著者 : 宇江佐真理
息子を授かった町方同心・不破龍之進は、仲間の反対を覚悟しつつある決断をする。一方、貴重な絵の具を盗まれた伊与太は、家族にも知らせず江戸を離れー髪結いの伊三次と深川芸者・お文の恋から始まった大傑作シリーズ、感動の最終巻。子供を育み、年をとる。こうして人の世は続いてゆく。(『擬宝珠のある橋』収録)
【文学/日本文学小説】北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、独り暮らしを楽しもうとしていた矢先、甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意するが……。笑って泣いて──人生の哀歓、夫婦の情愛、家族の絆を描いた宇江佐文学の最高傑作!
松前藩主の嫡子・良昌からの再三の申し出に、側室になることを決意した不破茜だが、良昌の体調が刻一刻と悪化していく。一方、才気溢れる絵を描く弟弟子から批判され、自らの才能に悩む伊与太は当代一の絵師、葛飾北斎のもとを訪ねる。人生の岐路に立つ若者たちに、伊三次とお文はなにを伝えられるのか。
亭主の勇次が忽然と姿を消し、実家の口入れ屋「きまり屋」に出戻ったおふく。色気より食い気、働きもので気立てのよいおふくは助っ人女中として奉公先に出向き、揃いもそろって偏屈な雇い主たちに憤慨したり同情したり。一筋縄ではいかない人生模様を目の当たりにするうち、自分も前を見て歩いていこうと心を決めるーー。市井人情小説の名手が渾身の筆で描ききった江戸のお仕事小説。単行本未収録の短篇「秋の朝顔」併録。
浅草は田原町で小さな古着屋を営む喜十は、北町奉行所隠密廻り同心の上遠野(かとの)のお勤めの手助けで、東奔西走の毎日。店先に捨てられていた赤ん坊の捨吉を養子にして一年、喜十の前に、捨吉のきょうだいが姿を現した。上遠野は四人の子どもも引き取ってしまえと無茶を言うが……。日々の暮らしの些細なことに、人生のほんとうが見えてくる。はらり涙の、心やすらぐ連作人情捕物帳六編。
「離縁、離縁って簡単に言うない。世間様はそうそう離縁なんてするものか」「おあいにく。あたしは一度離縁された女で、うちの人は三度も離縁しているのさ。離縁の玄人だよ」(「夫婦茶碗」)。夫婦喧嘩の仲裁に、日々、大忙し。日本橋堀留町の会所の管理人、又兵衛とおいせは近所の家族の幸せを願い…。懸命に生きる男と女の縁を描く、心に沁み入る珠玉の人情時代小説。
絵師を目指す伊三次の息子・伊与太は新進気鋭の歌川国直に弟子入りが叶い、ますます修業に身が入る。だが、伊与太が想いを寄せる八丁堀同心・不破友之進の娘・茜は、奉公先の松前藩の若君から好意を持たれたことで、藩の権力争いに巻き込まれていく。伊与太の妹・お吉も女髪結いの修業を始め、若者たちが新たな転機を迎える。
昔はよかったと言ったところで、時間は前に進んでいくばかり。過去を振り返っても仕方がない。本作のタイトル通り、明日のことはわからないのである…。大人気シリーズが誕生して二十年。髪結いの伊三次と、その恋女房で深川芸者のお文。仲の良い夫婦をめぐる人びとの交情が、時空をこえて胸を震わせてくれます。
本所五間堀の「鳳来堂」は、父親が営んでいた古道具屋を、息子の長五郎が居酒見世として再開した“夜鳴きめし屋”。朝方までやっているから、料理茶屋や酒屋の二代目や武士、芸者など様々な人々が集まってくる。その中に、かつて長五郎と恋仲だった芸者のみさ吉もいた。彼女の息子はどうやら長五郎との間にできた子らしいが…。人と料理の温もりが胸に沁む傑作。
常連客で賑わう江戸は本所の縄暖簾「福助」。おあきと弘蔵夫婦、見世の切り守りを手伝う娘のおてい。平凡だが幸せな暮らしを営む一家の心配の種は、風来坊の息子・良助のこと。奉公先を飛び出し彰義隊に志願したと風の噂で知り、家族は気が気ではないー。江戸から明治へと、大きな時代の波に翻弄される市井の人々の暮らしと、いつの世も変わらない親心。激動の時代を庶民の視点からダイナミックに描きだす傑作時代長編!
官軍と幕府軍の対立は激化の一途をたどるばかり。彰義隊に身を投じた良助は、上野の山の戦に加わると言い、おあきと弘蔵のもとへ最後の挨拶にやってきた。お願いだから、生きていて…ただひたすらな親の祈りは届くのか。江戸から明治へと大きくうねる時代の波は、人々の人生を容赦なく呑み込んでしまう。移りゆく世相を克明に活写しながら、日々を懸命に守ろうとする市井の者たちの生きざまと人情を謳いあげる感動長編!
お江戸は浅草のはずれ、田原町で小さな古着屋を営む喜十。恋女房のおそめと二人、子がいないことを除けば日々の暮らしには不満はないーーはずだったのに、何の因果か、たまりにたまったツケの取り立てのため、北町奉行所隠密廻り同心・上遠野平蔵の探索の手助けをする破目になる。人のぬくもりが心にしみて、思わずホロリと泣けてくる、人情捕物帳の新シリーズ、いよいよスタート!
一人息子の伊与太が、修業していた絵師の家から逃げ帰ってきた。しかし顔には大きな青痣がある。伊三次とお文が仔細を訊ねても、伊与太はだんまりを決め込むばかり。やがて奉行所で人相書きの仕事を始めるが…。親の心を知ってか知らずか、移ろう季節とともに揺り動く、若者の心。人生の転機は、いつもふいに訪れるもの。
平凡な25歳のサラリーマン、大森連はツーリングに出かけた先で道に迷い、滝の裏に落ちてしまう。目覚めると、そこはなんと天明6年の武蔵国中郡青畑村ー!?時次郎とさな兄妹の許に身を寄せ、川の氾濫や重い年貢が招く貧困等、江戸の過酷な現実を目の当りにしていく連。天明の大飢饉のさなか、村の庄屋が殺害される事件が起こり、連は思い悩みながらも自らの運命を切り拓いてゆくー。感動の長編時代小説!