著者 : 増田まもる
首謀者不明のうえ犯行声明もなかったヒースロー空港の爆破テロに巻き込まれ、精神科医デーヴィッドの前妻ローラは無意味な死を遂げた。デーヴィッドはテロの首謀者を突き止めようと試みる中で、医師グールドが主導する、高級住宅街チェルシー・マリーナの住民による目的なき革命計画の存在を知る。20世紀SF最後の巨人バラードによる黙示録的傑作。
長い失踪の後、帰宅した祖父が語ったのは、ある一家の奇怪で悲惨な事件だった。一家の四人の兄妹は、医者である父親に殺された母親の体の一部を、父親自身の手でそれぞれの体に埋め込まれたという。四人のその後の驚きに満ちた人生とそれを語る人々のシュールで奇怪な物語。ポストモダン小説史に輝く傑作。
7月7日、日曜日の朝。カナダのある町に突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現、時速1600キロで西に向かいだした。触れるものすべてを消滅させながら…。世界じゅうを混乱に陥れる怪現象「刈り跡」、不可解な死の真相を迷宮に追う警部「窓辺のエックハート」、想像力の罪を犯し幽閉された人々をめぐる表題作など、奇想きらめく20の物語を収録。
人類が拡大を目指し大宇宙に翔び立っていった「地球離脱」から数千年。地球に残った人々は科学を捨て、半ば無気力に暮らしていた。だが、太陽と地球のあいだに「暗黒星雲」が忍びよってきたことで、事態は一変する。星雲が太陽を遮り、すでに大気の薄くなった地球から、今度は光までもが失われようとしているのだ。このままでは大氷河期が訪れ、人類は滅亡してしまう。そんなある日、「滑る石の平原」で異変が起こった。何千年ものあいだ平原を滑りつづけてきた32個の石が静止し、完全な円形に並んだのだ。これは人類破滅の予兆なのか?奔放なイマジネーションで終焉を迎えつつある超未来の人類の姿を描き、ウィリアム・ギブスン、ノーマン・スピンラッドなど英米のSFウルサ方を唸らせた英国SF作家協会賞受賞作。
暗黒のハイテク未来都市バンコク。ロボット種族リリム殱滅の命運を背負ったエロヒム、ダゴン(イグナッツ・ズワクフ)は愛車ブガッティを駆ってセックス・ドールのホロコーストに明け暮れていた。しかし、リリムと人間との交配によって誕生した人間亜種メタは、地球支配の覇権を握りやがて全宇宙を再構築する野望に沸き立っていた。メタは仮想現実による歴史の改編、さらにはダゴンの過去にまで介入した。一方、頽廃の都火星のパリでは、デッドガール、プリマヴェラとイグナッツ・ズワクフの娘にして官能的サイボーグ美少女ヴァニティ・セント・ヴィリディアナが情報複製ミーム・メタによってプログラムされた淫蕩なサイコイド心身症に蝕まれていた。彼女は亡き母プリマヴェラの超子宮(CPU)を通して父ダゴンにアクセスした。そして倒錯的で残酷な処刑遊戯の果てのエロティックな死を待ち望んでいることを父に告げたのだった。超次元的カウボーイ・ダゴンはヴァニティの待つ火星へ向け仮想現実にダイヴした。
女は城壁の中の「女の国」で政治をつかさどり、男は外の「戦士の国」で軍隊を組織するー“大変動”の後の荒廃した世界で、人々は男女に分かれた社会を作り、微妙なバランスを保って生きのびていた。「女の国」に暮らす少女スタヴィア。ひとりの少年戦士と恋に落ちた彼女が数奇なる恋路のはてに見出した、この国の驚くべき秘密とは。気鋭の女性作家テッパーが、未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く話題作。
ある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を四人の子供の体内に埋めこんだ。幼いころ、そんな奇怪な事件の話をしてくれたのは、三十年間の失踪から戻って死の床に伏していた祖父だった。いまわたしは裕福な中年となり、ここパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をしている。ふと、あの四人の子供のその後の運命がどうなったか、調べてみる気になった…虚実の皮膜を切り裂く〈語り=騙り〉の現代文学。
1999年。世紀末アメリカ。衰えた国力は回復しようもなく、国民は耐乏生活を強いられていた。貧困と麻薬と伝染病がひろがり、人々の不安を食い物にする新興宗教がはびこっている。その不安をあおるように、アメリカ各地でUFOの目撃例が急増、人間そっくりの謎の存在が超自然的事件を引き起こしていた。巨大ネットワーク局の記者ジョージはこの事件に注目して取材を開始したが、やがて恐るべき確信を抱くようになった。
なんとしても異星人の存在をあばき、地球侵略を未然に防がなくてはならないー。ジョージはそう確信した。千年王国到来を訴えるテレビ伝道師ギルレイもまた、異星人来訪を確信していた。西暦2000年の訪れと同時に、キリストを司令官とする宇宙船が降臨、最後の審判が始まるというのだ。多彩な人物が狂気のドラマを織りなすあいだにも、新千年紀は刻々と近づいていた。悪意と哄笑と風刺に満ちた、米SF界俊英の野心作。
海辺の小さな町に、あのカーニヴァルがやってきた。十二年ごとにめぐりくる〈夏至〉のはじまりだ。巨人の靴が流れ着き、人魚のような生き物が釣りあげられ、ネズミの仮面をつけた小人が走り去る。それは〈夢の国〉が立ち現われる時間、そして少年たちの冒険の季節。過去と現在と未来がひとつになるとき、彼らは…。世界幻想文学大賞作家が贈る。現代マジカル・ファンタジィ。
辺境の惑星で古美術商を営むアレックスのもとに悲報が届いた。唯一の肉親のおじが、恒星間飛行中に死亡したのだ。遺品を調べるうち、アレックスはおじが情熱を傾けていた調査に興味をひかれた。アシュール人と人類の戦史に燦然と輝く英雄クリストファー・シムーおじはこの英雄の謎に満ちた実像を解明しようとして、志なかばに倒れたのだ。おじの遺志を継ぎ、歴史をたどる銀河の旅に出発したアレックスだったが…?
銀河英雄の伝説のヴェールをはぐアレックの旅は、開幕から不吉な様相を帯びてきた。おじが調査結果のいっさいを記録していたファイルが、何者かに盗まれてしまったのである。だれが、なんの目的で盗んだのか?おじは何を見つけようとしていたのか?見えざる敵の妨害に悩まされながらも、アレックスは厚い時間の壁にはばまれた歴史の謎に果敢に挑んでいく。新鋭マクデヴィットが雄渾の筆致で放つ宇宙SF決定版。
恒星間を巡り、数多の異星生命体を捕獲してきた名うての狩人、ビリー。とうに引退した彼が、ある日国連から召喚されるー通商条約締結を目前に相手星の過激派が送り込んできた暗殺者を阻止せよ。彼は任務遂行のため、かつて捕らえた最強の生命体、変身獣“キャット”に協力を乞うー彼自身の命と引替に。ビリーの最後の戦いが始まろうしていた。