著者 : 富永佐知子
聖なる夜が結ぶ、貴族とシンデレラの恋。 3話を集めた珠玉のクリスマス短編集! 大スター作家アニー・バロウズをはじめ、好感度の高いヒロインを描いて人気の作家陣がお贈りする、冬の季節にもってこいの心温まるリージェンシー・クリスマス短編集。恋にうっとりしたり、恥じらって頬を染めたりするかわいらしいシンデレラたちにご注目を!
顔を知らずとも心はつながっている。 愛を綴り合う二人は、いずこへ向かう……。 若きセリーナは亡くなった夫に莫大な借金を背負わされ、困窮していた。 債権者の男から、借金を返済するか、さもなくば体で払えと迫られ、 家財を売ってなんとか返すので月末まで待ってほしいと願い出る。 男がひとまず帰ると、今度はグレンムーア公爵アレックスが弔問に訪れた。 この公爵こそ、亡き夫から賭けで全財産を巻き上げた張本人。 気品にあふれ、誇り高く、見目麗しい魔王ルシファーそのものだけれど、 絶対に心を奪われてはいけない! セリーナは公爵を追い返した。 気丈に振る舞いつつも本当は心細さを感じていた彼女のもとに、ある日、 見知らぬ紳士“ミスター・アボット”から支援の申し出の手紙が届く。 文通を続けるうち、セリーナはいつしか彼を恋い慕うようになっていた。 愛しのミスター・アボットが、あの憎むべき公爵であるとも知らず。 大ヒット作『疎遠の妻、もしくは秘密の愛人』の作者クリスティン・メリルによるシンデレラ・リージェンシーの傑作! 顔も知らない支援者ミスター・アボットに恋しながらも、セリーナはひょんなことから公爵アレックスと偽りの結婚をしなくてはならなくなり……。
世に知られざる疎遠な侯爵夫妻。 いびつな関係が今、波瀾を呼ぶーー これから夫と会うーー8年間、一度も顔を合わせていない夫と。 リリーは亡き兄の最期の願いで、兄の親友オリヴァーと結婚したが、 今、侯爵位を継ぐ彼が自由に生きられるよう、離婚を申し出るのだ。 この結婚は、内輪だけの挙式後、すぐに別居生活が始まった。 だから終わらせるのも簡単なはず。なのに、なぜこんなに心が乱れるの? 一方、爵位と領地を継ぐには既婚者でなければならないと知り、 オリヴァーは困っていた。妻リリーの存在は世間に公表していないのだ。 余命わずかな親友の願いを叶えるための、形ばかりの結婚だったから。 そんななか折悪しく、リリーが離婚したいと言いにやってきた。 どうしたものか……。妖艶になった妻を見て、彼の悩みは深まるのだった。 好感度・共感度の高いヒーローとヒロインの夫婦元さや物語をお贈りします! 辻褄合わせのため、今からフランスで出逢って恋に落ち、電撃結婚して帰国したことにしようと決めて、愛し合っているふりをする二人ですが……。
そう、私はただの居候。 愛しの公爵の眼中にさえない……。 エレノアは14歳のとき、父の遺言で指名された後見人である、 ケンダル公爵ヒューに引き取られ、公爵邸で暮らしてきた。 年上の彼に密かな恋心を抱き、いつしか憧れは愛へと変わっていった。 それなのに今、ヒューはエレノアを早く“片づける”と口にして、 社交界デビューさせるという。結婚させて厄介払いしたいのだろう。 「私はおまえに手を出すほど恥知らずではない。 おまえの純潔を守るのが、わが務めだ」 彼にそう告げられ、エレノアはとっさに挑発的に反論した。 すると、ヒューは彼女を机に押し倒して唇を奪い、冷徹に言い放った! 「まるで食指が動かず、始める気にもならない」 エレノアにキスし、凍てつくような冷たい言葉で彼女を突き放したヒューは、翌日、社交界で評判の伯爵未亡人との婚約を決め……。エレノアの長年の想いは、実らぬまま枯れてしまうのでしょうか?『公爵の無垢な花嫁はまだ愛を知らない』(PHS-296)の関連作。
親孝行なシンデレラは、 犠牲を強いられ、追いつめられて……。 ベッツィーは丘の上に立つオークの木の下で、人知れず泣いていた。 人生でたった一度の社交シーズンに失敗したあと、 野心家の母に命じられた、恥ずべき玉の輿作戦にも失敗した。 さる貴族にキスを迫ろうとしたところ、相手が既婚だとわかったのだ。 親孝行と思って、望まぬことも頑張ってきたけれど、もう限界……。 地べたに座りこんで涙を流す彼女に、声をかける者があった。 隣の伯爵領を代理で管理しに来たという、たくましくハンサムな執事だ。 そのジェームズに小作農の娘と間違えられ、ベッツィーはむっとするが、 なぜか彼とは気安く話せて、いつしか涙は乾いていた。 本当は、ジェームズは執事などではなく、由緒正しき子爵とも知らずーー HQヒストリカル・スペシャルの刊行300冊目となる記念号! 『伯爵と片恋の婚礼』(PHS-286)の関連作である本作は、前作ヒロイン、デイジーの長兄ジェームズが執事になりすました“お忍び子爵”として大活躍。先の読めない恋物語です!
