著者 : 安倍杏子
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養母の死後、アントニアは自らの出生の秘密を遺書で知らされた。21年前、実の母は若くしてアントニアを妊娠したことで勘当され、出産後に娘を知人である養母のもとに養子に出したのだった。今、遠い国の実業家の妻となった実母が、会いたいと言ってきた。養母を失った悲しみに暮れていたアントニアだったが、産みの母を見てみたいという純粋な気持ちで、招待に応じることにする。現地へ飛び、母の住む邸宅を訪れたアントニアは、傲慢さと威厳を漂わせた漆黒の瞳を持つ男性の登場にたじろいだ。母の義理の息子ジャイメ・デ・アルメイダは、歓迎の意も示さず告げた。「戦利品とともにすばやく帰国するのが君の目的なら、僕は許さない!」
リオのランデブーリオのランデブー
1歳7カ月の息子が家のどこにもいないことに気づき、クリスタの心臓は止まりそうになった。ちょうど別居中のブラジル人大富豪の夫ジェフが訪ねてきて、息子は飛びあがらんばかりに興奮し、大喜びしていた矢先だった。ほどなくして居場所がわかった。ジェフから電話が来たのだ。「いま空港にいる。このままこの子を連れてリオへ発つ」クリスタの心臓が今度こそ止まった。お願い、私から奪わないで!「息子に会いたければ、君がこっちへ来ればいいだろう」怒りと悲しみに震えるクリスタはすぐさまリオへ飛ぶが、待っていたジェフから予想だにしない事実を聞かされて…。
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