著者 : 大田朋子
旅で訪れたギリシアの島で気品に満ちた男性と出会ったベス。浜辺で言葉を交わすうち強く惹かれ合い、めくるめく夜を過ごしたー連絡先も名字も告げず、ただ思い出だけを分かち合い、ふたりは別れた。やがて妊娠に気づいたベスは厳格な両親の不興を買って実家を出たが、数カ月後、仕事でロンドンにいる間に激痛に襲われ、破水してしまう。搬送先の病院で早産の赤ん坊を取り上げることになったのは、なんと、あの忘れえぬ一夜を共にした、おなかの子の父親エリアス!再会の衝撃に動揺するベスとは対照的に、彼はいたって冷静だ。生まれてくるのが我が子だと知ったら、彼はなんと言うかしら?しかし、エリアス側にもまた、重大な秘密があるのだった…。
社長フィンの仕事を手伝ったお礼に、ホリーは自宅での夕食に招かれた。以前より密かに惹かれていたこともあり、自然に彼と夜をともにする。だが独身主義の彼は、一度限りのことだと冷たく彼女を突き放した。ある日、新婚旅行へ行く社長秘書に代役を頼まれ、ホリーは急遽、フィンのカリブ海出張についていくことになる。そこで垣間見たのは、クリスマス嫌いを公言しながら、恵まれない子供たちに贈り物をする活動を始めた彼の優しさだった。これ以上好きになっても傷つくだけ。なのに、ますます惹かれてしまう。恋のジレンマに胸を痛めるホリーだったが、ある朝、突然吐き気を覚え、バスルームに駆けこんだーああ、まさか!
病院で働くティナは、姉とその3人の幼子と暮らしている。姉は浮気性の夫に金品を持ち出されたうえに借金まで背負わされ、産後鬱を患っているので、ティナが支えなければならなかった。とはいえ、彼女自身も学費を返済中で生活に困窮しているため、子守りも雇えずやむなく生後5週間の姪を職場へ連れていった。すると、ハンサムで優秀と評判の産科医ジョックに見咎められ、未婚の母であることを隠して不正に職を得たといわれなき非難を浴びる。あまりに一方的な言葉に、怒りと悲しみに打ち震えたティナは、彼の頬に平手打ちをくらわせ、その場で仕事を辞めてしまうが…。
リリーは勤務先のパーティーでデイモンと出会って恋に落ちた。だが大富豪の彼は企業買収の仕事を最優先する人間だと思い知り、自分のほうから身を引いたのだった。3カ月後、セレブの誕生日パーティーでリリーはデイモンと再会し、洗練されたタキシード姿の彼から驚くべき提案を聞かされる。なんと結婚してほしいというのだ!余命1年と宣告された叔父の財産を相続するためには、一刻も早く結婚して子供をもうけなければならないという。リリーは承諾したーただし、ベッドはともにしない条件で。「ええ、いいわ。わたしはもうあなたの子供を身ごもっているから」
メルボルンの小児病院で働くことになった医師のルシンダは、周囲になかなか打ち解けられずにいた。そんな中、ただ一人、彼女の目と心を奪ったのは麻酔医のセブだった。男らしく魅力的な彼は病を患う5歳の息子を独りで育てていて、ルシンダが彼の息子を手術により救ったことで、二人は急接近する。やがて出張先で一線を越えて恋人関係になるが、ほどなくセブの心に迷いが生じているのを察した彼女は、わたしは継母には向かないと嘘をつき、さよならを告げた。その後に、予期せぬ奇跡がわが身におこるとも知らず…。
酒浸りの父と暮らすウエイトレスのVJはある日、道に迷ったフェラーリの男性に声をかけ、息をのんだ。なんてセクシーなの。まるでギリシア彫刻のように美しい人だわ。彼の名はクリス・デメトリアス。有名な映画監督だった。彼に誘われバーで夢のような時を過ごして帰宅すると、不機嫌な父に不良娘と罵られて殴られ、VJは涙をこらえ家を飛び出す。あてどなく歩くうちクリスが現れた。痛々しいあざを見て事情を察した彼に、VJは友達の住む街まで乗せてもらうことになる。道すがら彼は、愛とは単なる欲望で恋愛も結婚も無意味だと意外な持論を展開した。あまりに頑なな彼の言葉に、VJは思わず口走った。「私があなたに恋愛指導をするわ」北米で人気沸騰中!キャット・キャントレルの日本語版デビュー作。愛を知らないギリシア人富豪と恋を夢見る純真なウエイトレスの情熱の行方は?テンポよく繰り出される軽妙な台詞のかけ合いは、舞台劇さながら。超弩級の迫力。