著者 : 宮脇孝雄
イタリアの古都を訪れた英国人カップル、コリンとメアリは、道に迷った夜ロベルトという地元の男と知り合った。ロベルトの家に招かれ、体が不自由な妻キャロラインに紹介された二人は、自分たちが奇妙な罠にはまったことを知る。幻想と現実がとけあう街で異常な愛の迷宮に囚われた男と女。『イノセント』の鬼才がエレガントに描く文学ポルノグラフィー。
冷戦下のベルリン。英国人の青年技師レナードは、英米情報部の秘密共同作戦のためにこの街に派遣されてきた。着いたばかりのある夜、レナードはナイトクラブで美しいドイツ女性マリアに声をかけられ、たちまち恋に落ちる。東側のソ連基地の通信を傍受するためにトンネルを掘るという秘密作戦に従事するかたわら、レナードの情熱は激しく燃えさかるが…。注目の英国作家が愛の悲劇をエスピオナージュ仕立てで描く話題作。
妻が自分の親友と浮気していることに気づいた亭主は考えた。妻を殺してその罪を親友に着せてやろう。それも後世に語り継がれるような芸術的な方法で。悩んだ末に男は、ブロック、ラヴゼイら当代一流のミステリ作家五人に相談を持ちかけた。寄せられた回答は入念なものばかりだったが、やがて作家たちは互いの計画をけなし合いはじめた…。完璧な殺人法をめぐって、人気作家が知恵と技とを競い合うユニークな合作ミステリ。
エゴイストの女、男を替えて生きていく放蕩な女、作家をきどり、芸術にのぼせあがる女、善人面をして宗教や道徳を説く偏執狂の女…。ハイスミス一流の冷めた視線が〈女〉たちの嫌らしさとその残酷な最期を赤裸々に描きだす。女嫌い、女好き、フェミニスト、男性讃美者ー。その全ての人に贈る〈女嫌い〉というショート・ショート。待望の翻訳。
終戦後のベルリン。世間知らずの英国人青年技師レナードは、戦争の傷跡がまだなまなましいこの街に足を踏み入れた時、自分の人生が大きく変わろうとしているのを感じた。だが、行く手に待ち受ける恐怖までは予測できなかった。レナードが来たのは、英米情報部の対ソ連共同作戦、トンネルを掘って東側基地の通信を盗聴する〈黄金作戦〉に参加するためだったが、美しいドイツ人女性マリアと出会い、うぶなレナードは激しい恋におちる-運命を知らずに。注目の作家の、エスピオナージュ仕立ての話題作。
豪傑アイリーンの演技を、NYで1番有名な劇評家がけなした。アイリーンは相手の頭にパスタをぶちまけ応酬するが、仲直りの一幕もあり、騒ぎは無事収まるかに見えた。ところが、くだんの劇評家が謎の死を遂げたことから、事態は悪化の一途をたどる…。古風だけれどイキのよさでは誰にも負けない、女優ジョスリンの名推理。洒落のめした筆致で贈る、チャーミングな本格ミステリ。
イギリスの田舎の古い荘園屋敷クルック。その主人である老古生物学者サー・ヒューゴー・コールは大脳の発作により植物人間と化し、車椅子の生活を余儀なくされていた。「あの悪魔のような男フレッジを新しい執事に妻が雇わなければ、私も車椅子に座っていなかっただろう」妻と執事の仲を疑い、事実に妄想の混ざりこむ老人の話は、やがて屋敷を崩壊へと導く1つの殺人事件を語りはじめる…。
10の短篇の主人公は、チェコ出身、容姿端麗、頭脳明晰、お色気過剰とおせっかいが玉にキズ、のイヴ・アダム嬢。国営の芸能エージェントとの契約によって、世界をまわって巡業することになったナイトクラブ歌手だ。なぜか行く先々で犯罪にまきこまれてしまう彼女は、そのたびにブロンドの髪に包まれた灰色の脳細胞をうごめかして事件を解決していく。古典のパロディあり、パスティーシュあり、ゲーム的興趣を満載して、チェコの文豪が贈る痛快連作集。
