著者 : 宮脇裕子
過保護に育てられたレデヴン館の相続人ビル・レデヴン少年は、同年代の少女のいる知人宅で休暇を過ごすよう親に命じられ、気乗りしないまま、シルバーのロールスロイスに乗せられ目的地に向かっていた。ところが、霧が濃くたちこめた荒れ地の途中で、いきなり、意味も分からないまま、お抱え運転手のブランドンに車からつまみ出されてしまう。同じころ、周到な計画のもとに、〈ナイフ〉と呼ばれる若者がボースタル少年院から逃亡する。 ビルは荒れ地をさまよううちに少年パッチと知り合い、行動をともにするようになる。二人はビルが思わぬ形で手に入れた暗号で書かれた文書を解読しながら、〈にやついた若者〉、〈ヴァイオリン〉、片手が鉤爪の男との、追いつ追われつの冒険へと踏み出してゆく。 オールタイムベスト級の傑作を次々と発表し、いわゆる英国ミステリ小説の黄金時代最後の作家としてゆるぎない地位を築いたクリスチアナ・ブランドが、すべての少年少女のために、みずみずしい筆致で、荒涼とした大地と海が広がるイギリス南部のダートムアを舞台に繰り広げられる冒険を描いたジュヴナイルの傑作。 【炉辺談話】『濃霧は危険』(山口雅也) 濃霧は危険
不穏な空気をはらんだ夏の午後、医師シャーロットの診療所にやって来た若い女。ヴァイオレットと名乗るその娘は、夫ではない男の子どもを妊娠したという。彼女の“頼み”を一度は断ったシャーロットだが、混乱しきった様子が気に掛かり、その晩、ヴァイオレットの住まいへと足を向け…卓越した心理描写を武器に、他に類を見ないミステリを書き続けた鬼才による傑作、本邦初訳。
大不況時代のオハイオ川流域。父を亡くした幼い兄妹の前に現れた伝道師は、右手に「愛」、左手に「憎悪」の刺青をしていた。彼に心を許していく母と妹パール。そしてジョンの悪夢が始まる。伝道師は狩人。獲物を手に入れるためには手段を選ばない。そのゆがんだ意志に子供たちは追いつめられて…。映画化され、スティーヴン・キングに多大な影響を与えた幻の傑作サスペンス。
エリザベス女王の別邸での休暇が台無しだーティアラまでつけた女王そっくりの死体が、領内で発見されたのだ。最近、王室を攻撃していた過激団体の仕業なのか?メイドのわたしは女王の命令で、密かに調査を始めた。やがて、死んだ女性の謎の多い生活ぶりが明らかになるが、その直後、第二の殺人が!小粋なメイド探偵ジェインの活躍を描くシリーズ第二弾。
エリザベス女王が使用人の死体を発見するなんてー居合わせたメイドのわたしは、事の真相を密かに探るよう命じられた。死んだ男は、つい先日も女王の居室近くにいたという。なぜそんな畏れおおい所にいたのか?やがて宮殿で働く者たちの秘密が明らかに…女王陛下の小粋なメイド探偵ジェインの活躍を描く、カナダ推理作家協会賞最優秀処女長篇賞受賞作。
道に迷ったジェネットはトラックが突進してくるのを呆然と見つめた。絶体絶命。ところがなぜか敵は勝手に横転、混乱する彼女を尻目に、トラックは爆発するは、車は盗まれるは、避難先の無人の家は放火されるはー。新妻を襲った災難に騎馬警官のマドックは大慌て。かくて、雲をつかむような謎を相手に二人の探索が始まる。
クリスマス休暇を得たマドックは、コンドリック一族のクリスマス・パーティに参加することになった。シャルール湾に臨むお屋敷で宴はにぎやかに進んだが、そのさなか、一つの死体が発見される。これは自然死?いや、入れ歯が紛失して二、三時間後に、その所有者が死亡するなどという偶然のあろうはずがない…。ユーモアと謎解きの興趣あふれる、マドック&ジェネット第二弾。
大好きなアギーおばが食中毒で死んでしまった。原因はお手製の瓶詰めインゲン。事故のようなものと医師は言うが、ジェネットには納得がいかない。87歳とは思えないほど矍鑠としていたおばさんである。それに、食べ物に対する気のつかいようといったらなかった…。架空の田舎町を舞台に、マクラウドが別名義で贈る新シリーズ。不思議なおかしみが漂う、会心のユーモア編。
結婚に失敗し、精神的に疲れていたロバート・フォレスターにとって、幸せそうに生活する女性ジェニファーの姿をこっそり眺めることが、唯一のやすらぎだった。ある夜、ついに見つかってしまった彼を、意外にもジェニファーは暖かく迎え入れてくれる。その上、彼の孤独感に共鳴し、出会いを運命的なものと感じた彼女は恋人グレッグとの婚約を破棄してしまった。嫉妬と復讐にかられたグレッグは、ロバートを執拗にねらうが…。