著者 : 増山実
どこ行ったって、へこたれんと生きていく。 それが能登の人間やーー。 著者渾身の新たなる代表作 懸命に生きようと見上げた空には、いつも「星」があった。 父が語り始めた、波瀾万丈の生涯を送った一族の物語とはーー。 人生の輝きが胸を打つ、感動のファミリーストーリー。 2024年元日、能登半島に震度7の地震が襲った。大阪で暮らすホテルマン・星場恵介は、故郷で震災が起こったことを入院中の父に伝えた。能登半島で生まれ育った両親は戦後、若くして大阪に出、今は二人とも入院生活をしている。同じ病院にいながら会うことのできない両親を案ずる恵介に、父はこれまで語らなかったふるさとでの母との思い出、そして故郷を離れ波瀾万丈の人生を送った一族の話を語り始めた。心震える感動の家族物語。
14歳のおれたちは自転車を走らせた。 サッカーの“神”に会うという夢を乗せて。 恋愛、友情、夢、大人への憧れと逃避……。 傑作青春小説。 しっかり者だがどこか流されがちなぺぺ、気弱なオカルト好きのツヨシ、運動神経抜群で人気者のサトル、ムードメーカーのエロ番長・ゴロー。北九州に住む中学生4人組は、いつでも一緒のサッカー仲間だ。そんな彼らのもとに歓喜と絶望のニュースがやって来た。大ファンで、雑誌で見かけてはサッカーの「神」と崇めてきたヨハン・クライフ。彼がオランダ代表で出場するW杯が日本初の生中継されるが、九州は放送地域外だという。馬鹿馬鹿しくも時に切ない日々を過ごしながら、4人は“クライフ同盟”の名の下に秘密の計画を進めていく。大型台風が接近する中、放送を見届けることはできるのか?
「実は、私には、今まで誰にも話してこなかった、秘密があります」 昭和29年に大阪の待兼山駅前で父と母が始めた書店と喫茶店。 1階の書店を兄が、2階の喫茶店を弟が継いだが、時代の流れもあり、65年続いた店の歴史の幕を閉じることに。 残された数ヶ月間、月に一度開かれる「夜会」で、街にゆかりの人々が語る とっておきの思いがけない体験、生涯最高の思い出とは……。心あたたまる連作短編集。 (第一話:待兼山ヘンジ/第二話:ロッキー・ラクーン/第三話:銭湯のピアニスト/第四話:ジェイクとあんかけうどん/第五話:恋するマチカネワニ/第六話:風をあつめて/第七話:青い橋) 【著者略歴】 増山 実 (ますやま・みのる) 1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、それを改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に第4回大阪ほんま本大賞を受賞した。他の著書に『空の走者たち』『風よ 僕らに海の歌を』『波の上のキネマ』『甘夏とオリオン』『ジュリーの世界』(第10回京都本大賞受賞作)『百年の藍』がある。
ジーンズに懸けた人々の百年にわたる物語。 鶴来恭蔵は、故郷の岡山県児島から浅草に来ていた。車夫の政次のアドバイスにより、憧れの竹久夢二に奇跡的に会うことができた。しかし翌日の大正十二年九月一日、関東大震災に遭遇。親を亡くした娘りょう、政次とでしばらく避難生活をしていた。りょうと児島に戻るという時に、政次からアメリカの救援物資にあったズボンを受け取る。生まれつき色覚に異常があった恭蔵だがズボンの藍色に魅せられ、国産ジーンズを作りたいと考えるようになる。 時代は進み、日本は太平洋戦争に突入し、鶴来家もその大きな波に巻き込まれた。 戦後、世の中が激動する中で鶴来の会社を支えたのは、りょうだった。そして、彼女も日本でジーンズを作るという恭蔵の夢を忘れてはいなかった。ある日、鶴来の家をひとりの男が訪ねてきた。恭蔵の思いは、途切れることなく繋がっていたーー。
「あいつはな、誰よりも悠然と歩くんや」時代の大きな曲がり角となった70年代の京都に「河原町のジュリー」と呼ばれる有名なホームレスがいた。無数の視線に晒されてもいつも目抜き通りの真ん中を歩き、商店街の一等地で眠る男。ガラス玉のような目で空を見上げる彼は、いったい何者なのか。なぜこの街にやってきたのか。交番に赴任したばかりの新人巡査・木戸が最初にその名を聞いたのは、ひったくりにあったと交番に駆け込んできた女性からだった。彼女は自分のネックレスを「河原町のジュリー」がひったくっていったと言うのだがーー。京都国体の開催を機に、街から「異物」が排除されようとしていく中で、彼の伝説は生きていた。かつてこの街で彼と人生を交錯させた人々は、やがてその「真相」を知る。人間の自由と尊厳を昭和の時代と令和の現代に浮かび上がらせ、人が「物語る」ことの意味を問うた感動作。 目 次 プロローグ 第一話 花の首飾り 第二話 坂の向こう 第三話 夜の猫たち 第四話 鳥の名前 第五話 熱い胸さわぎ 第六話 ジュリーと百恵 第七話 黒と白の季節 第八話 四十年後 第九話 真珠貝 第十話 再会 エピローグ あとがき
大阪の下町、玉出の銭湯に居候する駆け出しの落語家・甘夏。彼女の師匠はある日、一切の連絡を絶って失踪した。師匠不在の中、一門を守り、師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。一門のゴシップを楽しむ野次馬、女性落語家への偏見ーー。苦境を打開するため、甘夏は自身が住んでいる銭湯で、深夜に「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を行うことを思いつく。寄席にはそれぞれに事情を抱える人々が集まってきてーー。
第二次世界大戦時、日伊共同の任にあたっていたイタリア海軍の特務艦が神戸沖にいた。乗組員の料理を担当していた兵士、ジルベルト・アリオッタはイタリア政府の突然の降伏で祖国に帰る道を断たれる。戦後間もない宝塚で日本人と結婚し、イタリア料理店を始めるジルベルトと家族たち。見慣れぬ料理は宝塚の人々を魅了していく。戦争に翻弄されながら、激動の昭和を生き抜いてきた親子三代の軌跡。彼らと交錯する、様々な人生。史実をモチーフに異郷に生きる人々の絆を描く感動のストーリー。(解説・野村雅夫)
ベテラン放送作家の工藤正秋は、阪急神戸線の車内アナウンスに耳を奪われる。「次は…いつの日か来た道」。謎めいた言葉に導かれるように、彼は反射的に電車を降りた。小学生の頃、今は亡き父とともに西宮球場で初めてプロ野球観戦した日を思い出しつつ、街を歩く正秋。いつしか、かつての西宮球場跡地に建つショッピング・モールに足を踏み入れた彼の意識は、「いつの日か来た」過去へと飛んだー。単行本刊行時に数々のメディアで紹介された感動の人間ドラマ、満を持して文庫化!