著者 : 宮内勝典
人々のために祈れー「お前も、沖縄にこないか?」-世界を放浪していた有馬は、かつて世界的新興教団のブレーンだった男・田島に誘われ、沖縄の精神病院で働くことになる。医院長の霧山は元全学連のリーダーで、沖縄返還前後からシャーマン教団の乙姫さまとともに戦争で傷つき心を病んだ人々の治療を続けている。ある日、乙姫さまのもとへ「GRANDMOTHERS COUNSEL」を名乗る集団から、沖縄の「平和への祭典」開催を相談する手紙が届くのだが…。有馬、霧山、乙姫さま、島ハーフの七海とアタル、戦争PTSDを抱える患者のジェーン、宇宙ステーションで働くジムー祝祭の日、洞窟の中でグランマザーたちが祈りとともに世界の悲劇を語り出す時、彼らの運命の歯車は動き出す。私たちは、永遠の戦争の子どもだー善と悪を超えた、“終わらぬ悲劇の連鎖”と“生命の輝き”を描く傑作。
スプーン曲げ少年として一時マスコミの寵児となったジローは、その能力を買われNYに招かれていく。鳶色の明るい瞳を持つ日系女性レイ、黒人の宇宙飛行士ジム、歴史の陰にひそむ男、地球外知性体からのメッセージ電波をさがしつづけるニューマン博士。彼らとの交流を通して、ジローはいま、大きな世界を獲得し始める。
老インディアンに誘われるままに保留地に入り、過酷な儀式に耐えたジローは、FM放送で先住民を奮い立たせるシャーナと恋におちる。そして戦士ジャスパーとの友情をもとに、中米で呻吟する反政府軍ゲリラ支援のため、ジャングルへと赴く。その遍歴の果てに、人間の欲望やエゴの真っただ中で、きよらかに輝く宇宙を見い出していく。
若者たちが立ち上がった、あの黄金の時代、青年はニューヨークの谷間に漂着した。無限の自由と、魂の孤独を生き抜いた60年代の青春…現代の若者に贈る、宮内勝典の初期代表作。現代青春文学の金字塔。
父の愛人を犯して旅立とうとする少年に、南国の海は沈黙し、山は怒りの火を噴き上げるー。自殺未遂を繰り返す母に苦悩し疾走する、17歳の生と性。鮮烈で残酷な“青春”を生きる少年を、神話的物語空間の中に描く渾身の力作。
世界放浪の果てに、日本に漂いもどった青年と、自らの青春を持て余した家出娘…。都会の雑踏のなかでの一瞬の出会い、同棲、出産。小さい生命がもたらした天と地の輝きのなかで、若い二人が抱きとめた、愛と性と死と大自然の讃歌。野間文芸新人賞を受賞した表題作の他に、九州南端の港町に住む少年の眼を通して著者の原風景を形象化した処女作「行者シン」を収めた、文芸賞作家の代表作。