ブロードウェイ公演を控えている芝居『開廷期間』。その主演女優の臨時代役を務めることになったジョスリンだが、当の主役ハリエットは演劇界の鼻つまみ。案の定、彼女は常に不協和音を奏で、ついには楽屋で殺害されるに至った。第一容疑者と目されたジョスリンは、持ちまえの直観力で事件の真相に迫ろうとするが…。現代アメリカの演劇シーンを舞台に描く傑作シリーズ第一弾。
「純な魂が降臨したんだよ。魂の存在を誰も信じないこの時代に…」老人はニューヨークで出会った自分そっくりの青年“天使”について語った。ポー風の物語にはじまり、ルイジアナの美しい屋敷に住む一家の崩壊がゴシック的につづられるかと思えば、SF童話風に核シェルターでの一家族の残虐行為が“長靴”によって話されていく…。注目のアメリカの新人マグラアが、超自然物から精神分析までを巧みに使い、ゴシック小説を現代によみがえらせたエレガントで不気味な短篇集。米英でベストセラー。
永く精神病の治療をつづけていたブーンは、あるとき、自分がジキルとハイドのような二重人格者で、無意識のうちに残虐な連続殺人を繰り返していることを知って愕然とする。絶望した彼は自殺を企てるが果たせず、《暗黒の神に選ばれた殺人者》が住むという異次元の闇の町ミディアンへ行こうと決心した。ブーンはそこで何を見たのか…そもそこにうごめく異形の民《夜の種族》とはなにものか。この血塗られた闇の世界をつかさどるバフォメットとは…?仮面と素顔、生と死、闇と光、罪と罰、すべてを逆転させ、夢と現実のあやなす暗黒の幻想小説。
苦痛が快楽に変わり、快楽が苦痛に変わる《亀裂》の彼方の世界…。魔道士に誘われ、快楽の世界の囚われ人になった魔性の恋人、フランクを蘇らせるため、ジュリアは行きずりの男にナイフを突き立てた。血をすすり、生贄のエキスを吸い取り、フランクは人間の肉体を取り戻してゆく。「血が欲しい、皮膚をくれ!」フランクの叫びに、ジュリアは二度、三度、殺戮の刃をふるう。欲望に憑かれた男女を待っていたのは、身の毛もよだつ堕地獄の罠だった。淫魔が巣食う恍惚世界への扉を開く《ルマルシャンの箱》とは何か?この世の快楽を貧り尽くすことは罪なのか?鬼才クライヴ・バーカーが鮮烈に描く愛と妄執のドラマ。
ハリー・ラッドーアメリカ最大の勢力を誇る新興ホテル・チェーン、〈ベスト・レスト〉会長。サー・イアン・バックランドー世界最高の格式を誇りながら、時代の波に乗り遅れ赤字企業に転落した名門ホテル・チェーン〈バックランド・ハウス〉当主。権謀術数の限りをつくした乗っ取り工作の結末は?ホテルに賭けた男たちの死闘をスピーディなタッチで描く、著者異色の本格企業小説。
ロサンゼルスの私立探偵ジェイコブ・アッシュはシルヴィアという挙動不審な女性の依頼で、彼女のフィアンセ、ホフマンの素子調査に乗りだす。彼は埋立て地の技師なのだが、政治家とも親しいらしい。また特殊な趣味も持っていることがわかる。ある日シルヴィアが車にはねられる…。ハメット=チャンドラーの伝統を引き継ぎながらも独自の手法で現代を描きつづけているユニークなハードボイルド作家、アーサー・ライアンズの傑作。
苦痛が快楽に変わり、快楽が苦痛に変わる《亀裂》の彼方の世界…。魔道士に誘われ、快楽の世界の囚われ人になった魔性の恋人、フランクを蘇らせるため、ジェリアは行きずりの男にナイフを突き立てた。血をすすり、生贅のエキスを吸い取り、フランクは人間の肉体を取り戻してゆく。「血が欲しい!皮膚をくれ!」フランクの叫びに、ジュリアは二度、三度、殺戳の刃をふるう。欲望に憑かれた男女を待っていたのは、身の毛もよだつ堕地獄の罠だった。淫魔が巣食う恍惚世界への扉を開く《ルマルシャンの箱》とは何か?この世の快楽を貧り尽くすことは罪なのか?鬼才クライヴ・バーカーが鮮烈に描く愛と妄執のドラマ。映画「ヘル・レイザー」原作。