著者 : 寺尾隆吉
ボルヘスやビオイ・カサーレスに高く評価され、「アルゼンチン文学の秘宝」とも称された短編小説の名手シルビナ・オカンポは、日常生活に隠された不思議から奇想天外な物語を引き出した。幻想的リアリズムの頂点をなす怪奇短編集『復讐の女』と『招かれた女たち』の全78篇を収録。本邦初訳。
パス、フエンテス、パチェーコらラテンアメリカ文学の巨匠に激賞された政治家・作家グスマンー作家みずから体験した政争、暗殺事件を題材に、首都メキシコシティで繰り広げられる、血なまぐさい政権抗争と人間の悲哀を描く“メキシコ革命小説”の白眉。本邦初訳。
ニグロの老人が振るう杖の一振りにより、崩壊した館がたちまち元の姿へと戻り、亡くなったはずの館主の生涯をその死から誕生へと遡る傑作「種への旅」をはじめ、「夜の如くに」「聖ヤコブの道」を含む旧版に加え、時間の枠組みを大きく逸脱させるユーモアとアイロニーが散りばめられた「選ばれた人びと」「闇夜の祈祷」「逃亡者たち」「庇護権」の四編をあらたに加えた決定版カルペンティエール短編集。
1977年のハバナ、獣医学雑誌の校正の仕事に身をやつしている物書きのイバンは、2頭のボルゾイ犬を連れて浜辺を散歩する不思議な男、“犬を愛した男”と出会う。犬の話題で親密になっていく2人だが、やがて男は彼のみぞ知る“トロツキー暗殺の真相”を打ち明けはじめる…世界革命を夢見るレフ・ダヴィドヴィチ(トロツキー)の亡命、暗殺者ジャック・モルナルに成り代わるスペイン人民戦線の闘士ラモン・メルカデール、そして舞台はメキシコへと至る。イデオロギーの欺瞞とユートピア革命が打ち砕かれる歴史=物語を力強い筆致で描く、現代キューバ文学の金字塔。
恐怖政治で権力を掌握する独裁者が治める国アレパの“真の独立”は成し遂げられるのか?陰謀、クーデター、暗殺計画…さまざまな思惑が入り乱れるハードボイルド小説さながらの「政治喜劇」。
古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』。表題作を含む全8篇を収録。
1958年、ペルー山間部でごく小規模な反乱があった。首謀者はトロツキー派の組合運動家、名前はマイタ。その20年後、とある作家はこの事件を小説で再現しようと、事件の証言者たちを辿ってインタビューを試みる。しかし、証言者たちの語りは食い違い、反乱の全貌は窺えないまま最後の証言者マイタの居場所を突き止めることになる…。史実とフィクションを意図的に交錯させる大胆な手法を試みた、ノーベル賞作家によるメタ・フィクション。
ラテンアメリカ文学の「古典中の古典」、待望の翻訳成る!植民地支配を絶ち、独立して100年有余。迫りくる北の米帝国の脅威に対抗して、国家的統合へと向かう20世紀初頭のベネズエラの動きを、平原を舞台に、スリルに富む冒険物語と恋愛ドラマで描く大作。
とある小国の経済を牛耳るベントゥーラ一族の人びとが毎夏を過ごす辺境の別荘。ある日、大人たちが全員ピクニックに出かけ、別荘には33人のいとこたちだけが取り残された。日常の秩序が失われた小世界で、子どもたちの企みと別荘をめぐる一族の暗い歴史が交錯し、やがて常軌を逸した出来事が巻きおこる…。チリの巨匠ホセ・ドノソの、『夜のみだらな鳥』と並ぶ代表作にして、二転、三転する狂気をはらんだ世界が読む者を眩惑する怪作、待望の邦訳!!1973年チリ・クーデタに触発されたドノソが、類い希なる想像力を駆使し、偏執的とさえいえる緻密な構成で書き上げた、理屈抜きに面白い傑作。後続する作家や世界の批評家たちを今なお魅了しつづける、ラテンアメリカ文学の金字塔。
エル・ベダードと呼ばれる3ブロック程の「夜も眠らぬ」歓楽街、そこには、外国人観光客、知識人、ポン引き、娼婦などが蝟集する。多くの極貧労働者によって購われた特権階級の遊び場にオマージュを捧げることで、作家は何を言おうとしたのだろうか?1958年、革命前夜のハバナを舞台にしたキューバの鬼才、カブレラ・インファンテの、翻訳不可能な怪作、遂に「超訳」成る!