著者 : 寺尾隆吉
幻想的短編小説の名手シルビナ・オカンポと、名作『モレルの発明』の著者にして夫のアドルフォ・ビオイ・カサーレスが共作した唯一の長編小説。スペイン語圏に推理小説ブームを巻き起こすボルヘス監修の伝説的コレクション〈第七圏〉から刊行された名作の探偵小説が本邦初訳で登場。
ボルヘスやビオイ・カサーレスに高く評価され、「アルゼンチン文学の秘宝」とも称された短編小説の名手シルビナ・オカンポは、日常生活に隠された不思議から奇想天外な物語を引き出した。幻想的リアリズムの頂点をなす怪奇短編集『復讐の女』と『招かれた女たち』の全78篇を収録。本邦初訳。 日常的儀礼の内側に存在する魔法や、鏡には映らない禁断の顔、秘密の顔をこれほど見事に捉えた作家は、他に誰も思いつかない。 ──イタロ・カルヴィーノ シルビナ・オカンポの詩と短編小説が読者に暴き出す世界は驚異的なほど豊かな光を放つ。 この豊かさは語彙の産物ではなく、繊細で明敏な感受性に由来する。 ──ホルヘ・ルイス・ボルヘス シルビナは必然的とさえ言えるほどの独創性を備えていた。 ──アドルフォ・ビオイ・カサーレス 日常生活の小さなホラーに目を留める作家は少なく、日々の不思議に目を向ける作家はもっと少ない。 これほど知的で優雅なユーモアを添えて両者を記録した作家は、時代や言語を問わず、シルビナ・オカンポ以外に誰も思いつかない。 ──アルベルト・マングエル ボルヘス、ガルシア・マルケスと並び、シルビナ・オカンポはスペイン語圏をリードする作家だ。 ──ジョルジェ・アマード ■復讐の女 金の野兎 続き 病 後裔 砂糖の家 時計の家 ミモソ ノート 巫女 地下室 写真 マグシュ 土地 品々 私たち 復讐の女 引き出しに紛れ込んだ手紙 死刑執行人 黒アサバチエ玉 最後の午後 ビロードのドレス レオポルディーナの夢 周波 結婚式 女性患者と医師 電話の声 罰 お祈り 創造(自伝的物語) 吐き気 快楽と罰 友達同士 天国と地獄の報告 絶滅しない人種 ■招かれた女たち あんな顔つきだった 雄牛の娘 脱走 ベッドの下の手紙 現像 アメリア・シクータ 黒雑貨屋 階段 結婚式 科学の進歩 幻視 寝床 煙の輪 檻の外 イシス 復讐 シビュラの恋人 モーロ エクアドルの不吉な男 魔法の医師 近親相姦 手の平の顔 愛人たち ティルテ温泉 地下生活 鬘 贖罪 亡霊 マルメロの牝鶏 セレスティーナ イセラ 完全犯罪 結び目 愛 致命的罪悪 ラダマンテュス 穀物倉庫 刻印の木 別れの手紙 魔法のペン ポルフィリア・ベルナルの日記 ミス・アントニア・フィールディングの話 招かれた女たち 石 アドラーノ寺院のマスチフ犬 シルビナ・オカンポ(1903–93)年譜
メキシコで、銃以外の手段で大統領になることはできません。 オクタビオ・パス、カルロス・フエンテス、ホセ・エミリオ・パチェーコらラテンアメリカ文学の巨匠に激賞された政治家・作家マルティン・ルイス・グスマンーー 作家みずから体験した1923年の政争、1927年セラーノ暗殺事件を題材に、首都メキシコシティで繰り広げられる、血なまぐさい政権抗争と人間の悲哀を描く〈メキシコ革命小説〉の白眉。本邦初訳。 ローマの歴史家を思わせるほど鮮やかなマルティン・ルイス・グスマンの散文は、一種の古典的透明性を備えている。扱うテーマは残酷だが、彼はそれを落ち着いた揺るぎない筆致で描き出す。──オクタビオ・パス グスマンは古典的な仕方で内容と形式を融合させようとする。一種の言語的永遠を目指して書いているのだ。──カルロス・フエンテス
