著者 : 夏目漱石
青春を爽快に描く「坊っちゃん」、知識人の心の葛藤を真摯に描く「こころ」。日本文学の永遠の名作を一冊に収めた漱石文庫。読みやすい大きな活字、詳しい年譜、注釈、作家案内。(江藤淳)
夢に現れた無意識の世界を綴る「夢十夜」。美しい春の日、青年画家と謎の美女との出会いを描く「草枕」。漱石の東洋的ロマンティシズムの世界を伝える名作。(解説・平岡敏夫/鑑賞・大林宣彦)
東京帝大に入学するため九州から上京した小川三四郎にとって、東京は新鮮な驚きに満ちていた。里見美禰子と出会い、強く魅かれてゆく自分に気づいたのも、その驚きのひとつだった…。若者の恋と失恋を描いて常に新たな感動を呼ぶ青春文学の傑作。
愛されることをのみ要求して愛することを知らず、我執と虚栄にむしばまれ心おごる麗人藤尾の、ついに一切を失って自ら滅びゆくという悲劇的な姿を描く。厳粛な理想主義的精神を強調した長篇小説で、その絢爛たる文体と整然たる劇的構成とが相まって、漱石の文学的地位を決定的にした。明治40年作。
『道草』が『猫』執筆前後の漱石の実生活に取材した自伝小説であるとする見方は定説といってよい。だが、実生活の素材がどういう過程で作品化されているかを追究してゆくと、この作品が私小説系統の文学とは全く質を異にしていることが分かる。
倫 敦 塔 カーライル博物館 幻影の盾 琴のそら音 一 夜 薤 露 行 趣味の遺伝 解 説……(江藤 淳) 注…………(石 井 和 夫)
三年まえ友人平岡への義侠心から自らの想いをたち切った代助は、いま愛するひと三千代をわが胸にとりもどそうと決意する。だが、「自然」にはかなっても人の掟にそむくこの愛に生きることは、二人が社会から追い放たれることを意味した。
何だか訳の分からない変な話、ただただ笑ってしまう可笑しな話、現実には有り得ない面妖な話、魂も凍る恐ろしい話。人生、時代、社会など、さまざまの意味づけで覆われてきた。“正統文学史”からはみ出した不思議傑作16篇を集成。
夢 十 夜 文 鳥 永日小品 元日/蛇/泥棒/柿/火鉢/下宿/過去の匂い/猫の墓/暖かい夢/印象/人間/山鳥/モナリサ/火事/霧/懸物/紀元節/儲口/行列/昔/声/金/心/変化/クレイグ先生 解 説 阿 部 昭 注 解 古 川 久(編)