサン・ジロラーモ屋敷。ここで、四人の男女が出会う。若いカナダ人の看護婦は、ハナ。…ハナの父親の友人で、泥棒のカラバッジョ。…インド人でシーク教徒のキップは、爆弾処理を専門にする工兵。…そして、ベッドに寝たきりながら、その発揮する強大な求心力に三人をつつんでいるイギリス人患者。…心の内にそれぞれの物語を抱え込んだ四人が、互いに相手の物語を読もうとし、そこにすばらしい小説世界が出現する。