あの夏、淡い想いを踏みにじった彼と なりゆきで結婚することになるなんて……。 長いあいだ兄弟たちの悪ふざけに悩まされてきたデイジーは、 男性不信のため社交界デビューにも失敗し、両親に失望されていた。 そんな折、デイジーは兄とその友人たちの信じがたい会話を聞いてしまう。 兄が「君たちの誰でもいいから妹と結婚してほしい」と頼み、 友人たちは「氷柱を抱いて寝るほうがよっぽどましだ」と答えたのだ! 何より傷ついたのは、その中に初恋の伯爵ベンがいたことだった。 夜になり、デイジーが湖上の小島でひとときの安息を得ていると、 舟で湖に繰り出した友人たちが悪戯で半裸のベンを小島に置き去りにした。 心優しいデイジーがベンを説得して自分の舟で岸に連れ帰ったとたん、 あらぬ誤解を呼んで家族中に激怒され、ふたりは結婚を強いられて……。 初恋の人ベンとの愛なき新婚生活に夜ごと枕を濡らすデイジー。ベンも嫌われていると思い込み、徹底的に新妻を避けます。やがて気持ちは通じ合いますが、めくるめく幸せも束の間、過酷な運命がふたりを引き裂いて……。A・バロウズのもどかしすぎる純愛物語!
中世さながらの古風な乙女は、 伯爵に導かれ、華麗なロンドン社交界へーー マデリンは筋金入りの中世研究者である父のもと、 すべてが中世のまま時が止まったような生活をしてきた。 だが父が亡くなり、要塞のような城に一人きりになった彼女には、 父が生前に計画していた政略結婚の道だけが残された。 相手は、ジャック・ランサム。第五代ダーシントン伯爵だ。 荒野を越えて花嫁を迎えに来た彼は、さながら黒馬の騎士ーー 年老いた偏屈な父親しか知らなかったマデリンにとって、 初めて出会う、若く、たくましく、ハンサムな生身の男性だった。 怖れとときめきに思わず目を伏せた彼女に、冷たい声が降ってきた。 「あいにく僕は、時代錯誤な変人の娘と結婚するつもりはない」 マデリンの父親が用意した周到かつ狡猾な計画により、結婚せざるを得なくなった二人ですが、一匹狼の伯爵ジャックと浮世離れした無垢な乙女マデリンは、ロンドン社交界でも噂の的に。最新流行のドレスに身を包み、華麗な変身を遂げた妻の姿に、ジャックはーー。
憐れみや施しはいらないと言ったのに、 それならば僕を受け取れ、ですって? エリーをただ働きの家政婦扱いしかしなかった冷淡な継兄が、 紳士クラブで起きた諍いの流れ弾を受けて死亡した。 その訃報を伝えに来たのは、ヘインフォード伯爵ブレイクーー 社交界随一の富と美しい容貌を持つ、エリーが密かに憧れる男性だ。 銃弾が、本来彼を狙ったものだったことに責任を感じ、 急いで駆けつけたのだろう。髪は乱れ、シャツも破れたままだった。 天涯孤独の身となったが、彼からの憐れみだけは受けたくない……。 私のことを“不美人で脚の悪い女”と呼んでいたから。 だが、継兄がエリーの財産を使い果たしていたことを知るや、 ブレイクは支援を拒む彼女を突っぱね、こう言った。「僕と結婚しろ」 人気実力派作家ルイーズ・アレン。伯爵との便宜結婚ものをお贈りします。エリーはなかば強制されるように伯爵の妻となりますが、彼に愛がないのは自明。でも、過去の事件による男性不信、不自由な脚ーーそれらをすべて受け入れてくれる夫への片想いは夜毎せつなく募り……。
