著者 : 富永佐知子
下半身不随だったデヴォンは、ある日、恐ろしい事実を知る。彼女の莫大な手術費用を捻出するため、父が横領したというのだ。父を救おうと、社長のグラントに慈悲を乞うも、彼は信じようとしない。どころか、デヴォンを放蕩娘と決めつけ、代償として、18歳の娘には酷すぎる愛人契約を申し付けた。「僕が飽きるまで、いいなりになるなら考えてもいい」とー。だが初めての夜、彼が一瞬、息をのんだのがわかった。傲慢な笑みを浮かべ、デヴォンの裸を月光に晒したグラントは、抉られたような深い手術傷を、彼女の腰に見つけたからだ。
灰色のロンドンから、愛と自由がきらめく、魅惑のパリへーー 放蕩貴族の手練手管と街の魔法が、堅物秘書を美しく花開かせて……。 秘書として慎み深く生きてきたインディアの最愛のおばが、たった一人で海外 旅行に出かけ、消息を絶った。いても立ってもおれず、彼女はおばの旅を斡旋 したと思しきデレク・ソーンダーズを訪ねる。放蕩者として悪名高いこの次期 伯爵は、責任をもっておばを連れ帰ると宣言したが、彼を信用できないインデ ィアは自らも捜索の旅に同行する決心をする。かくて二人は万博開催中の華や かなりしパリへ赴くが、花の都のめくるめく魔法と放蕩貴族の巧みなエスコー トに、堅い蕾のようだったインディアの心は、甘く優しくほどかれていき……。
巧みなストーリー展開と知的なユーモアは唯一無二。 MIRA文庫初登場のL・サンズが贈る、珠玉のヒストリカル! シャーリーは男装し、双子の妹を連れて非情な後見人から逃げ出した。道中、 二人は若き伯爵ラドクリフと出会う。彼はまだ幼さの残る“兄妹”に同情したら しく、ロンドンの屋敷に匿ってやると申し出てくれたが、彼との旅には予想も しない困難が待ち受けていた。そんなに軟弱では妹を守れない、と彼は手取り 足取りシャーリーに射撃を教え、2部屋しかない宿では当然のように1部屋を妹 に与えて「我々は相部屋だ」と言う。ハンサムな伯爵を間近に感じるたび心臓が 飛び出しそうになるシャーリーは、彼の戸惑いには気づくはずもなく……。
彼女は子爵にとって、闇を照らす麗らかな木漏れ日ーー RITA賞受賞作家が紡ぎだす、リージェンシーに咲いた恋。 小さな村に暮らす準男爵の娘ルイーザは、名付け親の遺言によって社交界デビ ューをすることに。とはいえ愛ゆえに悲しい最期を遂げた母の影響で結婚に興 味はなく、ロンドンへも渋々赴いたのだが、そこで滞在先の隣の豪邸に暮らす ウェイクフィールド子爵と出会う。彼は、もう何年も公の場に姿を現していな い隠遁貴族ーーこの世のすべてに背を向け、本来は見目麗しいであろう容貌も すっかり陰を帯びている。なぜこの人はここまで心を閉ざしてしまったの? ルイーザはいてもたってもいられず、子爵の力になりたいと奮闘するが……。