小説むすび | 著者 : 宮沢章夫

脱線、飛躍、妄想、停滞、誤読、のろのろと、そしてぐずぐずとー決めたことは「なかなか読み出さない」「できるだけ長い間読み続ける」のふたつ。横光利一の名作短編「機械」を１１年かけて読んでみた。読書の楽しみはこんな端っこのところにある。本を愛する全ての人に捧げる第２１回伊藤整文学賞評論部門受賞作の名作。

あの夜、歌舞伎町のビルに火を放ったのは自分なのか、それとも？-泥酔した記憶が定かでない中古レコード店主は自問を繰り返す。不穏な日々を彩るように流れるディランの歌声。やがて不審な客が店を訪れ「火をつけろ」とつぶやき姿を消した…。あの「九月十一日」の直前、東京・西新宿を舞台に、変容する世界を描く表題作と、三十一年間借りたままの本を返しにゆく奇妙な一日を写す「返却」。現代演劇を刺激し続ける著者が挑む“小説の冒険”。

利根川に浮かぶ若い女の死体、北関東の町に起こる不可解な事件と死者のメール…。この不条理な不在に、あなたは耐えられるか。