婚外子として生まれたベッカは、大富豪である伯父に疎まれ、 妹を大学に通わせるための援助を乞うたが、邪険に追い払われた。 半年後、伯父の邸宅に呼び出され、不思議に思いつつも向かうと、 そこにいたのは、伯父の娘ラリサの婚約者、セオだった。 聞けば、ラリサは一族の株を浮気相手に譲り渡す文書を残したまま、 事故に遭って、今は昏睡状態にあるのだという。 「きみはラリサによく似ている。だから、呼んだ」 浮気相手からくだんの文書を取り戻すために、ラリサのふりをしろと!? 即座に拒んだベッカに、セオが悪魔のように冷徹な声で告げた。 「妹の未来を捨てる気か。報酬は弾む。いい大学にやりたいんだろう?」 〈私はイミテーション〉と題して、瓜二つの別人になりすますヒロインの切ない恋物語をお届けします。きみを改造してみせるというセオの言葉どおり、髪をブロンドにされ、化粧も服装も変えられたベッカ。そうして、セオの婚約者としての生活が始まりますがーー
伯爵の目に飛び込んできたのは、 王女のドレスをまとった、清貧の乙女。 両親亡き後、エレナーは老婦人の付添人としてつましく働いていたが、 ある日突然、婦人の親戚ラヴェナム伯爵からプロポーズされる。 ハンサムでやさしい彼を密かに慕ってはいたけれど、 話が合う君となら、ベッドで飽きてからも穏やかに暮らせるだろうから、 などという理由で結婚なんて。ショックで逃げ出したエレナーは、 ひょんなことから、さる公爵未亡人の町屋敷で世話になることに。 事の顛末を聞いた公爵未亡人は面白がり、伯爵の追跡をかわすため、 エレナーを豪華なドレスと宝石で飾り、架空の国の王女に仕立て上げた。 変装の成果を試したい夫人に、あらゆる夜会や舞踏会に連れ出されるが、 そこには必ず、怒りにたぎるまなざしのラヴェナム伯爵がいるのだった。 ヒストリカルのベテラン人気作家アニー・バロウズが贈る『公爵の秘密の願い』の関連作です。伯爵は、エレナーの変装も、彼を欺くことになり自己嫌悪に陥っている彼女の心もお見通し。公爵未亡人の前では調子を合わせながらも、ある夜ついにしびれを切らしーー
淡い想いも、ささやかな夢も すべてはぎ取られた無垢な乙女は……。 両親亡きあと、やむにやまれず着の身着のままで家を出たマリアンは 職業紹介所にたどり着き、どうにか住み込みの使用人の職を得た。 雇い主の名はウィリアム・アシントンーー 最近爵位を継いだばかりの、ハンサムで謎めいた伯爵だ。 ほのかな恋心を胸に秘め、身を粉にして働くマリアン。 しかし、つましくも幸せな暮らしは突然終わりを告げた。 借金まみれの義兄につかまり、裕福な男と結婚するよう命じられたのだ。 義兄の家に監禁され、気力を失いかけたある日、ふいに伯爵が現れた。 彼はマリアンの唇を乱暴に奪い、信じがたい言葉を口にした。 「あの男から愛人を買い取ったーーきみは今日から僕の愛人だ」 憧れの伯爵に抱きすくめられ、口づけられた喜びもつかのま、蔑まれていると知って再び絶望の淵に落ちるマリアン。誤解を解こうにも、伯爵は義兄の卑劣な嘘を信じ込んでいて……。RITA賞受賞作家が繊細に描く、甘く切ないシンデレラ・リージェンシーです。
ずっとあなたを愛してた。 そのひとことが、言えなくて……。 良家の子女に仕えるお堅い教師キャリーには秘密があった。 17歳で情熱のおもむくまま駆け落ち結婚をして子供を産み、 やがて夫と別居したまま9年も経ってしまったなんてーー さえない私が貴族の奥さまだなんて、自分でもほとんど忘れかけている。 果てしない雑務の合間に外出したある夏の昼下がり、 キャリーはあまりのショックに意識を失い、道端に倒れこんだ。 目の前に突然、馬を駆る夫が現れたのだーー 夜ごと夢のなかでキャリーを悩ませる、罪なほど魅惑的なギデオンが。 彼は馬から飛びおりると、妻のそばにひざまずいてつぶやいた。 「やっと君を見つけた。ひさしぶりだな、レディ・ラフレイン」 ふたたび強く惹かれ合いながらも、素直になれないふたり。互いに誤解を抱いたまま、形ばかりの復縁を果たしますが……。幼すぎた花嫁、引き裂かれた純愛、運命の再会ーー『家政婦と不機嫌な子爵』『侯爵と男装のシンデレラ』関連作、切なくも美しい十年愛です!
