著者 : 大社淑子
漆黒の肌を持って生まれたために母から拒絶された少女。成人した彼女は、去った恋人を追って旅に出て、様々な人々と出会う。ノーベル文学賞受賞作家が現代を舞台に描いた贖罪と生まれ直しの物語
元兵士のフランクは戦争の悪夢から逃れられず虚ろな日々を送っていた。しかしある日、妹のシーが勤め先で病床にあるという知らせが彼のもとに届く。シーを迎えに行ったフランクは、ともに帰郷しようと決める。小さく息苦しかった故郷の町、ロータスを出たいがために、昔の彼は入隊したのだが…。1960年代のアメリカを舞台に傷を負った兄妹の旅路を描いた、ノーベル賞作家による静かな慰めに満ちた物語。
1920年代の冬のある日、男が若い女を撃ち殺した。女は男の愛人だった。男の妻は女を激しく憎み、柩のなかの死者の顔に切りかかった。しかし、妻は次第に死んだ愛人のことを知りたいと思いはじめる。都会に暮らす男女のなかに生き続ける、時をさかのぼる憧憬と呪縛。過去、現在、未来を自由自在に往来しながら、饒舌な謎の語り手によって、事件の背景が明らかにされていく。ノーベル賞作家が卓越した筆致で描き出す衝撃作。
ボトム(どん底)と呼ばれる丘の上で育った黒人の少女、奔放なスーラとおとなしいネル。正反対の性格をもつゆえに、少女たちは固い友情で結ばれた。二人で犯した許されざる罪でさえ、隠し続けられるほどの絆。だが時がたち、ネルの結婚式の日を迎えると、なぜかスーラは町を去ってしまう。十年後に二人は再会を果たすものの、その友情は…。黒人社会の光と影を、女性たちの成長とともに描く、ノーベル賞作家初期の傑作。
誰よりも青い眼にしてください、と黒人の少女ピコーラは祈った。そうしたら、みんなが私を愛してくれるかもしれないから。白い肌やブロンドの髪の毛、そして青い眼。美や人間の価値は白人の世界にのみ見出され、そこに属さない黒人には存在意義すら認められない。自らの価値に気づかず、無邪気にあこがれを抱くだけのピコーラに悲劇は起きたー白人が定めた価値観を痛烈に問いただす、ノーベル賞作家の鮮烈なデビュー作。
彼らは最初に白人の娘を撃つ。残りの女たちについては、ゆっくり片付ければいい。オクラホマの片田舎の黒人だけが住むルービィの町外れの修道院に流れついてきた女たちはさまざまな話を紡ぎ出す。男と女、親と子、富める者と貧しき者、肌の色の濃い者と薄い者、さまざまな相克が現れ出てくる。ノーベル文学賞受賞後5年の歳月を経て発表された現代アメリカ文学の頂点。
1926年の冬、黒人たちのシティ。男が女を撃ち殺した。女は18歳の愛人だった。葬儀の日、柩の中の女の顔に、男の妻がナイフで切りかかった。ジャズの即興のように過去、現在、未来を自由に往来しながら、謎の語り手によって明かされる事件の周辺。深遠や愛の物語に木霊する情熱、詩情、そして官能-センセーションを巻き起こした話題作。
黒人の少女クローディアが語る、ある友だちの悲劇-。マリゴールドの花が咲かなかった秋、クローディアの友だち、青い目にあこがれていたピコーラはみごもった。妊娠させたのはピコーラの父親。そこに至るまでの黒人社会の男たちと女たち、大人たちと子供たちの物語を、野性的な魅惑にみちた筆で描く。白人のさだめた価値観を問い直した、記念すべきデビュー作。
ニューイングランドの海辺の別荘に独り住む女性詩人…。ある日、若い男女がニューヨークからインタヴューにやってくる。あなたに詩の霊感をあたえるミューズはだれですか?詩人は、過去に愛した女たちや夫を想い出す。女性の芸術家にとって創造の源泉は何だろうか?サートンの小説の代表作。
1870年代のニューヨーク、格式や富の大小ではっきり階級の定まった社交界に、長年ヨーロッパで暮し自由な精神を身につけたエレンが戻ってきた。彼女は伯爵である夫との離婚を望み、いとこの婚約者で弁護士のアーチャーの依頼人となる。離婚は大変な醜聞であり、一族の不名誉である。アーチャーはエレンに魅かれ、真摯な愛を貫こうとするが果たせない。ピューリッツァー賞受賞作。
旧友の愛娘、教え子、そして何よりも、最愛の女性-そのプリルが人生の春に命を散らせてしまうとは!しかも何者かの手によって。ニール・ケリー教授の喪失感はたとえようもないほど大きかった。妻を病で失って7年、ようやく心の拠り所を見出したと思っていたのだが…。プリルが殺害されたのは、図書館で毎春行われるコンサートの最中だった。何者かに殴られて書架の後ろに倒れているのを発見されたのだ。状況から判断して犯人は大学内の人間と考えられた。だが、いったいどんな理由で誰からも愛された彼女が殺されたのか?プリルの両親から懇願され、ニールは絶えざる苦悶に苛まれながらも、捜査を担当するスカーリー署長に協力して周囲を調べ始めた。大学内に渦巻く愛憎、そして現実と過去の狭間から現れた事件の真相とは?洗練された比喩をちりばめた知的な文体で描く愛と殺人-MWA,CWA賞候補の本格傑作。