ニグロの老人が振るう杖の一振りにより、崩壊した館がたちまち元の姿へと戻り、亡くなったはずの館主の生涯をその死から誕生へと遡る傑作「種への旅」をはじめ、「夜の如くに」「聖ヤコブの道」を含む旧版に加え、時間の枠組みを大きく逸脱させるユーモアとアイロニーが散りばめられた「選ばれた人びと」「闇夜の祈祷」「逃亡者たち」「庇護権」の四編をあらたに加えた決定版カルペンティエール短編集。
世界革命を夢見るレフ・ダヴィドヴィチ(トロツキー)の亡命、暗殺者ジャック・モルナルに成り代わるスペイン人民戦線の闘士ラモン・メルカデール、そして舞台はメキシコへと至る。イデオロギーの欺瞞とユートピア革命が打ち砕かれる歴史=物語を力強い筆致で描く、現代キューバ文学の金字塔。
《88年に及ぶ英雄的独立戦争の末、1898年にアレパは独立国となった。独立戦争最後の生き残りで、《独立戦争の英雄少年》として名高い陸軍元帥ドン・マヌエル・ベラウンサランが大統領を務め、憲法上最後となる四期目を全うしつつある。》 恐怖政治で権力を掌握する独裁者が治める国アレパの《真の独立》は成し遂げられるのか? 陰謀、クーデター、暗殺計画…… さまざまな思惑が入り乱れるハードボイルド小説さながらの「政治喜劇」
古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』。表題作を含む全8篇を収録。
1958年、ペルー山間部でごく小規模な反乱があった。首謀者はトロツキー派の組合運動家、名前はマイタ。その20年後、とある作家はこの事件を小説で再現しようと、事件の証言者たちを辿ってインタビューを試みる。しかし、証言者たちの語りは食い違い、反乱の全貌は窺えないまま最後の証言者マイタの居場所を突き止めることになる……。 史実とフィクションを意図的に交錯させる大胆な手法を試みた、ノーベル賞作家によるメタ・フィクション。
ラテンアメリカ文学の「古典中の古典」、待望の翻訳成る! 植民地支配を断ち、独立して100年有余。迫りくる北の米帝国の脅威に対抗して、国家統合へと向かう20世紀初頭のベネズエラの平原を舞台に、スリルに富む冒険物語と恋愛ドラマで描く大作。 ガジェゴスは、過酷な自然世界と、的確な指導のもとで富を生む希望を秘めた世界とを組み合わせ、文明社会への道のりを打ち出した。(……)見事な自然描写はそれ自体芸術的価値をもっているが、アニミズム、神秘、迷信、呪術等、平原(ジャノ)人の心理を形成する非合理的要素を見事に取り込むガジェゴスの手腕は賞賛に値する。(グレゴリー・サンブラーノ、本書「解説」から)
とある小国の経済を牛耳るベントゥーラ一族の人びとが毎夏を過ごす辺境の別荘。ある日、大人たちが全員ピクニックに出かけ、別荘には33人のいとこたちだけが取り残された。日常の秩序が失われた小世界で、子どもたちの企みと別荘をめぐる一族の暗い歴史が交錯し、やがて常軌を逸した出来事が巻きおこる…。チリの巨匠ホセ・ドノソの、『夜のみだらな鳥』と並ぶ代表作にして、二転、三転する狂気をはらんだ世界が読む者を眩惑する怪作、待望の邦訳!!1973年チリ・クーデタに触発されたドノソが、類い希なる想像力を駆使し、偏執的とさえいえる緻密な構成で書き上げた、理屈抜きに面白い傑作。後続する作家や世界の批評家たちを今なお魅了しつづける、ラテンアメリカ文学の金字塔。
エル・ベダードと呼ばれる3ブロック程の「夜も眠らぬ」歓楽街、そこには、外国人観光客、知識人、ポン引き、娼婦などが蝟集する。多くの極貧労働者によって購われた特権階級の遊び場にオマージュを捧げることで、作家は何を言おうとしたのだろうか?1958年、革命前夜のハバナを舞台にしたキューバの鬼才、カブレラ・インファンテの、翻訳不可能な怪作、遂に「超訳」成る!