仮面舞踏会の夜、 乙女は窮地に陥って……。 「抵抗しても無駄だ。安心しろーー悪いようにはしない」 リネットは仮面の男に抱きすくめられ、甘いおののきを覚えていた。 弟が悪友にそそのかされて盗んだ宝石を返そうとしただけなのに、 偶然居合わせた泥棒にとらわれて、唇を奪われてしまうなんて……。 混乱するリネットの口から不意に、恥ずべき言葉が飛び出したーー 私の純潔と引き換えに、盗みを諦めてはもらえませんかと。 男は彼女の申し出を一笑に付し、宝石を手に立ち去った。 呆然と立ちすくむリネットは夢想だにしなかった。 彼は単に、友人に預けていた宝石を持ち帰っただけだということを。 そして、やがてリネットが住み込みで働く伯爵家の主だということを。 主不在のあいだに雇い入れられた家庭教師がリネットだと知るや、即座に解雇を言い渡す伯爵。リネットは深く傷つきながらも、彼と初めて会った夜の淡いときめきを忘れられず……。傲岸不遜な伯爵と心優しき健気な乙女の情熱的なシンデレラ・リージェンシーです。
さえない私がいったいどうして、 公爵閣下の花嫁候補に……? 両親を亡くして以来、親戚に虐げられてきたソフィアのもとに ゆうべ花火見物で出会った無礼でたくましい男性が訪ねてきた。 彼はティークストン公爵を名乗り、彼女を馬車で連れ出した。 あまりの驚きに圧倒され、気の利いた会話もできないソフィアを、 公爵は名家の令嬢たちとともに1週間のハウスパーティーに招待した。 花嫁候補を見比べるために大勢まとめて屋敷に滞在させるなんて、 いったいどういう男性なの? 結婚を急ぐ事情でもあるのかしら。 とらえどころのない公爵の魅力に心乱されるソフィアだったが、 ある朝、森の中で彼に生き写しの少女と出会う。 それを知った公爵はソフィアを闇夜の密会に誘い出して……。 生き生きとした人物描写に定評のある大人気作家アニー・バロウズが、繊細かつ軽やかな筆致で公爵と乙女の心のひだを描きます。愛の伝えかたがわからず途方に暮れる傲慢ヒーローと、無欲でたおやかな薄幸ヒロインが織りなす魅惑のシンデレラ・リージェンシー!
ふとどきで美しい伯爵の、 温かな腕にさらわれて……。 「私の純潔と引きかえに、弟の土地を返していただけないかしら?」 遊び人と名高い伯爵ガブリエルに向かって言葉を絞り出した瞬間、 きまじめな令嬢キャロラインの頬は燃えるように熱くなった。 賭事に負けた父のせいで、愛する弟の未来が奪われるなんて耐えられない。 そして私も、悲惨な結婚をさせられる前に一夜だけでも夢を見たい……。 「話はわかった。だが僕も、処女を金で買うほど落ちぶれてはいない」 軽くあしらわれて追い返されたキャロラインだったが、 残忍で醜い中年男との結婚は刻一刻と迫ってくる。 すべてを諦めかけたある日、父が道楽で雇った僧衣の詩人が現れた。 キャロラインだけはすぐに気づいたーー彼がガブリエルであることに。 ガブリエルに導かれて父の手を逃れ、地味な家政婦に変装して田舎の屋敷に隠れたキャロライン。平穏な日々もつかの間、ふたりでいるところを父に見つかり、ガブリエルは大混乱のさなかに愛なき結婚を申し出て……。甘く儚い愛の夢、〈不肖の四貴族〉最終話です。
孤独を癒したかった夜ーー 夢の一夜か、悪夢の一夜か。 別れた元恋人の華やかな結婚披露パーティに出席中、 孤独が身に染みたキャリーは、闇に沈むバルコニーへ出た。 するとそこには、先客がいた。謎めいた緑の瞳の美男。名はニック。 寂しさを埋めるように、キャリーはニックに誘われるまま踊り、 生まれて初めて理性を忘れて、彼と熱い一夜をともにした。 しかし翌朝、ニックの名刺を見てフルネームを知り、驚愕する。 私から恋人を奪った花嫁の兄……しかも名だたる大富豪だったなんて! キャリーは何も告げず、眠る彼を残して逃げるように立ち去った。 ところが後日、ニックと仕事上で再会してしまったうえに、 彼に妊娠検査を迫られた結果、子供を身ごもっているとわかり……。 “ハーレクイン・ディザイア傑作選”からお届けする、早世の名作家サンドラ・ハイアットの渾身作です。心寂しさに負けそうになった夜、拠り所を必要としたキャリー。でも恋の相手の正体は、誰より不都合な人物でした。愛なき結婚という現実が目の前に迫り……。
貧民街の捨て子は、公爵家への復讐のため、悪魔になったーー L・ヒース真骨頂! 愛と罪が交錯するヴィクトリアン絵巻、開幕。 幼い頃に天涯孤独の身となり、公爵夫妻を親がわりに育ったアスリン。次期公 爵に嫁ぎ、何不自由のない日々を送るはずだった彼女の世界は、突然現れた大 富豪ミック・トゥルーラヴによって一変する。貧民街に生まれながらも、不屈 の意志で巨万の富を築きあげた彼は、裏社会を統べる危険きわまりない存在。 真夜中を思わせる瞳、官能的な手練手管に、純真無垢なアスリンが抗えるはず もなかった。しかし、ミックが近づいてきたのは壮大な復讐劇のためーー30年 前に公爵家から捨てられた幼子が、すべてを奪う悪魔となって戻ってきたのだ。
下半身不随だったデヴォンは、ある日、恐ろしい事実を知る。彼女の莫大な手術費用を捻出するため、父が横領したというのだ。父を救おうと、社長のグラントに慈悲を乞うも、彼は信じようとしない。どころか、デヴォンを放蕩娘と決めつけ、代償として、18歳の娘には酷すぎる愛人契約を申し付けた。「僕が飽きるまで、いいなりになるなら考えてもいい」とー。だが初めての夜、彼が一瞬、息をのんだのがわかった。傲慢な笑みを浮かべ、デヴォンの裸を月光に晒したグラントは、抉られたような深い手術傷を、彼女の腰に見つけたからだ。
灰色のロンドンから、愛と自由がきらめく、魅惑のパリへーー 放蕩貴族の手練手管と街の魔法が、堅物秘書を美しく花開かせて……。 秘書として慎み深く生きてきたインディアの最愛のおばが、たった一人で海外 旅行に出かけ、消息を絶った。いても立ってもおれず、彼女はおばの旅を斡旋 したと思しきデレク・ソーンダーズを訪ねる。放蕩者として悪名高いこの次期 伯爵は、責任をもっておばを連れ帰ると宣言したが、彼を信用できないインデ ィアは自らも捜索の旅に同行する決心をする。かくて二人は万博開催中の華や かなりしパリへ赴くが、花の都のめくるめく魔法と放蕩貴族の巧みなエスコー トに、堅い蕾のようだったインディアの心は、甘く優しくほどかれていき……。
巧みなストーリー展開と知的なユーモアは唯一無二。 MIRA文庫初登場のL・サンズが贈る、珠玉のヒストリカル! シャーリーは男装し、双子の妹を連れて非情な後見人から逃げ出した。道中、 二人は若き伯爵ラドクリフと出会う。彼はまだ幼さの残る“兄妹”に同情したら しく、ロンドンの屋敷に匿ってやると申し出てくれたが、彼との旅には予想も しない困難が待ち受けていた。そんなに軟弱では妹を守れない、と彼は手取り 足取りシャーリーに射撃を教え、2部屋しかない宿では当然のように1部屋を妹 に与えて「我々は相部屋だ」と言う。ハンサムな伯爵を間近に感じるたび心臓が 飛び出しそうになるシャーリーは、彼の戸惑いには気づくはずもなく……。